スーパーフォーミュラでルーキーながらラインキングトップの関口。前回のSUGOの勢いを再現できるか。 いよいよ今週末、大混戦となった今年のスーパーフォーミュラを締めくくる、最終レースが鈴鹿サーキットで開催される。もちろん、一番の注目は数字上では19人中、12人が候補となっているチャンピオン争い(現在ランキングトップ28ポイントで、今回の最終戦では最大18ポイント獲得可能)だが、他にもこの最終戦ならではの見どころが多いレースとなる。
今季のこれまでの6大会7レースで6人のウイナーを誕生させた背景は、今年から導入されたヨコハマタイヤの影響を抜きには考えられない。昨年までのブリヂストンと異なる特性で、チームのセットアップ、ドライバーのドライビング、そして予選での一発タイムの出し方などなど、車体とエンジンは同じでも、タイヤが変わった影響で昨年までの勢力図は大きく塗り替えられた。
特に顕著だったのは、チームのベースのセットアップによって、サーキットごとに速さを出せるチーム、出し切れないチームと毎戦、上位の陣容が変わったこと。路面コンディションが代われば、それだけでセッションごとに上位が変わるシーンも多々見られた。
その原因については、多くのチーム、ドライバーが「わらかない」と、手を挙げる。クルマのベースのセットアップと路面コンディションの相性が関係しているのは間違いなさそうだが、どう対応すれば本来の速さを出せるのかが、各チーム、各ドライバーを悩ませている。
実際のチャンピオンの有力候補としては、この最終戦も、同じ鈴鹿で行われた開幕戦を見る限り、TEAM 無限の山本尚貴が速さを見せる可能性が考えられるが、山本はシーズン中盤以降、低迷気味。むしろ、前回のSUGO戦で速さを見せたITOCHU ENEX TEAM IMPULの関口雄飛や、上り調子のVANTELIN TEAM TOM'Sのアンドレ・ロッテラー、中嶋一貴の勢いが強い。つまり、実績で考えれば山本、そしてP.MU/CERUMO・INGINGの石浦宏明、ランキング2位の国本雄資、勢いで見れば関口、ロッテラー、一貴というチャンピオン争いの構図が見えてくる。
チャンピオン争いの他にも注目したいポイントとしては、開幕戦の鈴鹿からのタイム差。開幕戦鈴鹿では山本尚貴が1分37秒459のポールタイムをマークしたが、ヨコハマタイヤに変わって手探りのなかでの最初の予選のタイムであっただけに、この最終戦の同じ鈴鹿でどこまでタイムアップするのか。気温と路面温度は土日とも開幕戦と近い状況なので、比較がしやすくなりそうだ。
チームの方でもこの最終戦ではヨコハマタイヤの特性をある程度つかみ、今回は空気圧やキャンバー、足回りや空力を含めたセットアップをギリギリまで詰めてくることは間違いないので、1シーズンの進化をタイムから読み解くことができる。
■金曜日が雨で、いきなりドライでの予選勝負という展開か
さらに一歩進んだ見どころとしては、予選でのスプーンの走りに注目したい。開幕戦ではドライバー側もヨコハマタイヤの特性をつかみきれず、スプーンひとつ目でスピン、ハーフスピン、オーバーランするシーンが多々見られた。実際、予選Q1でもスプーンでスピンがあり、黄旗が振られ、その瞬間にアタックしていた昨年チャンピオンの石浦がタイム抹消となってQ1落ちという波乱の幕開けとなった。中高速コーナーが多い鈴鹿で、ドライバーの限界域でのマシンコントロールを見るのも、通な見どころだ。
また、これは最終戦に限ったことではないが、予選とスタートが勝利の80パーセント以上を占めると言われる現在のスーパーフォーミュラで、予選が大きなターニングポイントとなるのは間違いない。ひとつでも予選で上位に行きたいドライバーが予選で路面にラバーが多く乗るセッションギリギリ最後にアタックするシーンで、いかに他車のトラブルに巻き込まれず、クリアラップを確保し、そしてタイヤのウォームアップを適切に行えるか。予選のトラフィックの処理は、もはや今年のスーパーフォーミュラの予選の風物詩となっている。
あいにく、最終戦鈴鹿の金曜日のセッションはウエットコンディションとなってしまった。土日のセッションはドライ予想なので、金曜セッションのデータはほとんど週末に影響がなくない。しかも、土曜朝のフリー走行は路面にウエットパッチが残ってしまいそうな状況で、このままでは土曜日の予選が初めての完全ドライの走行になり、その状況で一発勝負のような展開になりそうな気配だ。つまり全車、ほぼ、持ち込みセットアップ状態での予選勝負となりそうで、その場合、チームとドライバーの事前の準備が問われることになる。
金曜日の時点ではエンジニア、ドライバーともに、「これまでのデータをひとつひとつ見直した」という声が多かっただけに、果たして、各チームの事前の準備が吉と出るか、凶と出るか。これまでの実績を重視したセットアップなのか、それともこの最終戦に賭けた新しいチャレンジなのか。実走で確認がしづらい状況だけに、ドライバーとエンジニアの想像力が重要になる。