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「ザ・ラジレンジャーズ」鈴村健一×神谷浩史インタビュー 前編 特撮ソングを歌うための心構えとは?

2016年11月01日 19:22  アニメ!アニメ!

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「ザ・ラジレンジャーズ」鈴村健一×神谷浩史インタビュー 前編 特撮ソングを歌うための心構えとは?
2016年10月12日、声優の鈴村健一と神谷浩史がパーソナリティを務めるラジオ番組『東映公認 鈴村健一・神谷浩史の仮面ラジレンジャー』よりアルバムCD『ザ・ラジレンジャーズ』がリリースされた。本アルバムは鈴村・神谷をはじめとし、ゲストとして参加した関智一・稲田徹・杉田智和がそれぞれに東映特撮作品にまつわる曲をチョイスし、渾身のカバーを披露している。特撮ソング界の重鎮・渡辺宙明による新曲を鈴村と神谷がデュエットする「Shake Hands」や、特撮作品に造詣が深い声優陣による座談会も盛り込まれており、非常に豪華な内容のアルバムとなった。

そんな本アルバムは、2016年10月で5年目を迎える『東映公認 鈴村健一・神谷浩史の仮面ラジレンジャー』のアニバーサリーを記念したもの。今回そんな番組のこれからや、『ザ・ラジレンジャーズ』の制作秘話を鈴村・神谷両名にインタビューすることができた。本稿では、そんな特撮ファン必見の内容をお届けしていく。
[取材・構成:キャプテン住谷]

『ザ・ラジレンジャーズ』
http://columbia.jp/radirangers/

■5年目を迎えた番組で伝えていきたいこと

―まずは、番組が5年目に突入した率直なご感想は?

神谷浩史(以下、神谷)
もう丸4年経ったんですね。5年目に突入……。

鈴村健一(以下、鈴村)
突入だね。

神谷
3年くらいは続けられたらいいな、って思いでやっていたんですけど、いつの間にかそれを超え4年目を迎えて。5年目に入れたというのは、ひとえに番組を聴いてくださる皆さまに喜んでもらえているからだと思います。ここまで続いたら、僕はもう無限に続けていきたい。なんか、3の次が無限というのはちょっとどうかしてるとは思うんですけど(笑)。

鈴村
(笑)。

神谷
ただ、東映公認で東映作品についてしゃべることができるラジオ番組は、ほかにはないし、この番組が終わってしまうと次があるんだろうかって。もしかすると(次が)ないかもしれないと思うと、僕ら結構責任重大なんですよね。

鈴村
そうだよなぁ。

神谷
なので、次につなげていくための何かを残していかなきゃいけない中で、着実に1年ずつ年を重ねている。そういう感覚が(アルバムのリリースによって)芽生えてきましたね。

―おふたりがデュエットするオリジナルの新曲「Shake Hands」(作詞:八手三郎 作曲:渡辺宙明 編曲:滝澤俊輔[TRYTONELABO])についてもコメントを頂けますでしょうか。

鈴村
八手三郎さんが作ってくれたんですよね。渡辺宙明さんと八手三郎先生が作ってくださった。僕たちの気持ちをよく汲んでくれた詞になっています。

―歌詞に込めるメッセージなどは、何かご相談されたんでしょうか?

神谷
僕たちの声を録ってくれたディレクターとお話する機会があって、詞の内容については「こういう前向きなものを打ち出した方がいいんじゃないか」と前々からお話していました。前回(※)の楽曲も宙明先生に作曲をしてもらったのですが、詞は藤林(聖子)さんが書いてくださって。その時は、この番組の楽しい部分を取り上げて頂いたので、今回は真面目な部分にもスポットを当ててもいいかもしれない、と。

※2013年11月20日にリリースされた番組テーマソングCD『緊急発信!ラジレンジャー』のこと。表題曲「緊急発信!ラジレンジャー」は作詞を藤林聖子、作曲を渡辺宙明、編曲を鳴瀬シュウヘイが担当した。

―そういう経緯だったのですね。

神谷
僕たちは子どもの頃から、特撮に正義だったり正しい気持ちだったり、正義と悪の違いみたいなものを教えてもらいました。そういうものに助けられてきたからこそ今の自分がいるっていう気持ちだったりとか、特撮に対して正しくアプローチした楽曲ができたらいいなって会話の中でお伝えしたことはあって。

鈴村
そうだよね。

神谷
「きっとそういう詞になっていると思います」ってディレクターが太鼓判を押してくれて、実際に出来上がった詞を見てみたら「ああ、まさにこれだ!」って。番組ではすごいバカなこともやってますけど、スタッフ一同、僕たちパーソナリティ一同の根底に流れている"特撮に対する正しい気持ち"みたいなものはちゃんと表現できていると思います。とっても僕は気に入っているし、ふと聴くと、ちょっと泣きたくなっちゃうんです。

鈴村
そうだよね、泣けるよね。「ヒーローが好き、特撮が好きって何だろう」って考えると、ここにたどり着くなっていう詞にはなりましたよね。子どもの頃からそれに支えられて、今でもその気持ちが胸にあって。僕らはわちゃわちゃしゃべっているだけなのでヒーローみたいに誰かを救えているかどうかは分かりませんけど、それを聞いて誰かが笑ってくれていたらいいなっていうことはラジオをやっている人間としていつも思っていることなので。『ラジレンジャー』っていうタイトルなだけあって、ヒーローでありながらラジオ番組であるということが大事なんです。そこをちゃんと汲んで頂いた詞になっていたので、八手三郎先生はどこかから見てる(※)ってことがこれで分かりましたから……。

