F1メキシコGP予選は金曜の曇天が嘘のような快晴の下で迎えた。気温は17度と決して高くはないが、強い陽射しが降り注いでいるため路面温度は50度まで上昇している。金曜フリー走行ではタイヤのウォームアップに苦労するマシンが多々見られたが、予選では状況が改善される可能性もある。
ただし路面は相変わらずダスティでコンディションはそれほど良好とは言えず、午前のFP3でもグリップ不足に悩まされたマシンも少なくなかった。リヤのグリップが不足し、スタビリティが欠如してオーバーステア傾向になるのがこのサーキットの特徴だ。
加えて、長いストレート以外は曲がりくねっていて追い抜きが難しく、全長が4.304kmと短いこともあって渋滞が発生しやすい。フリー走行でも不満を口にするドライバーが少なくなかったが、予選ではいかにトラフィックに捕まらずアタックを完遂できるかも重要なファクターになってくる。
FP2ではフェラーリのセバスチャン・ベッテル、FP3ではレッドブルのマックス・フェルスタッペンにトップタイムを奪われる中、新品のスーパーソフトを3セットしか残していないメルセデスがどのように予選を戦うのか、注目が集まった。なお、ルノーのジョリオン・パーマーはFP3後にモノコックにクラックが見つかったため、モノコック交換を実施。しかし作業が間に合わず予選への出走を断念している。
予選Q1はまず下位のマシンがスーパーソフトでコースイン。路面温度が50度の高さだったが、地元エステバン・グティエレスは計測1周目を「まだタイヤが温まっていない」と途中でアタックを取りやめた。ロマン・グロージャンもターン12でロックしてはみ出してしまい、ピットへと戻った。
セッションの半分が過ぎたところで上位勢もコースイン。メルセデスも含め全車がスーパーソフトを履いてきた。1回目のアタックではフェラーリ勢が1位・3位タイムを記録し、ダニエル・リカルドが2位、フェルスタッペンが4位。ルイス・ハミルトンは5位、ニコ・ロズベルグは6位に留まった。しかし連続アタックを続けたハミルトンが最後にトップタイムを記録してQ1を終えた。その後方にはフォース・インディア勢、ウイリアムズ勢、マクラーレン勢が0.3秒以内にひしめく。
FP2でパワーユニットのトラブルに見舞われたダニール・クビアトはここでまたしても「パワーを失った、何かがおかしい、ピットに戻ろうとしているが全てを失った」とトラブルを訴えてピットインしてしまった。
残り3分で12位 カルロス・サインツJr.以下の全車が2回目のアタックへ入るが、16番手タイムだったクビアトはやはりコースインができず、Q1敗退。グティエレスは最後のアタックでターン9出口でリヤが流れてスピン。その影響を受けてグロージャンもタイム更新ができず、ハースは2台揃ってQ1敗退となってしまった。この恩恵を受けるかたちで、最後にグティエレスのタイムを上回ったパスカル・ウェーレインがQ1突破を果たした。
予選Q2は決勝のスタートタイヤを見据え、メルセデス勢、フェラーリ勢、ウイリアムズ勢、フォース・インディア勢がソフトタイヤでアタックに出る。スーパーソフトの残りセット数から見て、メルセデスとしては当初の予定通りだ。そんな中ハミルトンは「フロントタイヤに少しバイブレーションが出ている」と無線で伝えるが、問題なくアタックに入っていく。
アタック1周目はターン16へのアプローチで「ベッテルにブロックされた」ハミルトンだが、それでもライバルたちを上回るタイムを記録してトップへ。これをフェルスタッペンが上回るが、スーパーソフトタイヤを履いているにもかかわらずその差は僅か0.165秒でしかない。リカルドは4位に入りロズベルグは5位、ライコネンが6位。その後方7位にはスーパーソフトでフォース・インディア勢を上回ったサインツJr.が来た。
残り5分で6位 ライコネンがスーパーソフトを履いて2回目のアタックへ。フォース・インディア勢とウイリアムズ勢もソフトでのQ2突破は無理と判断してスーパーソフトで2回目のアタックに入る。これを見て5位 ロズベルグもコースインするが、こちらはソフトタイヤを履いてアタック。
ニコ・ヒュルケンベルグが6番手タイムを記録しウイリアムズ勢もそれに続くが、地元の大声援を受けるセルジオ・ペレスはターン1で右フロントをロックさせるなど完璧なアタックが決められず、12位でQ3に進出することはできなかった。マクラーレン勢もサインツJr.を上回ることができず2台揃ってQ2敗退となってしまった。それでもアロンソはそれ以上の苦戦を予想していたのか「11位だ」という無線に「よしっ! ファンタスティックだ!」と答えた。
予選Q3は開始直後から全車がスーパーソフトを履いてアタック。サインツJr.だけが中古を履いてコースイン。ハミルトンが無難にトップタイムを記録したのに対し、ロズベルグはターン3の立ち上がりでホイールスピンをさせてしまい僅かにカウンターを当てるロスもあり、レッドブル勢を上回ることができず4番手タイム。フェルスタッペンは0.388秒遅れの2番手タイムを記録したが「ミスしてしまった、あんまり良いアタックじゃなかった」とさらに伸びしろがあることを匂わせる。一方でメルセデスユーザーが予選モードでパワーを絞り出したせいか、フェラーリ勢は6位・8位と伸び悩む。
残り3分で全車が新品のスーパーソフトタイヤを履いて最後のアタックに臨む。レッドブル勢がタイムを伸ばすが、ハミルトンはターン16で僅かにミスもあり自己ベストを更新できず。それでもロズベルグの最終アタックはハミルトンに0.254秒及ばず、レッドブル勢を上回って2位に上がるのが精一杯。ハミルトンがポールポジションを獲得した。
フェラーリ勢は2回目のアタックでも5位ヒュルケンベルグを上回ることができず、ライコネン6位、ベッテル7位に終わった。その後方にはウイリアムズ勢、サインツJr.となっている。
決勝はメルセデス勢とフェラーリ勢がソフトタイヤでスタートし、それ以外のQ3進出勢はスーパーソフト。11番グリッド以下でもタイヤ戦略が分かれることが予想され、決勝のスタートにも注目が集まる。ハミルトンが10位以下に終わればタイトル獲得の可能性があるロズベルグだが、余程のことがなければそれが実現する可能性は低そうで、本人が語る通り目の前のレースで勝つことだけを考えて戦うことになりそうだ。