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KinKi Kids、安藤裕子書き下ろし曲で“らしさ”と“新しさ”共存 11月2日発売の注目新譜5選

2016年11月01日 13:31  リアルサウンド

リアルサウンド

(C)タナカケンイチ

 その週のリリース作品の中から、押さえておきたい新譜をご紹介する連載「本日、フラゲ日!」。11月2日リリースからは、KinKi Kids、松任谷由実、きのこ帝国、ザ・クロマニヨンズ、Nothing’s Carved In Stoneをピックアップ。ライターの森朋之氏が、それぞれの特徴とともに、楽曲の聴きどころを解説します。(編集部)


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■KinKi Kids『道は手ずから夢の花』(SG)


 “CDデビュー20周年イヤー”と銘打たれたアニバーサリー企画の、『薔薇と太陽』(作詞・作曲/吉井和哉)、『N album』に続くニューシングル『道は手ずから夢の花』はシンガーソングライター・安藤裕子の書き下ろしによるミディアムバラード。KinKi Kidsと安藤裕子の組み合わせ自体に強く興味を惹かれるが、和テイストとラテンの情感を融合させたメロディ~オーガニックな手触りをサウンドメイクと剛、光一のボーカルによる化学反応は、こちらの想像を超えた効果を生み出している。正確なピッチとリズムで楽曲の枠をしっかりと作る光一、そのなかで自由に物語を描き出す剛による、デュオとしての豊かな魅力が体感できる名曲と言っていいだろう。KinKi Kidsと同じく30代後半の安藤による歌詞も、彼らがファンとともに歩んできた道、そして、“ここからさらに奮起して、人生を進んでほしい”という願いがじんわりと伝わってきて、心を揺さぶられる。“らしさ”と“新しさ”をバランスよく共存させたこの曲は、「薔薇と太陽」と同様、KinKi Kids20周年イヤーの大きな指針となりそうだ。


■松任谷由実『宇宙図書館』(AL)


 前作『POP CLASSICO』以来、約3年ぶりとなる新作のタイトルは『宇宙図書館』。これまでの人生で経験してきた出会いと別れ、たくさんの人々との会話、読んだ本、観た映画、聴いた音楽ーー「そういうあらゆることが、私たちのDNAの螺旋の中に、まるで図書館の書架に並ぶ書物のように、静かにしまわれていて、だけど、それらに時おりふっと突き動かされて生きているように感じるのです」(松任谷由実「宇宙図書館」特設サイトより)という思いで制作されたという本作は、時間と空間を超えるようなスケール感を備えたポップミュージック・アルバムに仕上がっている。1970年代から2010年代に至る彼女自身のキャリアを俯瞰し、一聴して“ユーミン”とわかるサウンド、メロディを引用しながら、壮大なコンセプトに沿った音像に導く楽曲のクオリティも文句なく素晴らしい。アルバムリリース後は、過去最長・最多本数の全国ツアーがスタート。自己模倣に陥ることなく、常に新たなテーマを導入しながら自らの音楽的アイデンティティを刷新し続けてきた彼女はいま、何度目かの充実期に突入しつつあるようだ。


■きのこ帝国『愛のゆくえ』(AL)


 映画『湯を沸かすほどの熱い愛』主題歌として制作された「愛のゆくえ」を中心としたニューアルバム。中野量太監督の要望もあり、インディーズ時代を想起させるフィードバック・ギターを押し出した表題曲「愛のゆくえ」のインパクトがとにかく強烈なのだが、アルバム全体の軸になっているのはギターサウンドではなく、むしろ多様性を増したリズムだろう。そのスタンスを端的に示しているのが、ドラムのループにメロディを乗せる手法で作られたという「LAST DANCE」「MOON WALK」「雨上がり」。ブラックミュージックのテイストを感じさせるグルーヴ、コードに縛られることなく自由にラインを描くメロディ、どこかアンニュイな影を感じさせる佐藤千亜妃のボーカル。これらの要素は新機軸というより、彼らがもともと持っていたルーツミュージックに根差していると捉えたほうがいいだろう。レコーディングエンジニアのzAk氏による生々しく、官能的なサウンドメイクも素晴らしい。


■ザ・クロマニヨンズ『BIMBOROLL』(AL)


 ハイスタのニューシングルの販売方法に関するニュースに象徴されるように、マーケティングや仕掛けに注目が集まる現在において、バンドの立ち上げから一貫して“ツアーをやる、曲を作る、レコーディングする”というサイクルを繰り返しながらもまったく飽きることがないザ・クロマニヨンズの存在は本当に際立っている。濃密なブルーズを感じさせるハープから始まる「ペテン師ロック」、ピート・タウンゼントばりのロックンロール・ギターが炸裂する「ピート」、高速の8ビートとともに“大体はつまらないとかおもしろいとか考えない。ただ過ぎていく”という歌が広がる「大体そう」。本作でもザ・クロマニヨンズはひたすら真っ当なロックンロールだけをやっているのだ。もはや求道的なのか思考停止なのかもわからないが、これだけのキャリアを重ねながら、いまも新作が出るたびに「すげえ!」と思わせてくれるバンドは世界的にも稀だろう。未来を切り開く新しい音なんて必要ない。これでいいのだ。


■Nothing’s Carved In Stone『Adventures』(SG)


 今年2月にSiM、赤い公園などゲストに招いた2マンツアー『Hand In Hand Tour 2016』を敢行。5月には初の日比谷野外音楽堂ワンマンライブを行うなどバンド結成から8年目を迎え、さらに精力的な活動を続けているNothing’s Carved In Stone。研ぎ澄まされたギターリフと緊張感に溢れたアンサンブルを軸にした『In Future』(2016年4月リリース)に続くニューシングル曲「Adventures」は、<始まりの音が 今も響いている>というフレーズから始まる、力強く、エモーショナルなミディアムバラードに仕上がっている。中心にあるのは村松拓の歌。“悲しい出来事に見舞われても、自分にとっての大切なものをしっかりと守りながら生きていきたい”というシリアスな思いを込めた歌を前面に押し出したこの楽曲は、バンドにとっても新たな武器となるだろう。ゲストプレイヤーのヒイズミマサユ機による、メロディアスにしてエッジーなピアノの演奏もこの歌に内包された感情の濃さを際立たせている。