ドラマ「地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子」(日本テレビ)が人気だ。石原さとみさん(29)扮する河野悦子がファッション誌の校閲部に配属され、地味な仕事にがっかりしたものの、校閲という仕事に真っ向勝負する、という内容だ。このドラマで「校閲者」の存在を知った人もいるのではないだろうか。
10月31日発売の『編集会議』では、編集者・ライター100人に行った校閲に関するアンケート結果を掲載。その結果、約3割が校閲をしなかったために「ヒヤリ」とした経験があることがわかった。
編集者の約半数は校閲に「自信なし」
紙媒体がメインだったころは、印刷に出す前に校閲を専門とする担当者が誤字や矛盾がないかなどのチェックをするのが当たり前だった。しかし最近はウェブメディアが台頭し、短期間で多くの記事を公開できる一方で、校閲の甘さで誤字や事実誤認があるまま記事を公開してしまうケースもある。
「記事をメディアに掲載するにあたり、どのくらい『校正・校閲』をしますか?」という質問に対しては、「専門担当者に頼まず、自分で『校正・校閲』をする」が35.5%で最多だった。
次いで「専門担当者に頼まず、社内の複数人で『校正・校閲』をする」が30.9%。3人に2人が専門担当者に頼まず、自分たちで校閲をやっているようだ。「社内の『校正・校閲』専門担当者が行う」は17.3%、「外部の『校正・校閲』を専門とする人に依頼する」は16.4%だった。
また、「(校閲に対する自信が)ある」と回答した人は11.8%、「どちらかといえばある」が42.7%で、合わせて約54%が校閲に自信を持っている。しかし残りの約46%は「自信なし」と回答していることも見逃せない。
「『白い犬のお父さん』でなく『白いお父さん』になってた」
「校閲の甘さから危機的な状況に陥った経験」を聞くと、「ある」が28.2%、「ない」が71.8%だった。およそ3割は校閲の甘さからピンチに陥った経験があることを見ると、校閲は怠れない。『編集会議』の2016年春号で同様のアンケートを行った際は、以下のような失敗事例が寄せられたという。
「桃太郎と犬猿雉の写真を入れるために正式な写真を手配していたのだが、アタリで入れていた渋谷のハチ公(犬)と、上野にある西郷隆盛の銅像(桃太郎)のまま印刷されてしまった」
「ライバルメーカーにあたるA社とB社の会社名を入れ違えて掲載してしまった。両社から『よりによって』と怒られ、顛末書を求められた」
「ある企業の広告キャンペーンについて掲載する際、『白い犬のお父さんシリーズ』のはずが、『白いお父さんシリーズ』となっていた。入稿前に気づいたため大事には至らず」
中には、校正して助かったケースもあった。
「作家さんから届いた小説原稿に目を通していると、序盤で殺されていたおばあさんが、また殺されていた。きちんと校正していてよかった」
校閲者の中には「校閲者の目を通したどんな書籍や雑誌にも、必ず何かしらの誤植がある。完璧にミスのない書籍・雑誌は存在しないのではないか」と話す人もいるという。しっかりと内容を確認することが、記事ひいてはメディアの信用度を高めることになる。地味な作業かもしれないが、決して手を抜いてはいけないところだろう。
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