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ドレイク、“10億回再生”達成後の動きは? 渡辺志保が最新曲&MVを一挙解説!

2016年10月31日 16:01  リアルサウンド

リアルサウンド

ドレイク『Views』

 今年の4月に発売されたドレイクの4作目のアルバム『Views』はビルボードの総合アルバムチャート13週1位、リード・シングルの「One Dance」は10週1位、そして『Views』はリリースから5カ月でApple Musicでのストリーミング回数が10億回を突破し、様々な記録を打ち立てた……というほどのモンスター・アルバムなのに、日本じゃあまり騒がれてなくないッスカ!? というわけで、先日、無事に30歳を迎え、さらには12月に新作のリリースを発表したドレイクの新譜をどどん!とご紹介します。


 動画はこちら。


 まず一発目は、間違いなく今年の洋楽シーンを制することとなったアルバム(のうちの一つ)『Views』からのMV、「Child’s Play」を。


 ストーリーは単純。チェーン系レストランに彼女を連れてディナーにやって来たドレイク、お手洗いに立った時、一つの事実に気がつきます。


「ヤバい、携帯をテーブルの上に置きっぱなしにして来ちゃった……」


 悪い予感は的中し、彼女(なんと、スーパーモデルのタイラ・バンクスが彼女役を務めています!)はドレイクの携帯をササっとチェックし、浮気の事実を確認。あとのストーリーはご自身で確かめて頂きたいのですが、彼女に責め立てられるドレイクの表情がとにかく最高。「昨日は私たちの記念日だったのに、あんたっては私に嘘をついて他の女と会ってたのね! しかも今日のディナーはチープなチェーン系レストランだし……!」と啖呵を切るタイラも最高です。ちなみにドレイク、もともとは役者として芸能界デビューを果たしており、『デグラッシ(Degrassi)』という学園ドラマの主役を務めたことでも有名で、演技はすでにお手の物。おヒマな方はこちらもディグって見てください。


 そんな彼の演技力がじっくり楽しめるのが、先日発表されたショートムービー型MV、「Please Forgive Me」。


 20分以上にもわたって紡がれるこのムービーは、『Views』から「One Dance」「Controlla」「Hype」などの楽曲をメインにフィーチャーし、インタールード的にカーティス・メイフィールドやフェラ・クティといったレジェンドたちの楽曲も差し込まれます。ムービー内で、ドレイクは謎めいたギャング団のメンバーを演じているのですが、その相方を務めるのが、現在、人気急上昇でトラヴィス・スコットやアルーナジョージ、ジェイミーXXらともコラボ済みのレゲエ・シンガー、ポップコーン。そもそも、「Controlla」のオリジナル・バージョンにはポップコーンのボーカルが使用されていたのです。しかし、『Views』にはポップコーンの声が除かれ、代わりにビーニ・マンの声をサンプリングしたバージョンが収録されることに。今回のムービーで、改めてしっかりポップコーンがフィーチャーされており何だか安心しました。
 
 そして、先日10月24日に30回目のバースデーを迎えたドレイク。バースデーパーティーにはケイティー・ペリーやテイラー・スウィフトが来たり、ドレイクが心酔しているシャーデーが彼のために特別なプレゼントを用意したりと盛大に祝われた様子。加えて、12月には『More Life』と題された新たなプロジェクトを発表するとApple Music内の『OVO Sound Radio』でアナウンスしました。


 ドレイクによると、この『More Life』はアルバムでもミックステープでもなく、“プレイリスト”なんだとか。ドレイクといえば、あのApple Musicが彼を全面的にサポートしていることは周知の通り。『More Life』はストリーミング・サービスを軸とした、新たなプロジェクトとして発表されることになりそうです。そして、同時にどどん!と4つの新曲も披露。早速紹介していきましょう!


 まず1曲目は「Two Birds One Stone」。


“一石二鳥”という意味の曲ですが、フックもなく、ひたすらドレイクがラップでカマす仕上がりに。また、同曲は発表されてすぐ、ある理由でネット上で話題になりました。というのも、キッド・カディ、そしてプッシャ・Tという二人の人気ラッパーをディスっているのでは?と疑惑が持ち上がったのです。例えば、このライン。


「You were the man on the moon / Now you just go through your phases(お前は月に立ってた男だったのに、今じゃそのフェーズを通り越しちまった)」


