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Arnage Racing スーパーGT第7戦タイ レースレポート

2016年10月31日 13:21  AUTOSPORT web

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#50 ODYSSEY SLS
SUPER GT Rd.7 BURIRAM SUPER GT RACE
2016/10/8~10/9

チームワークが成功させたタイヤ無交換作戦で、タイラウンドも大きくポジションアップ!最終戦に向けての弾みをつける
 悲願の完走を果たした 8月末の鈴鹿1000kmレースから約1ヶ月半のインターバルを経て、第7戦となるのはタイラウンド。チャン・インターナショナル・サーキットで行われるシリーズ唯一の海外戦である。

 Arnage Racingはこの海外戦も、安岡選手、凜太郎選手のコンビで臨むことになっていた。チームとしては3年目のタイラウンドだが、安岡選手は、これまでアドバイザーとしてのみ参戦しており、実際にドライバーとしてコースを走るのは初めて。

 そして、凜太郎選手はサーキット自体が初めてとなる。チームは、鈴鹿後2週間のメンテナンス期間の間に、長丁場のレースを終えて細かい部分に傷みのあったODYSSEY SLSを念入りに補修し、タイでのレースに備えて給油口を逆側に移設(※チャン・インターナショナル・サーキットは給油方向が鈴鹿とは逆になる)、エアコンの整備も行った。

 さらに、エンジニア腐心のタイ仕様のセットアップも投入した。平野の中に作られ、アップダウンのほとんどないことが特徴のチャーン・インターナショナル・サーキットはまた、直線の長さも特徴であり、ストレートを得意とするMercedes Benz SLS GT3にはチャンスとも言える。

 鈴鹿から続く良い流れをタイへ持ち越すことができるのか。秋の気配漂う日本から、常夏の国タイへと戦いの舞台は移された。

October 8th Qualifying Day
晴れ/ドライ 気温:30℃→28℃/路面温度:38℃→33℃ 入場者:24,249人

 木曜日に現地入りした安岡、凜太郎両選手は、金曜日に設定されていたコースウォークの時間にたっぷり時間をとってサーキットを歩き、コースの様子をチェック、レースに備えた。

 予選日の朝、サーキットのあるブリラム周辺は激しいスコールに見舞われた。雨はほどなく止んだが、10時から行われた公式練習は、コースの一部に雨が残っていたため、ウェット宣言の出る中でのスタートとなった。

 ODYSSEY SLSはまず安岡選手がコースに出て、凜太郎選手と交代しながらマシンの感触を確かめた。少しでも初めてのサーキットに慣れておきたい両選手は、ピットイン、ピットアウトを繰り返しながら、時間いっぱいを使って38周を走行した。

 ラバーの乗っていない路面のコンディションに、走りだしこそ攻めあぐねる感のあった両選手だったが、日本でのシミュレータートレーニングも功を奏し、次第に1分 35秒から36秒台のタイムが出るようになった。

 マシンも終始順調で、ウィング調整やサスペ ンションの調整をしながらセットアップを固め、走行時間の終盤、路面のできる頃には、こなれたセットになっていった。公式練習の結果は30Lap目に安岡選手が出した1'35.840(24位)がベストとなった。

 予選の始まる直前、サーキットは一時雨雲に覆われて雨粒が落ちてきた。あわや雨の予選かと思われたが、結局雨雲はあっという間に遠のき、15時、Q1がスタートした。

 Arnage Racing は安岡選手がQ2進出をかけてコースに出た。しかし、初めてのサーキットでの予選に力みが出たか、思うようなアタックができず、ODYSSEY SLSは、またしても決勝を最後尾から追い上げることになった。

 予選終了後、サポートレースが始まるまでのわずかな時間を使って、チームはピットストップの練習を行った。経費の関係から、タイ大会ではメカニック間の無線使用を見合わせていたチームは、決勝のピットワークを無線なしで行うことになっていた。メカニックたちは、給油やドライバーチェンジをミスなく行うために、アイコンタクトやサインでコミュニケーションをとりながら、真剣に練習を行い、明日の決勝に備えた。

 なお予選の結果は次の通り。
P1 #25 VivaC 86 MC 土屋武士/松井孝允(1'32.102)
P2 #3  B-MAX NDDP GT-R 星野一樹/ヤン・マーデンボロー(1'32.797)
P3 #0  GAINER TANAX GT-R アンドレ・クート/冨田竜一郎(1'32.949)
P25 #50 ODYSSEY SLS 安岡秀徒/久保凜太郎(1'35.638)

October 9th Race Day
晴れ/ドライ 気温:33℃→32℃/路面温度:44℃→39℃ 入場者:27,948人

 決勝日となる日曜日は、前日とは打って変わって朝から厳しい日差しが照りつける南国タイらしい天候となった。

 昨年同様、チャーン・インターナショナルサーキットには多くの地元モータースポーツファンやスポンサー一行が、アジア最高峰のハコ車レースを一目見ようと押し寄せた。

 9時50分、気温が早くも30度を超える中、この日の走行がスタートした。30分間のフリー走行、続く20分間のサーキットサファリの時間を有効に使って、凜太郎選手と安岡選手がそれぞれ走行し、コースとタイヤの変化への理解を深めていった。

 また、決勝に向けて、マシンのセットアップも確認できた。午後になり、ウォームアップ走行を終えたマシンがグリッドに並ぶ頃には、日差しはますます厳しさを増した。

 気温は30度前半でも、灼けつくような常夏の国の日差しは日本のそれと比べ物にならない。路面温度もぐんぐん上昇、決勝でのタイヤの使い方が命運を分けることは間違いなさそうだ。

