メルセデスは、メキシコGPでサスペンション・トラブルによるルイス・ハミルトンの2016年F1タイトル獲得の望みが打ち砕かれることを恐れていたという。
ハミルトンはメキシコシティでいいスタートを切ったが、ターン1の進入で右フロントがロックし、芝生にはみ出してしまい、第2コーナーをカットしなければならなかった。
ロックアップしたことでタイヤにフラットスポットができてしまい、ハミルトンが”脳みそがガタガタ揺れた”というほど、激しいバイブレーションを引き起こした。メルセデスチームは急ぎ、ハミルトンのレース戦略とタイトル獲得の望みが台無になりうるダメージと、早急に彼を安全な状態に戻すこととの比較検証をしなければならなかった。
結局のところ、同じくソフトタイヤでスタートしたニコ・ロズベルグの3周前の17周目でハミルトンはピットインした。
「彼はタイヤにひどいフラットスポットを作ってたよ。バイブレーションの影響は最初から恐ろしかった」と、メルセデスF1を率いるトト・ウォルフは述べた。
「(チーフ・レースエンジニアの)サイモン(コール)、パディ(ロウ)と私は、安全性の理由で彼をピットインさせるべきかどうか無線でかなり話をした」
「他のレースでなら我々はルイスをピットインさせて、レースを失なわせていたところだが、ルイスからチャンピオンシップのチャンスを奪わないよう、彼を走り続けさせた。1周ごと、直線ごとに我々はバイブレーションをモニターしていたよ」
「バイブレーションの測定値がとてつもなく高くなり、いつサスペンション・トラブルを引き起こしてもおかしくない状況になったため、少しは早めに彼をピットインさせた」
「それが、彼をピットインできる一番早いタイミングだった。レースを台無しにしないでできたすべてだ。チャンピオンシップとサスペンション・トラブルを天秤にかけて戦略を考えるのは、我々にとって穏やかな状況ではなかった」
その決断は功を奏し、ハミルトンはF1キャリアで51勝目を獲得することとなった。しかしながら、ロズベルグは2位でフィニッシュしたため、2戦を残し依然19ポイント優位に立っている。
もし次のブラジルGP、インテルラゴスで優勝すれば、ロズベルグは悲願のタイトルを獲得する可能性がある。
「いまは、ニコが有利だろう。彼が運命を握っているよ」
「ブラジルで彼が優勝すれば、早くチャンピオンシップを勝利することとなる。彼にはまだアブダビで1戦あることでプレッシャーも少しは抑えられるだろう。状況的な点からみて、楽な状況かもしれない。そこは本当に興味深いことだね。このチャンピオンシップで起こっていることは、ファンにとっても素晴らしいことだ」
ロズベルグはメキシコでハミルトンのペースに負けた。そのため決勝ではレッドブルのマックス・フェルスタッペンからの強烈なプレッシャーに耐えなければならなかった。
「彼はフェルスタッペンからのプレッシャーを上手く操っていた」
「我々はニコがプレッシャーのなかで良く対処するレースをいくつも見てきた。これが彼の強さのひとつだ」
「2位で終えなければならない状況で、それを成し遂げることがいかに難しいことか私には分からないし、想像さえできない。だから、彼はよくやっていると思うよ」