 最初の「月の上」に言及する部分は、キッド・カディのデビュー・アルバム『Man on the Moon: The End of Day』に合致しますし、その次に登場する「phases」という単語は、物事の局面を表す「フェーズ」のほか、月にまつわる「月相」という意味もあり、このことからもキッド・カディへの攻撃なのではないかと噂されているのです。事実、カディは現在、鬱の病にかかってしまい、病院でリハビリ中。そして、ツイッター上でカニエ・ウエストやドレイクに対して攻撃していたことも相まって「これがドレイクからの反撃か?」と話題になりました。


 そして、同曲では「数回ヤクの取引をしただけでドラッグ・ディーラーのつもりかよ、チャポを気取ってるんだろ?」(チャポとは、脱走劇でも話題になったメキシコの麻薬王、エル・チャポのことを指します)と、ドラッグ・ディーラーである過去を自身のアイデンティティとしてラップしているプッシャ・T(プッシャーとはまさに、ヤクを売りさばく売人を指すスラング)へのディスと見受けられる箇所も。プッシャ・T自身も、これまでにはっきり言及はせずとも、ドレイクに向けたディスか?と思われるラインが散見されることでも知られていました。ラップにディスは付き物ですが、今後のドレイク、どのように身を振るのでしょうか。

 お次は、先ほどのハード・モードとはうってかわり、ミッド・テンポのトラックに乗せてメロディアスにラップするドレイクを。


 ただ、「Fake Love」というタイトルが示す通り、内容は「あいつらが笑いかけてくれる時、それは俺の居場所を横取りしたい時なんだ。あいつらの愛情は全部フェイクだぜ」という辛辣なモノ。ドレイクのラップのテーマの一つに「ダチ一生」という信条があります。「俺は、成功する前から苦楽を共にしてきた本当の友達、地元の仲間しか信じないぜ……」というもので、デビュー初期から常に発信し続けているメッセージの一つでもあります。


 しかも、こうしたメロディアスなフロウはドレイクの真骨頂。今回ドロップされた新曲群の中でも、早速「一番ポップなドレイク・チューン」として話題になっていました。テーマとメロディも相まって、今回発表されたトラックの中では、この曲が一番ドレイクらしい楽曲かもしれません。


 そして、最後に紹介したいのがアトランタのラッパー、21サヴェージをフィーチャーした「Sneakin’」。


 この21サヴェージというラッパー、ダークなフロウが特徴的で、2015年にミックステープを発表した後、2016年に入って急速に注目されるようになりました。非常にハードコアなMCでして、小学生の時にすでに銃を所持していたことで学校を退学になるという経験の持ち主。ギャングのメンバーで、額にはナイフのタトゥーも……。そんな21サヴェージとのスリリングなマイクパスを繰り広げるこの楽曲ですが、曲中、最近のドレイクにしては少々珍しく、しつこい押韻スタイルを披露しています。1ライン目の最後の部分「you can't plan it」に始まり、そのあと、「satanic」「stand it」「titanic(タイタニック)」……と同じ母音を軸に展開していきます。続く21サヴェージも同じ韻の展開でヴァースをスタートしており、ドレイクから投げられた「タイタニック」という韻のボールをしっかりキャッチし、同じ「タイタニック」を用いて韻を踏んでいます。ちなみにドレイクが比喩表現として用いたタイタニックは「お前は破綻しちまって、まるでタイタニックのように沈む」という意味なんですが、21サヴェージは「儲かってしょうがねえから俺の財布はパンパンになっちまって、タイタニックのように(ポケットの中で)沈む」と、逆の意味で使用しているのも対象的で面白いです。


 ドレイク、2017年は年始早々大規模なヨーロッパ・ツアーも予定していることも先日発表されました。今回、幾つかの新曲とともに、UKのラッパー、デイヴの楽曲「Wanna Know」のリミックスも発表しているドレイクなのですが、ロンドンでは連続して6日もライブを行うそうで、すでに懇意にしているUKのレーベル、<Boys Better Know>(スケプタの活躍でお馴染みですね)辺りとのコラボ・プロジェクトもあるかも?と期待が高まります。と、その前に12月に発表される『More Life』が何より楽しみ! どんどん新しいことにチャレンジして、我々を驚かせて欲しいです。その前に、まだ『Views』を聴いてなーい!という方がいましたら、今からでも遅くありません! ぜひともチェックしてみてくださいね。
 
 最後は『Views』のボーナストラックとして収録されており、昨年の大ヒット曲となった「Hotline Bling」のMVでお別れです。先日、ホワイトハウスで催されたイベントで、オバマ大統領がこの曲に合わせて踊っているムービーもインスタグラムにアップされていました(撮影したのはアッシャーです)。それでは、また!(文=渡辺 志保)