 15時、スタンドを埋め尽くした観衆の熱気のなか、フォーメーションラップに続いていよいよレースが始まった。

 スタートドライバーを務めるのはもちろん凜太郎選手。最後尾からの追い上げを任された凜太郎選手は、非常に落ち着いた良いスタートを切り、ここ数戦同様、レース直後の混戦を巧みに切り抜けて、前方マシンを5台ごぼう抜き。早くも1Lap目で20位に浮上した。

 さらに前方マシンのトラブルなどに乗じて18位、17位とポジションアップして、7Lap目からは安定した走行で周回を続けた。凜太郎選手は1分37秒台を中心とした落ち着いたタイムで22周を走行し、タイヤを良い状態で安岡選手に引き継ぐため、他の多くのマシンに先んじてピットに戻ってきた。

 タイヤ温存作戦が有効と判断したチームは、このタイの地でもタイヤ無交換作戦を敢行。息のあったピットワークで給油とドライバー交代だけを済ませて、早々とマシンをコースに復帰させた。

 凜太郎選手から見かけ上13番手でステアリングを渡された安岡選手は、22番手から第2スティントの走行をスタートした。

 気温はレース中盤になっても30度を超え、路面温度も下がる気配を見せない。荒れる路面に、タイヤが悲鳴をあげるマシンも多かったが、安岡選手の走りは、周回を重ねるごとに輝きを見せた。

 凛太朗選手から引き継いだタイヤながら、レースが後半にさしかかってからも1分 35秒台を何度も記録する好調ぶりで、徐々にポジションを上げていく。

 全車ルーティンのピットインを完了する頃には、ODYSSEY SLSは再び17位に浮上していた。

 ゴールまで残り10周となった時、5コーナー付近で500、300両クラスのマシンが入り乱れての大きなアクシデントが発生、また、チェッカー間近に前方車両のマシントラブルなども発生したが、幸いSC導入とはならず、異国タイでのレースは無事に終了。

 順調に走行を続けたODYSSEY SLSも60周目、トップの車両から1lap遅れで無事チェッカーを受けた。

 Arnage Racingは、序盤でレースの流れを作った凜太郎選手の好走と、タイヤを守り抜いて全てを出し切った安岡両選手の激走、そしてチームワークの賜物のタイヤ無交換作戦の成功で、最後尾から15位へとポジションアップして無事にレースを終えることができた。

 またチームが来季に向けての足がかりとして狙っていた、チームポイント3点も獲得することができた。

P1 #25 VivaC 86 MC 土屋武士/松井孝允
P2 #3  B-MAX NDDP GT-R 星野一樹/ヤン・マーデンボロー
P3 #55 ARTA BMW M6 GT3 高木真一/小林崇志
P15 #50 ODYSSEY SLS 安岡秀徒/久保凜太郎

<ドライバー 安岡秀徒>
 初めてチャーン・インターナショナルサーキットを走るのに、今まで走ってない中で、先入観というか、見てきた(他人の)走りとシミュレーターとのイメージのすり合わせがちょっと違っていて、正直ちょっと僕は準備が足りてなかったように感じました。

 それを必死に修正して、レースを迎える前までに、方向性は今朝のフリー走行で正しいということが見えていたので、レースはその方向でうまく精度を上げて行けました。

 何よりも、鈴鹿を経験したことで、凜ちゃんがすごくしっかり走れるようになっていて、セッティングを進めるとか週末の流れを作っていく上で、成長を感じさせてくれました。

 レースはとにかくずっとプッシュをしていて、来年に向けて少しでも経験を積むことを目標に、毎周毎周ちょっとずつトライして、プッシュして、最終的にはタイムも、AMGとかと比べても遜色ないくらいのタイムで走れるようになってるし、想像以上に順位も良かったし、しかもチームポイント3点も取れたっていうので、本当に、想像以上の出来だったと思います。

 で、あともてぎ2レース、去年もずっとドライバーズポイント取れてないですし、なんとかドライバーズポイント取りたい、っていう気持ちが僕にはあります。

 レースが荒れてくれるのを期待しつつも、もてぎはどちらかというとSLSが得意なサーキットなので、実力でドライバーズポイントか、その付近で終われたら、なんとか来年につながるんじゃないかと思うので、そんな流れに持ち込めるよう頑張ります。応援ありがとうございました。

<ドライバー 久保凜太郎>
 僕も安岡さんも初めてのコースで、シミュレーターも練習したし、コースウォークもして、コースに対する不安はそんなになかったです。でも、実際走ってみて、タイム見たりタイヤの状態を見たりした感じで、僕がスタートのスティントをするにあたって、タイヤ温存が難しいのではという不安が、この週末はずっとありました。

 で、実際スタートして、結構順位を追い上げていくなかでも、タイヤがヤバイなっていう気持ちがどうしても消えなかったんですけど、無交換で安岡さんも繋げてくれたので、すごい良かったです。

 タイヤ無交換の良さがしっかりと順位キープっていう結果につながったんで。二人とも知らない初めてのコースで、チームポイントも3点取れたっていうのは、最終戦のもてぎに向けては大きい部分だと思うので、次のもてぎ2連戦、いい流れなんじゃないかなと思ってます。ありがとうございました。

 応援してくださった皆様方には深く感謝しますとともに、11月11日~11月13日にツインリンクもてぎで開催される、次戦もてぎラウンドにおきましても、応援のほど宜しくお願いいたします。