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メトロノームが語る、7年ぶりの再起動とこれから「全員がいい具合にメトロノーム側を向いてる」

2016年10月27日 17:11  リアルサウンド

リアルサウンド

メトロノーム

 メトロノームは98年に結成、いわゆる「V系バンド」の中で異質な音楽性でありながら、シーンの中で確固たる地位を獲得するも、09年に東京・渋谷公会堂(当時C.C.Lemonホール)公演で活動休止状態にあった。それが今年の5月、7年の時を経て「第10期メトロノーム」の開始を発表、9月19日に行われたZepp Tokyoでの復活公演『Please Push Play』のチケットはソールドアウト、しかも9月21日にシングル『解離性同一人物』でメジャーデビューを果たした。2016年に突如“再起動”した「元祖テクノポップビジュアル系バンド」メトロノームのメンバー・シャラク(VOICECODER)、フクスケ(TALBO-1)、リウ(TALBO-2)に話を聞いた。(藤谷千明)


(関連:摩天楼オペラ 苑&彩雨が語る、ヴィジュアル系の矜持「僕達は“入り口”になる」


■「やりたいことをその時々にやっている」(フクスケ)


ーーメトロノームは、リアルサウンド初登場になりますが、資料には「元祖テクノポップビジュアル系バンド」とあります。


フクスケ:基本的に周囲に言われてそういう表現になっているのですが、基本的にはロックとエレクトロが融合したテクノポップというスタンスでやっております。


ーーメトロノームは基本的に「ヴィジュアル系シーン」の中で活動されていましたが、音楽性、ボーカルのスタイルひとつとっても当時からかなり異質だと感じていました。結成しての初ライブは池袋サイバー(ヴィジュアル系の老舗ライブハウス)でしたが、当初から「ヴィジュアル系」として活動しようと考えていたのでしょうか?


フクスケ:サイバーに出ようって決めたのはシャラクだっけ?


シャラク:当時池袋サイバーはニューウェーブのイベントをよくやっておりまして。


フクスケ:あの頃はデジタル系のイベントも多かったよね。


リウ:いつの間にかだよね、ヴィジュアル系一色になったの。


シャラク:だから特にヴィジュアル系というつもりはなくて。


ーー結果的に「ヴィジュアル系」と、捉えられるようになっていたと。


フクスケ:初期の頃からメイクもしていたんですが、なんというか、もう少しヴィジュアル系的ではなかった。


ーー「ナゴム系」的な?


フクスケ:そういう感じでした。時代の流れですかね? だんだんメイクしていくと、ちょっとかっこよく綺麗にしてみようかな。僕なんか特にそうでした(笑)。なんとなく「こういうメイクにしたら売れんじゃね?」くらいの、いつから変わったかなんて覚えてないくらい。当時そういう話ってしたっけ?


シャラク:してない。


フクスケ:だから。悪い言い方をしたら「ごちゃ混ぜ感」というか、自分たちがやりたいことをその時々にやっているような感じです。メンバーのその時々の気持ちでどんどん変わっているので。リウはメトロノームに入る前はヴィジュアル系ではないバンドにいたし、シャラクは活動休止のあとはすっぴんでライブしていましたし。こうやってメトロノームになって、「メトロノームだから」って雰囲気でやってることはあります。


ーーテクノポップ、電子音楽と親和性の高いバンドサウンドは、00年代当時のV系シーンのみならず、音楽シーン全体からしてもわりと異質だったと思うんです。近年、たとえばボーカロイドを使用した楽曲がチャートに入ることも珍しくなくなり、音楽シーン全体が変わってきているじゃないですか。活動休止前と再起動後の受け入れられ方が、変わっているという感触はありますか。


リウ:それはフクスケさんの(ZeppTokyoライブでの)名言「時代が追いついた!」ですよ(笑)。


フクスケ:追いついたとかは、周りから言われてるだけというか、インタビュアーさんとかがいい感じに言ってくれるのを真に受けてるだけです(笑)。


リウ:でも僕は「ピコピコしてる」「ピコってる」っていう表現を音楽に対して使っているのを最初に聞いたのはメトロノームだったんですよ。


ーー近年ですと「ピコリーモ」など様々な使われ方をしていますね。


リウ:フクスケくんやシャラクくんが言葉にしているのを、「ポップだなあ」と思っていたんです。でも、休んでる間に色んなところで聞くようになったなあと。もちろん自分たちが最初だとか、大それたことは言えませんが。


ーー「時代が追いついた」という一例として、キングレコードからのメジャーデビューがありますね。こちらの経緯は?


