トロロッソがカルロス・サインツJr.とダニール・クビアトの残留を正式発表し、2017年のシートもかなり埋まりつつある。その影で大きな落胆を隠そうともしないのがピエール・ガスリーだ。
レッドブルからトロロッソへシーズン途中の“格下げ”を命じられたクビアトの不振を受けて、一時はガスリーのF1昇格は確定的とみられていた。それだけにガスリー自身も「この発表には少し驚いた」と心情を吐露している。
レッドブルのモータースポーツアドバイザーであるヘルムート・マルコの鶴の一声で決まることが多いレッドブルのドライバー人事だけに、理論的な説明をする方が不可能という側面は大いにあるものの、ガスリーが「彼をキープする何らかの理由があるんだというだけで、詳しくは説明してくれなかった」と話していることからも、レッドブルにとってまだ充分に開拓できているとは言い難い巨大なロシア市場を意識しての政治的判断だったのではないかという噂も。
いずれにしても、ガスリーは今年参戦2年目のGP2でランキング2位。最終戦アブダビを残してタイトルを争っているものの、チームメイトであり新人のアントニオ・ジョビナッツィに先行を許してしまっているだけに、F1昇格を見送るのに充分な理由があるとも言えるというのがパドックでの声。一発の速さはあるものの、線の細さは否めず、その速さに波があるというのが彼に対する評価だ。
ガスリーは2017年のF1昇格を諦めていないとは言うものの、実質的な選択肢としてはレッドブルを離れることは難しく、トロロッソのラインアップ決定後もチームに帯同しレッドブルのピットガレージなどでセッションを見守っている。
現在、2017年に向けて空きのあるもっとも有力なシートはフォース・インディアだが、こちらはメルセデスAMG系ドライバーが埋める見込み。その次がルノーだが、こちらはケビン・マグヌッセンかジョリオン・パーマーと言われている。
ザウバーは依然として持ち込み資金の豊富なドライバーを2名揃える見込みで、ハースはロマン・グロージャンの残留は確定的、もう1席も経験豊富なドライバーを求めているが、最終的にはエステバン・グティエレスに落ち着くのではないかと言われている。
つまり、レッドブル以外の資金的バックを持たないガスリーにとっては、2017年のシートを獲得することは難しく、このままレッドブルのリザーブドライバーに留まる可能性が高い。
そのガスリーはスーパーフォーミュラへの参戦も視野に入れているようだ。仲の良いストフェル・バンドーンがそうであったように1年ものあいだ実戦から離れることを避けたいと考えており、いわば“腕ならし”としての参戦だ。
バンドーンはマクラーレンのリザーブドライバーとして1年間を浪費し、結果的にルノー加入を果たしたものの浪人一歩手前だったマグヌッセンの失敗と後悔を目の前で見ており、レース勘を失わないためにスーパーフォーミュラ参戦を自ら希望した。ガスリーにも同様のアドバイスをしている可能性は高い。
GP2のタイトルを獲得したドライバーはそれ以上GP2に参戦できないため、仮に今季のタイトルを獲ったとしたらGP2参戦は不可能。タイトルを逃したとしても、GP2にあまり積極的でないレッドブル陣営がガスリーに3年目のチャンスを与えるとは考えにくく、なおかつ今季所属している最有力チームのプレマはすでに来季のシートが2席ともフェラーリ系で埋まっているというから、GP2参戦の芽はない。
ガスリーもスーパーフォーミュラの状況についてはバンドーンから詳しく聞いている様子で、オースティンのパドックでもバンドーンをはじめさまざまな関係者と話し合う姿が見られた。
「F1が無理なら2018年に向けて何か良い選択肢を考慮しなければならない」もちろん最後までF1のシート獲得の望みは捨てないだろうが、ガスリーとレッドブルがどのような結論を出すのか、興味深いところだ。