政府が就職氷河期世代の救済に乗り出す。2017年度から、就職氷河期に高校・大学などを卒業し、現在無職や非正規社員の人を、正社員として採用した企業に対し助成金を支給する制度を創設する。10月31日に読売新聞が報じた。
氷河期世代には、1990年代後半から2000年代前半に就職活動を行った現在35歳~44歳の人が該当する。新卒一括採用モデルを採用する日本では、新卒後の就職に失敗すると、その後定職に就きにくい。これが中年フリーターなど不安定な雇用の原因となり、賃金格差などが問題となっていた。
「10年前の政権って…… あっ!」
今回、助成金の対象となるのは、「過去10年間で5回以上の失業や転職を経験した35歳以上」。現在無職の人や非正規社員を正社員として採用した企業に対し、中小企業で1人当たり年間60万円、大企業で同50万円支給する方針だという。
定着度を見極めるため、助成金は一度に全額支給せず、勤務開始から半年後と一年後の2回にわける形をとる。
今や働く人の3人に1人は非正規社員だが、就職氷河期の人は他世代の人に比べて雇用が不安定だと言われる。労働力調査(2015年)を見ると、35歳~44歳の非正規雇用者は393万人となっており、25歳~34歳(290万人)、45歳~54歳(387万人)よりも高い。また、中年フリーターと呼ばれる35歳~54歳の非正規雇用者(女性は既婚者を除く)の増加も問題となっている。
こうした背景から政府は、正社員化を進めるためには助成金を支給し、企業側に動機付けを高める必要があると判断したようだ。
ツイッターやはてなブックマークでは、「へぇ?良い人だったらチャンスがあるといいよね。今は減りつつある若手をみんなで採ろうとしてとれなくなってるからねぇ」など評価するコメントがあった一方で、「10年遅い。もっと早く取り組んでいれば少子化問題も違っていたのに」という声も相次いだ。
「何でもっと早く取り組まなかったんだ。 この世代はまともなライフプランも立てられないまま40越えたのよ……」
「30歳前後の頃ならまだ結婚とかの目もあったのに、40歳前後まで非正規という層が労働人口のボリュームゾーンとか、労働問題的にも少子化問題的にも詰んでる。10年前の政権って…… あっ!」
「非正規の待遇を改善するのが筋」という声も
非正規雇用者の給与の低さは深刻だ。厚労省の2015年の資料よると、短時間労働者ではない一般労働者の時給を比較した場合、正規は平均1958円なのに対し、非正規は平均1258円と大きな開きがある。これではどれだけ働いても報われない。
ネットでは、「生涯賃金ガー、というなら非正規や無職にならざるをえなかった時期の分の正社員との給与差額を助成してやれよ」という怒りの声が出ていた。
一方で、助成金を出すと言っても、非正規歴の長い人を企業側はそう簡単には正社員として雇わない、とみる向きもある。
「当人達の中では救われる人が出てくるとは思うけど、企業としては15年程度非正規でスキルが着いていなかったりする人を雇うのはリスクが高い。給与レベルも高くなるし。安く買うなら若い方がマシ」
非正規社員の中には安い賃金で正規社員と同等の仕事をするケースがあり、同一労働同一賃金を求める動きもある。ネットでは、「世代で区切るのをやめて非正規の待遇を改善するのが筋では」という声も出ていた。
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