2016年10月28日 10:02 弁護士ドットコム
800万円の借金を作った義兄。その義兄や姑からお金を要求されて困っていますーー。そんな投稿が、Yomiuri Online「発言小町」に寄せられました。トピ主(34)は、夫(35)と幼い子ども2人がいます。
高校生の時に父を亡くしてから、夫は苦労が多かったと言います。義兄が家業を継ぎ、義母は「何も心配いらないから」と言って、夫を大学に進学させました。就職してから、夫は義母に資金援助を頼まれ、「一回に20万円~30万円で総額は100万以上」を送金していたそうです。結婚に向け、トピ主と2人で貯めていた貯金から送金したことも。
その資金援助の理由は、「義兄が集金したお金を持ってそのまま帰ってこず、支払いができない」から。義兄はお金にルーズで、毎日飲み歩き、ギャンブルもしていました。そのせいで「資金繰りが悪化」という事態に陥ったのです。
トピ主の夫がこの状況を知った時には、既に消費者金融などから複数の借金がありました。「弁護士に相談し、債務整理するように勧めましたが、義母は世間体を気にして行動しませんでした」。その後も、義兄は浪費を続け、トピ主夫婦はさらに計190万円を義兄に貸しますが、お金は返されることはありませんでした。
そして、冒頭の質問です。義母から「借金が払えなくなった。競売にかけられる実家を買い戻してくれないか」という依頼です。金額は数百万円となり、一括だといいます。さらには、義兄の妻から、義兄に800万円の借金があること、国民健康保険、年金、税金、養育費、取引先への支払いなど全て滞納していると伝えられます。
義母、義兄、義兄の妻は「大学を出してやったのだから」と、トピ主の夫が援助する義務があるという言い分です。しかし、養育費や税金の滞納、借金を返済しなかったことなどは全て義兄の責任であり、実家を買い戻すお金もなく、助けようもありません。
このような状況になった場合、トピ主の夫には、本当に援助する義務があるのでしょうか村木 亨輔弁護士に聞きました。
(この質問は、発言小町に寄せられた投稿をもとに、大手小町編集部と弁護士ドットコムライフ編集部が再構成したものです。トピ「夫の家族の借金でお金を要求されて困っています」はこちらhttp://komachi.yomiuri.co.jp/t/2016/0916/777964.htm?g=15)
●トピ主と夫に親族の「扶養義務」はある?
まず、前提として、ご主人が、義母や義兄などの親族にどのような義務を負っているかについて、整理する必要があります。
法律では、同居の親族間で互いに助け合う義務を負うとしており(民法730条)、特に直系の血族や兄弟姉妹間では、扶養義務を負うとされています(民法877条)。
そうすると、ご主人も、義母や義兄に対し、扶養義務を負う場合があることになります。なお、義母がご主人の進学費用を負担したことが、扶養義務の発生する直接の根拠になるわけではありません。
そして、ここで言う扶養義務とは、扶養義務者が、社会的地位にふさわしい生活を送ることを前提に、それでも余裕がある場合に援助する義務(生活扶助義務)を指します。生活扶助義務は、配偶者や未成年者に対して負う生活保持義務よりも弱いものです。
言い換えると、ご主人や相談者に十分なゆとりが無いにも関らず、義母や義兄に扶養義務を負うわけではないということです。
扶養義務を負うとしても、毎月、自分たちの生活にゆとりをもたせた上で、一定額の扶養料を負担することになります。まとまったお金を支払う義務まで負うわけではありません。
以上の通り、ご主人が、義兄のギャンブルなどが原因で生じた借金や、実家を買い戻すための費用を負担する義務まで負うことはないといえるでしょう。
ところで、ご主人が義兄に貸し付けた借金についてですが、義兄が裁判所に破産の申立てを行い、(借金の返済を)免責されたような場合には、免責された債権の中にご主人の借金も含まれていれば、義兄から自主的に返金してもらわない限り、弁済してもらうことは難しいと思われます。
【取材協力弁護士】
村木 亨輔(むらき・きょうすけ)弁護士
虎ノ門法律経済事務所神戸支店の支店長弁護士。東京本店を中心に、全国に21の支店があり、今後も各地に拡大する予定。本店支店間が相互に連携を取ることにより、充実したリーガルサービスの提供を可能とする。
事務所名:虎ノ門法律経済事務所 神戸支店
事務所URL:http://kobe.t-leo.com/