リウ:再起動ライブをやろうということになり、やるなら一回きりじゃくて、ちゃんとやろう、新曲作って音源出そうという話を3人でしていました。そこで前の所属事務所(ART POP ENTERTAINMENT:イベンター、事務所。NoGoDなどが所属)が、いろんなところに声をかけてくれたんですね。それでキングレコードからお声がけいただいて。


フクスケ:このタイミングで出すなら、ちゃんとした会社から出そうと。「ちゃんとした会社」っていう言い方もおかしいですけど、大きな会社から出したかった。


リウ:自主制作でも作れるけど、今回はそうじゃない方法が良かった。


フクスケ:それでキングレコードさんからCDを出してもらえることになり、その時点では「メジャーデビュー」ということに気がついていなくて(笑)。


リウ:3回目くらいの打ち合わせの時にシャラクくんが、「もしかして……メジャーデビュー?」とボソッと。


シャラク:(無言でうなづく)


フクスケ:みんな気づいてなかった(笑)。


シャラク:誰も言わないからもしかして違うのかな? って思ってた。


フクスケ:俺は気づいてなかった。


リウ:でもCD出してみて、反響の大きさが全然違うというか「行き渡ってる」感じがうれしいですね。「再起動しました!」という宣言にもなりますし。


フクスケ:(ネット上で配信される)ニュースの数も違いますね。


リウ:自分たちも嬉しいですけど、そういうことひとつひとつに対してファンの人が喜んでいるのが嬉しいです。「メトロノーム、どうした?」みたいな(笑)。


フクスケ:ファンの間でも「突然真面目になった?」みたいな雰囲気が醸し出されて。前から真面目ですけどね(笑)。


リウ:本当に良い再スタートが切れたと思います。


■「再起動一発目にピッタリの歌詞」(リウ)


ーーシングル『解離性同一人物』はどうやって制作されていたのでしょうか? 活休前に比べて変わったことは?


フクスケ:一回もメンバーと顔を合わせていないですね。


ーーそれは意図的に? 結果的に?


フクスケ:結果的にというか。


シャラク:時代的に、ですね。単純にネットが便利になったからこうなりました。


ーースタジオで「せーの」って合わせて作るような制作スタイルではないと。


リウ:元々そうだったんですよね。


フクスケ:それが個々に出来るようになった。


ーー宅録技術の進化もあるのでしょうか。


リウ:そうですね、だからスタジオに行く必要が無くなった。とはいえ、昔もスタジオでレコーディングしていても、シャラクくんに置き手紙をして、「こんな感じで歌って~」というやりとりをしていたり。それがLINEグループになっただけなので、今の方がより細かく打ち合わせできていると思います。


フクスケ:最近改めて感じたのは、作ってる時に顔を合わせなかったのが良い風に出ているなと。今回のシングルは1曲ずつ作曲者がちがうんですけど、全員がいい具合にメトロノーム側を向いてるので、変に方向性が離れることもなく個々の個性がとても良く出ていたと思います。今後のリリース予定は未定ですが、もし、CDが出ることがあれば(※強調気味に)、もっと個々が自由気ままにやって、良いものが出来ると思います。


ーー皆さん活動休止期間の間、それぞれの活動をされていました。そこで培ったものが反映されている実感はありますか?


フクスケ:もともと復活するときも「活動していた頃のメトロノームを皆でまたやろうよ」という雰囲気があって、新曲作る時も「メトロームに寄せて」というか、活動休止以前のメトロノームをより凝縮したいという考えだったんですけど、もちろん7年の時間がたっているので、意識せずとも様々な要素が出ているんじゃないかと思います。


ーー表題曲「解離性同一人物」にギターソロが入っているのですが、メトロノームのシングルでここまではっきりとギターソロがガッツリ入っているのは新鮮でした。


フクスケ:そうですねえ。リウが「ここをギターソロにして」って言うので「じゃあ弾くよ」って。


リウ:PVになったときにギターソロみたいな見せ場があった方がいいかなと。


シャラク:リウさんの曲でソロは珍しいのかも。


リウ:あ、もしかしたら昔は自分の曲は自分がソロを弾いていたのかも。そこは大人になったんですかね(笑)。人を頼れるようになったのかもしれない。自分の出し方が上手になったのかもしれないです。


ーーVOICECODER・シャラクさんについて、再起動後に変化を感じたことはありますか?


リウ:再起動前から、シャラクくんとはちょいちょい僕のソロでも歌ってもらったり、他の仕事も一緒にやっているんですけど。別の現場よりも歌い方がメトロノーム寄りになっていて、懐かしさもあったけど、全然昔より力強いんですよ。


ーーそういう部分はご自身でも差別化されてますか?


