今週末、マレーシアのセパンインターナショナルサーキットでMotoGP第17戦マレーシアGPが開催される。日本GP、オーストラリアGPと続いてきた3週連続のフライアウエイラウンドの最終レース。マレーシアGPを終えると、最終戦のバレンシアGPを残すのみとなる。
■新舗装の路面による影響は
マレーシアGPの舞台となるセパンサーキットは、1999年から世界グランプリのホストコースとしての歴史があり、シーズンオフのテストの舞台としても利用されている。
1周5.548kmのコースは、約900mの2本のストレートを持ち、右コーナー10、左コーナー5の計15のコーナーで構成されている。MotoGPクラスのアベレージスピードは約165km/hと中速コース。スタート直後の1、2コーナーは右左の切り替えしのあるタイトコーナーだが、その後は高速コーナーや回り込んだコーナーが続くテクニカルコースとして知られている。
また、熱帯地方にあるため、高温多湿でライダーのフィジカル面ではタフなコースとしても知られており、さらに突然のスコールなど、セッション中にコースコンディションが急変することもある。今年は路面の舗装工事が実施され、新舗装の路面がどのような影響を及ぼすかに注目が集まる。
昨年のマレーシアGPのMotoGPクラスではダニ・ペドロサ(レプソル・ホンダ)が優勝、2位にホルヘ・ロレンソ(モビスター・ヤマハ)、3位にバレンティーノ・ロッシ(モビスター・ヤマハ)が入賞した。
しかし、決勝レース序盤にロッシとマルク・マルケス(レプソル・ホンダ)が接触ギリギリのきわどいバトルを展開した末に両者が接触、マルケスが転倒しリタイアとなった。
ロッシはレース後、次戦(最終戦)のバレンシアGPで最後尾スタートというペナルティを受けることになり、マレーシアGP終了時点でポイントリーダーにつけていたが、最後尾スタートのペナルティが響き、ロレンソが逆転でタイトルを獲得した。
マルケスとロッシの接触はセパンクラッシュと呼ばれて大きな話題になった。Moto2クラスではヨハン・ザルコ(カレックス)が優勝、Moto3クラスではミゲール・オリベイラ(KTM)が優勝している。
MotoGPクラスでは日本GPでタイトルを確定させたマルケスだったが、続くオーストラリアGPでは転倒リタイアを喫し、今季初のノーポイントレース。タイトル争いのプレッシャーから解放されたマルケスだが、セパンでは2013年、2014年にポールポジションを獲得、2014年に1勝を記録している。昨年は因縁のレースとなったセパンでどんな走りを見せるか。
「オーストラリアではいいレースをしようとトライしたけどできなかった。その中でポジティブなこともあり、今回も学習することができたと思う。将来、似たような状況になったときには気をつけたい。乗れているとき、自分の自信をコントロールすることは簡単ではないんだ。セパンでは2月のテストのときは、まだセットアップの方向性を見つけるのに苦労した。その後、路面が再舗装されているから、どのようにレースウイークを組み立てて行くか確認したい」とマルケス。
ランキング2位につけるロッシは前戦オーストラリアGPで15番グリッドからスタートして2位入賞を果たし、ランキング2位争いをリード。セパンの最高峰クラスでは2001年、2003年、2004年、2006年、2008年、2010年と通算6勝を記録している得意なコース。
「セパンは好きなコースのひとつ。天候によっては困難なレースのひとつとなってしまう。とても暑く、食事と水に注意を払う必要がある。フィジカル面での要求が非常に厳しいが、ボクは好調だ。フィリップアイランドの週末はとても難しかったけど、最後にはいい結果で締めくくることがてきてうれしい。マレーシアでは最初のセッションからいい仕事ができることを期待する。いいレースをして、もう一度表彰台を獲得したい」とロッシ。
ランキング3位のロレンソはオーストラリアGPで6位に終わり、ロッシとのポイント差は24ポイントへと拡大してしまった。セパンでは4年連続5回の表彰台を獲得しているロレンソだが、まだ優勝した経験がない。
今シーズン開幕前のオフィシャルテストでもトップタイムを記録するなど得意なコースだけに、ロッシとのランキング争いのために上位でフィニッシュしたいところ。
「フィリップアイランドのリザルトは期待どおりではなかった。コンディションに苦戦し、思うように走ることができなかった。今年は気温が低すぎると苦戦している。タイヤ温度を上昇させることが難しいんだ。セパンはフィリップアイランドとは全く異なるコースだ。今年は路面は新しく舗装され、プレシーズンのテストとは異なるだろう。マレーシアは暑いので、今週末はタイヤ温度が問題にならないことを期待する。もう一度表彰台争いにトライしたい」とロレンソ。
前戦オーストラリアGPで2戦連続となる3位表彰台を獲得したマーベリック・ビニャーレス(スズキ)はロレンソに9ポイント差のランキング4位。Moto2時代の2014年。125時代の2011年に優勝経験があるコースで今シーズン2勝目をねらう。