※八手三郎は東映映像本部テレビプロデューサーの共同ペンネームであり、1970年代より数多くの東映特撮作品においてその名がクレジットされている。

神谷
毎回聴いてくれているんでしょうね。

鈴村
ねぇ。八手三郎先生って本当に視野が広い人、オールレンジ攻撃持ってますよ。

神谷
ですね。近くで見てくれていたんだよ。

鈴村
そうだよね。君の近くにもね、八手三郎先生はいるかも知れないね。見てるよ、いつだって。

神谷
(笑)。

―番組制作の時点でちゃんと同じ方を向いているからこその仕上がりという訳ですね。

鈴村
そういうことです!

(次ページ:初の特撮ソングカバーに対するアプローチ)

■初の特撮ソングカバーに対するアプローチ

―鈴村さんがカバーした「救急戦隊ゴーゴーファイブ」は、歌い方をオリジナルである石原慎一さんに寄せているような印象を受けました。

鈴村
やっぱりこう、長年聴いてきた歌なので自分の中で「こういう風に歌うものだ」っていう意識がすごい強い歌なんですよね。なので、アレンジもできるだけ原曲を目指そうという風になっています。

―それは例えば、どんなところでしょうか?

鈴村
頭の歌い始めにガッと力が入る感じとか、“石原さん節”が感じられる部分ですね。レコーディングに向けて、改めて原曲を聴き直して真似しようとした訳ではなくて、僕の体の中、僕の耳の奥にいる石原さんをイメージしながら歌いました。その上で自分にできる歌い方とか、自分らしい歌い方からは劇的に崩れてはいないと思います。原曲と自分の良いところのハイブリッドになればいいなと。単純にすごく難しい歌で、「石原さんこれどこでブレス取ってるんだろう?」とか考えながら収録したんですけど、分からなかったですね。石原さんがすごい人だなっていうことだけ分かりました(笑)。でも、自分でもすごく満足しているというか、楽しく歌えたので(石原さんの)魂の一欠片くらいは頂けたのかなっていう気はします。

―鈴村さんらしい歌い方とはどんなところですか?

鈴村
やっぱり、イメージすることです。「ゴーゴーファイブ」で言えば、「待ってろよ、生きてろよ」という歌詞。本当に入り口からガツッと「ヒーローとは何か」を歌っているんですよね。「誰かを助けるぜ!」ってことを強く歌っている。自分で詞を書いた楽曲を歌う時も、僕は常にビジュアルイメージを持ちながら歌うのでそういう部分を大事にしています。そこが石原さんと近いものになったかな、というところで融合できた気がします。力点を置いている場所から意図を読み取ったりだとか、技術をトレースするのではなく「どんなイメージを持って歌ったか」を大事にしたのが自分らしさかも知れませんね。

―鈴村さんは選曲の際、まず「戦隊の歌をやりたい」と思われたとのことですが、その理由についてもう少し詳しくお伺いしたいです。

鈴村
戦隊のCDを聴くのって楽しいんですよね。「仮面ライダー」の歌って、昭和と平成でやっぱり分かれてるんですよガッツリと。戦隊は(放送を)お休みした年がないので、ずーっとつながっている。だから、主題歌集なんかを聴くと時代の移り変わりが歌だけで分かるんです。僕は戦隊シリーズ作品を全部見てきているので、「この頃こういうことがあったな、この時代自分はこうだったな」とすごい思う訳ですよ。戦隊の歌って、生きてく上で思い出やタイミングに必ずどこか触れている気がして、そういう意味でも好きなんです。その中から何か1曲歌えないかなって思いました。

―神谷さんは「気のせいかな」を歌う際、リズムが取りにくく苦労された(※)というお話がありましたよね。

※『ザ・ラジレンジャーズ』収録「座・談会!」より。

神谷
音楽については詳しくないので具体的には語れないのですが、リズムを取るのが難しかったのは特にBメロの部分です。軽やかに流れていくけどもメロディが綺麗な歌なので、それをちゃんと伝えたいんですけどリズムがハマっていないと本当に気持ち悪く聞こえてしまう。リズムを取るためには一音一音ちゃんとあてていかなきゃいけないんですけど、そうすると軽やかさがなくなってしまうのがジレンマでした。そこはテイクを重ねることで改善していった部分ですね。

―鈴村さんとは打って変わって、神谷さんは原曲を聴き込んで臨んだレコーディングになったのですね。

神谷
そうですね。でも、アプローチとしては健一くんと一緒です。「その詞の世界観におけるいち登場人物を演じる」というのが僕の歌に対する基本的なアプローチなんですが、「気のせいかな」に関してはオリジナルがあって、そのオリジナルがあまりにも素晴らしい。その中で、自分にとって引っかかるニュアンスやすごく素敵だな、と思うところをオリジナルに忠実にやっていくというトライの仕方をしましたね。

【後編に続く】