シャラク:そうですね。ビブラートをできるだけ使わない、みたいなのはあります。他のバンドだと思いっきりコブシまわしたりするんですけど。


ーーパート表記が「VOICECODER」ですが、あえて抑揚をつけずに機械っぽさを意識されているのでしょうか。


シャラク:当時ヴィジュアル系というフィールドで差別化をはかりたくて、ドラマチックに歌わない的なことは昔から意識していました。


ーーそして「解離性同一人物」の歌詞には、再起動に戸惑っている感じが出ています。表題曲の歌詞をこれにするというところがとてもメトロノームらしいなと。


シャラク:そうですね、でもそんな重い感じではなくて「あってる? あってるかな?」みたいな感じの。7年ぶりにシングルが出て、「皆で手と手をつないで~」みたいな、いきなりポジティブになってたら気持ち悪いじゃないですか。それは無理しないようにしました。


リウ:僕は再起動一発目にピッタリの歌詞だなと思いました。


■「出来過ぎなくらいの再起動ができてる」(シャラク)


ーー先日行われたZepp Tokyoのライブもソールドアウト、大盛況でしたね。


フクスケ:そうですね。それに関してはとても驚きました。一応活動休止のときも、ソールドアウトだったのですが、今回はそこで見に来れなかった人も、全員が見に来れるような会場を選びました。ありがたいことです。


ーーライブの反響、手応えは?


シャラク:Zepp Tokyoに関して言えば必死だったので、手応えとかはわからないんですけど、友達から「再開するっていう選択肢は正解だったよ」って感想をもらったりして、「ちゃんとできたんだな」って思いました。


フクスケ:見に来てくださった関係者の人に「昔のメトロノームを見た感じがしなくて、新しいメトロノームを見た」って言われたのは嬉しかったですね。


リウ:ライブにすごいいっぱいの人が来てくれて、イヤモニしてても歓声は聴こえてきたし、皆楽しそうにしてたので本当にいいライブだなと思いました。そこにプラスして、今回久々というのもあって、スタッフさんもなるべく昔と同じ人に集まってもらったんです。その人たちがライブ終わったら本当に嬉しそうにしてくれてたのが良かったです。


ーー先ほど、フクスケさんは今後のリリースは決まってないと仰っていましたが、今後の活動方針は決まっていますか?


フクスケ:具体的なことは言えないのですが。Zepp Tokyoのライブやその後のインストアイベントのときにも、ちょっと大げさに「もう楽しいことしかしない」って言ってたんですけど、まさにそんな感じです。ひとつひとつの活動を大事にできるようなスタンスでいきたいと思っています。そして大事に活動していくと……、その分音源とか、シングルやアルバムが出たり……?


リウ:新曲も増えるんじゃないかなあ~?


フクスケ:何も決まってないけど、ツアーもやればそりゃあ新曲も作りたくなっちゃうかもしれないな~?


リウ:この間のライブも、カメラいっぱい入ってたな~?


フクスケ:何か映像のようなものが、出るのかもしれない。そんな気が、しなくもないですね~?


ーーあくまで仮定の話だと(笑)。11月からの『再起動ONE MAN TOUR 至極当然リザンプション』では新曲は出てきたりするのでしょうか。


リウ:まだ再起動してやってない曲も多いので、そっちをやる方向でいきます。


フクスケ:まだライブでやれてない曲も多いですからね。いっぱいやったんですけど。


ーーでは、最後にお一人ずつ再起動への意気込みをおねがいします。


リウ:最高の再起動のスタートができたと思います。色んな人の手伝いがあって、何よりもファンの人が喜んでくれるのがうれしいです。この後の活動も期待してください。


フクスケ:……終わった?


リウ:2人の喋る隙間を残しつつ……。


シャラク:(手を挙げる)とても出来過ぎなくらいの再起動ができてると思うので、そのまま勢いを殺さずに、皆を楽しませるようにがんばりますので、あんまりガツガツやんないかもしれないけど、のんびり応援してもらえたらうれしいです。


フクスケ:ツアーもタイトルのとおり、至極当然なことをもう一回思い出そうと。だから7年前を思い出すようなツアーというか、お客さんもこの7年がなかったんじゃないかってくらいの思い出しを期待しつつ……(笑)。きっとライブが成功して、2017年は、きっと曲を作りたくなると思うんです(笑)。そしたらまた新しいメトロノームが見られるんじゃないかな。期待していて損はないんじゃないかなと(笑)。もちろん、その時々も大事なんですが、先を見据えた楽しいことをしたいと思います。