「セパンはいつも快適さと自信を得ることができるコース。非常に厳しい気象条件の中でマシンへの要求も厳しく、パワーが非常に重要となる。昨年と比較して、エンジンとシームレスギアボックスにより、ボクたちのパフォーマンスは大きく改良され、2月のテストではポジティブな結果を得られた。ここ数戦の結果からも、チャンスがあると思う。気温が高いのでタイヤへの負担が非常に大きいから、リアタイヤの消耗に注意しなければいけない。数字的にはまだチャンピオンシップ総合3位をねらうことができるから、これが目標だ。簡単ではないけど、目標達成に向けてトライしたい」とビニャーレス。
日本GPでケガを負ったランキング5位のペドロサは今レースも欠場。代役には青山 博一(ホンダ)が起用される。青山は250時代の2007年と2009年にセパンで優勝した経験を持つ。
「レプソル・ホンダチームで再びレースをできるチャンスを得ることができてうれしい。日本GPでは土曜日のフリー走行3回目からの走行だったので、バイクに合わせ自分のリズムを見つけなければならなかったから、ちょっとチャレンジングだった。今回は走り始めからバイクのいいフィーリングを見つけて、うまく仕事を進めたい。ダニに早く復帰してほしいが、彼が復帰するまではホンダとレプソル・ホンダチームのためにベストをつくす。火曜日は僕の35歳の誕生日だった。マレーシアで誕生日を迎えることができてうれしい。好きな国だし、セパンでレースをするのが楽しみだ」と青山。
前戦オーストラリアGPで2勝目を記録したカル・クロッチロウ(LCRホンダ)はランキング6位に浮上した。セパンでは昨年の5位がベストリザルト。
アンドレア・ドビジオーゾ(ドゥカティ)がランキング7位に後退、ポル・エスパルガロ(ヤマハ・テック3)がランキング8位に続き、4戦を欠場していたランキング9位のアンドレア・イアンノーネ(ドゥカティ)が今レースから復帰予定。その間に代役を務めたランキング10位のエクトル・バルベラ(アビンティアレーシング)は今レースより、本来所属するアビンディアレーシングからの参戦となる。
■Moto2チャンピオン確定の可能性
Moto2クラスではランキングトップのヨハン・ザルコ(カレックス)がタイトル確定の可能性のあるレースとなる。
ランキング2位のトーマス・ルティ(カレックス)とは22ポイント差、ランキング3位のアレックス・リンス(カレックス)とは25ポイント差。ザルコは前戦オーストラリアGPで12位に終わってしまった。
いっぽう、ルティは日本GP、オーストラリアGPと2連勝を飾りランキング2位に浮上、リンスは日本GPで負傷し、2戦連続ノーポイントに終わり、ランキング3位に後退している。この中で最も勢いのあるのがルティ、ルティは昨年のマレーシアGPでも優勝を経験している。タイトル確定の可能性は次のとおり。
(1)ザルコが優勝した場合
(2)ザルコが2位か3位でルティとリンスの前でゴールした場合
(3)ザルコが4位で、ルティが6位以下、リンスが表彰台に立てなかった場合
(4)ザルコが5位から13位で、リンスの前で、ルティの少なくとも3ポジション前でゴールした場合
ザルコがMoto2クラスで初の連覇を達成できるかに注目が集まる。
アラゴンGPから3戦連続で表彰台に立ったフランコ・モルビデリ(カレックス)はタイトル獲得のチャンスはないが、ランキング4位に浮上。サム・ロウズ(カレックス)は2戦連続リタイアでタイトルの可能性を失い、ランキング5位に後退してしまった。
中上貴晶(カレックス)もタイトルの可能性はないものの、モルビデリと18ポイント差、ロウズと3ポイント差でランキング4位を争う。中上はオーストラリアGPでは予選の転倒で右肩を脱臼するケガを負ったにも関わらず、決勝5位でチェッカーを受けた。セパンでの巻き返しに期待がかかる。
■Moto3クラスランキング2位争いの行方は
Moto3クラスではアラゴンGPでタイトルを決めたブラッド・ビンダー(KTM)が、転倒者が続出する難しいコンディションのレースとなった前戦オーストラリアGPで今シーズン6勝目を記録、2014年のジャック・ミラー、2015年のダニー・ケントが記録したシーズン6勝目に並んだ。
ランキング2位のエネア・バスティアニーニ(ホンダ)、ランキング3位のホルヘ・ナバーロ(ホンダ)、ランキング4位のニッコロ・ブレーガ(KTM)はオーストラリアGPで転倒ノーポイントに終わっている。ランキング2位争いはバスティアニーニとナバーロが21ポイント差、ナバーロとブレーガが14ポイント差となっており、残り2戦でのポイント争いに注目が集まる。
尾野弘樹(ホンダ)と鈴木竜生(マヒンドラ)はふたりとも難しいコンディションのオーストラリアGPでポイントを獲得。尾野がランキング23位、鈴木がランキング26位から上位をめざす。