2016年11月03日 07:32 弁護士ドットコム
幼い子どもは、思わぬ行動に出ることがあります。スーパーで売られている商品への「いたずら」はその1つ。インターネット上の掲示板「ガールズちゃんねる」には、いたずらをする子どもの目撃談が多数投稿されています。
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「買い物に行った時3歳くらいの女の子が商品のボールペンを口に入れていました。 その子の母親は、早く片付けなさい!と注意して元の位置に商品戻させていました」
「肉や魚のパック(包装トレーのラップ)を指でぶちゅーって潰して穴が開いたのを知らん顔する親も結構いる」
「スーパーで働いてました。 2歳ぐらいの子がコイン型のチョコをひたすら割ってるのを目撃。 目が合うと、その子は逃げました」
子どもがいたずらで商品を舐めたり、壊してしまった場合に、親が買い取る義務はあるのでしょうか。親は、法的な責任が問われるのでしょうか。池田 誠弁護士に聞きました。
● 子どもがいたずらした商品、親に買い取る義務はある?
まず、子どもがいたずらをして商品を壊すなどしてしまった場合に、親に買い取る義務があるかどうかですが、一般には、買い取る義務というより、親が店に対して、商品代金相当額の損害を賠償する義務があると考えられます。
民法では、行為の責任を弁識(理解)するに足りる能力を備えていない未成年者が他人に損害を与えた場合、その未成年者に代わって、監督義務者が損害を賠償する義務があるとされています。ここでいう未成年者は、裁判例上、おおよそ12歳が一般的な目安とされています。
したがって、11歳の子どもが商品にいたずらをした場合には、その子ども自身は、商品代金相当額の損害を賠償する義務を負担しません。代わりに、監督義務者である親が、賠償義務を負担することになると考えられます。
なお、仮に、その子どもが12歳以上で、前述の能力を備えた未成年者であった場合、子ども自身も、既に民事上の責任無能力者ではありませんから、商品代金相当額の損害を賠償する義務を負担すると考えられます。また監督義務者である親も、子どものそのような行為を予想でき、結果を回避できるはずだったのに怠った場合には、商品代金相当額の損害を賠償する義務を負います。
今回挙がっているような目撃談では、子どもが商品にいたずらをすること自体は予想でき、また、これに対して親が子どもから目を離さない、注意をするなどして回避できる関係にあったと言えるのが一般的だと思います。回避できるはずであったのにそれを怠ったとして、親個人も損害を賠償する義務を負うと考えられます。
● いたずらした商品を買わずに、棚に戻した場合の問題は?
次に、子どものいたずら行為を親が黙認し、商品を陳列棚に戻すなどした場合の、親の法的責任について考えてみます。このような場合の民事責任については、親が子どもに代わって、または子どもと共に、商品代金相当額の損害を賠償する義務を負うことは前述したとおりです。
それとは別に、民事責任について、仮にそのような行為が立て続き、店の信用問題などに発展して店の売上が下がった場合などには、その損害についても、親が子ども代わって、または子どもと共に、賠償する義務を負うことが考えられます。そうなった場合、たかが「子どものいたずら」では済まされない重大な賠償責任を親が負うことにもなりかねません。
他方で、親に対して刑事責任を追及することは、一般的には難しいでしょう。該当しうる罪名としては、「器物損壊罪」や「偽計業務妨害罪」などがありますが、いたずら行為をしたのは親自身ではありませんし、親が子どもを積極的に利用していたずら行為をさせているとも考えにくいため、親の刑事責任を追求することは困難だと考えられます。
【取材協力弁護士】
池田 誠(いけだ・まこと)弁護士
証券会社、商品先物業者、さらには銀行などが扱う先進的な投資商品による被害救済を含む消費者被害の救済に注力している下町の弁護士です。
事務所名:にっぽり総合法律事務所