電車内で化粧する女性を「みっともない」と表現した東急電鉄のマナー向上広告が賛否を巻き起こす中、10月28日にはてな匿名ダイアリーに投稿された「電車で化粧させてよおおおお」という記事が、多くの女性の反響を呼んでいる。
毎日仕事でクタクタで睡眠不足だという投稿者は、少しでも長く寝ていたくて毎朝ギリギリに起きて出勤する。そのため化粧する時間が取れるのは電車内のみ。「粉とか飛ばさないからさああああ」と電車内での化粧を許してほしいと痛烈に訴えている。(文:みゆくらけん)
「人の素顔で不快感を感じるって確かにおかしい」
電車で化粧する女性が増えたとされる背景には「働く女性が増えた分増えているだけなんじゃないか」と考える投稿者。女性の化粧は社会人としてのマナーと考えられているからだ。しかし投稿者はこう憤る。
「人のすっぴん顔で不快感持つ人間がどうなの!?って思っちゃうけど今のところこれが常識として根付いてるじゃん」
さらに、「化粧なんて毎日毎日めんどくさいことしたくないんだよ、こっちだってさああああ」と続ける投稿者。中学生や高校生の頃は「まだ化粧するな」と大人から言われ続けてきたのに、社会人になったら急に「大人なら化粧くらいしろ」と押し付けられる矛盾も指摘し、
「化粧って誰の都合でやってるもんなんだよおおおおおお」
と嘆いている。この記事に対し集まったのは多数の共感の声。「正論過ぎてもうこれでファイナルアンサー」「高校までは化粧すんなで、就活からは化粧くらいしろっていう風潮は確かに不思議」「人の素顔で不快感を感じるって確かにおかしい」と、多くの女性の「そうだそうだ!」が聞こえてきた。
「家で化粧する15分が取れないほどすり減る仕事」の方が問題?
特に働く女性からすれば朝は自分と時間との戦い。
「女の朝は大変。服選び、バッグ選び、靴選び、髪ブラッシング、顔洗って歯磨いて、そして化粧。その上食事の準備、食事、後片付け。結婚して子供がいたらもっと大変。電車で化粧くらい許せ」
との声も。確かに女性全員が好きで化粧しているわけではない。「社会人のマナーだから」と忙しい朝の貴重な15分を仕方なしに化粧に奪われる日々。ざっと計算して、年間61時間25分も出勤前化粧に使っていることになる(出勤245日で計算)。そう考えれば、
「化粧してることが仕事の前提条件なら社内で勤務時間に化粧するのを認めるべき。制服への着替えみたいなもの。それが無理というならノーメイクでもokに」
という意見にも納得しまくりだ。
一方で「化粧しなくてもよい社会が来てほしいのは同意するけど、みっともないのはやはりみっともない」「迷惑です。見た目だけではなく臭いも」といった反対派の声もある。
とりあえず「みっともない」は置いといて、物理的なテロ「粉を飛ばす」「キツい香りを充満させる」がダメなのはわかる。満員電車でゴソゴソするのも周りに迷惑だろう。何より、いつ急停車するかも予測できない電車で、アイライナーや先の尖ったペンシルは本人の目を突いたりするリスクもある。
では、なぜ「みっともない」とされるのか。「スッピンに一番厳しいのは同性の目」との指摘も多いが、筆者もやはりそうだと思う。「みっともない」には「化粧は隠れてするもの」というヤマトナデシコ的美学が根っこにあり、それを無視して堂々と変身過程を公に見せる同性に対し、女性は裏切りを感じずにはいられないのだ。
つまりは「男性も見てるのに、ウチらの手の内バラしてんじゃねーよ」的怒り。化粧のビフォーアフターを世間に晒されたら困るのは、会社のエライおっさんではなく、実は普段から頑張って化粧している女性たち。その女性たちの「美学という名のエゴイズム」が「電車で化粧はみっともない」という社会風潮を作っているのかもしれない。たまに男性でも「恥がないのか」と怒る人もいるが、それは単純に目の前で化粧をされるという行為が「俺は石ころか!」というプライドの問題だろう。
ともあれ、電車内化粧は状況と程度の問題。それより何より、一番どうにかしなきゃいけないのは、投稿者へのコメントにもある余裕のない生活だろう。
「家で化粧する15分が取れないほどすり減る仕事は、ちょっと立ち止まって考えたほうがいいよ…電車で化粧以前に、体壊すよそのままじゃ」
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