2016年10月31日 10:22 弁護士ドットコム
都内のIT企業で働くDさんは、懲戒処分を受けた場合に、処分を受けた者の氏名を公表する会社のルールに疑問を感じている。
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Dさんの会社では、従業員が何らかの不祥事を起こすなどして社内で懲戒処分を受けた場合、その氏名と懲戒の事実を、一定期間の社内掲示とメールで従業員に共有する形で公表している。
Dさん自身は懲戒処分を受けたことはないが、懲戒処分というペナルティーを受けた上に、名前まで公表されるのは、やりすぎではないかと考えている。実際、懲戒処分を受けた人の陰口を、社内で耳にすることもある。
社内で懲戒処分を受けた事実を従業員に公表することは法的には問題ないのか。尾崎博彦弁護士に聞いた。
「まず前提として、懲戒処分そのもの(処分の根拠となった事実)と懲戒処分に基づく降格や異動など分けて考える必要があるでしょう。
特定の従業員の降格や異動の事実などは、社内で一定の範囲の人間にその事実を共有されることは、名誉毀損と評価される可能性は低いと思います。
一方で、懲戒処分の根拠になった事実(たとえば、セクハラなどの不祥事)を他の従業員らが容易に目にすることのできる形で掲示したり、メールで共有したりすることは、たとえ社内であっても、形式的には名誉毀損にあたる可能性があります。
『名誉』というのは、その人の外部的な社会的評価を意味し、これを低下させるおそれのある事実を公表する行為は『名誉毀損』に該当します。
そして、『●●が女性従業員にセクハラをした』といった事実は、従業員の社会的評価が低下するおそれがあるといえます。そのため、こうした事実を氏名とともに公表することは名誉毀損にあたる可能性があります」
懲戒処分の対象となった事実が、濡れ衣ではなく真実であったとしても、名誉毀損にあたるのか。
「対象となる事実が真実かどうかは関係ありませんが、例外的に、公共の利害に関する事実を公表する場合には、名誉毀損に該当しないとされます。
ただし、仮に公表するとしても、公表の対象とすべきは、懲戒処分の対象になった事実が、悪質かつ重大といった事案に限るべきではないかと考えます。
また、氏名や懲戒の事実が社外以外に漏洩することがないよう、社内での周知の方法なども注意する必要があると思います」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
尾崎 博彦(おざき・ひろひこ)弁護士
大阪弁護士会消費者保護委員会 委員、同高齢者・障害者総合支援センター運営委員会 委員
事務所名:尾崎法律事務所
事務所URL:http://ozaki-lawoffice.jp/