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『ドクターX』圧倒的な人気誇る理由 “無敵の大門未知子”のマンガ的おもしろさを探る

2016年10月27日 06:01  リアルサウンド

リアルサウンド

リアルサウンド映画部

 2年ぶりのシリーズ第4弾も、視聴率は1話20.4%、2話19.7%と、その人気に衰えは見られず、「『2ケタがやっと』の他作品など眼中にない」とでも言わんばかり。別次元の世界を突き進む『ドクターX~外科医・大門未知子』(テレビ朝日系)。


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 「なぜこれほど人気があるのか?」、そんな編集部からのお題に応えるべく、一人勝ちの理由を探っていきたい。


 もちろん、米倉涼子演じる大門未知子の魅力が大きいのは言うまでもないが、それ以上に特筆すべきは、作品のコンセプト。今シリーズでも冒頭に「2016年、白い巨塔の崩壊は留まるところを知らず、命のやり取りをする医療は迷走を極めていた」「有名大学病院がブランド力の強化に奔走し、一方、高いスキルを持つ外科医は高額な金で海外に流出。医学界はさらなるグローバルな弱肉強食の時代に突入した」「そんな中、どこの組織にも属さないフリーランス、すなわち一匹狼のドクターが現れた」「たとえばこの女。群れを嫌い、権威を嫌い、束縛を嫌い、専門医のライセンスと叩き上げのスキルだけが彼女の武器だ。外科医・大門未知子、またの名をドクターX」という長いナレーションが必ず入るが、このコンセプト自体に引きつけられている人が多い。


 たとえば、リアリティのある骨太な人間ドラマが見たいなら『白い巨塔』(フジテレビ系)がいいし、難手術に挑むスーパードクターとそのチームが見たいなら『医龍』(フジテレビ系)がいいのだが、「現在の視聴者が求めているのはそれらではない」ということ。


 大学病院の暗部を題材にしているのは『白い巨塔』と同じであり、スーパードクターが重病患者を救うのは『医龍』と同じだが、『ドクターX』における人間関係は簡略化され、その分エンタメにシフトして、気楽に見られる作品にしている。


 その証拠に、シリーズ初期は色濃かった「巨大医療組織vsフリーランスの女医」という図式がだんだんと薄れて、もはや「誰が出てきても最初から勝負にならない」ほど大門未知子の圧勝。巨大医療組織は、単なる“こっけいな噛ませ犬”として扱われている。


 しかし、ただ簡略化するのではなく、「大門のキャラクターと手術シーンをより鮮烈にする」「噛ませ犬として新たな大物・演技派俳優をキャスティング」「毎週の患者に時事性や社会風刺を採り入れる」というエンタメを徹底し、視聴者を喜ばせようとしているのだ。


 なかでも、噛ませ犬のキャスティングには、一切の妥協なし。これまで西田敏行、北大路欣也、伊東四朗、竜雷太、古谷一行、中尾彬、伊武雅刀、小林稔侍、笹野高史、勝村政信、段田安則、遠藤憲一、古田新太、鈴木浩介、三田佳子、室井滋、高畑淳子、ジュディ・オングらを出演させ、今シリーズでも吉田鋼太郎、滝藤賢一、泉ピン子、草刈民代を起用するなど、他局が悔しがる大物や演技派を次々に獲得している。


 しかも、男優全員が古く非効率な男社会の象徴となり、大門に負かされるための役なのだから視聴者はたまらない。難手術を成功させて患者を救うカタルシスに加え、大物や演技派男優たちが「御意」や腰巾着ぶりを見せた上で、情けなく負けていく姿に爽快感を覚えるのだ。


 これまで『ドクターX』を分析したコラムでは、「時代劇の手法」「西部劇の要素がある」などの評論があったが、私の見方はもっと単純。「主人公が無敵・無敗のマンガ」にしか見えない。たとえば、『ゴルゴ13』のデューク東郷を思わせる超絶技術、『Dr.スランプ』のアラレちゃんを思わせる無邪気さ、『こち亀』の両さんを思わせる欲深さ……すべては無敵・無敗の強さを引き立てるマンガ的な設定を大門未知子に施しているのだ。


 だから大門未知子は、脳から心肺、消化器、手足まで、あらゆる身体の部位を手術できるし、海外病院での緊急手術だって、獣医として馬の手術だって難なくこなしてしまう。そんな大門の手術を見た周囲の「スゴイ……」「何て技術だ」などのセリフもマンガの吹き出しに近い。前述した3つのマンガは、いずれも幅広い年代に受け入れられた超人気作であり、『ドクターX』もその点では同じだろう。


 『ドクターX』は、プライムタイムの連ドラで唯一視聴率20%を獲れる貴重なシリーズだが、その内容はシリーズ第一弾からあまり変わっていないし、制作サイドは「予定調和を見せることこそ視聴者サービス」と考えている節がある。


そのため、多くの人々がハマっている反面、ハマらない人は「むしろ嫌い」というアンチの勢力も意外に大きい。かつてのプロ野球・読売ジャイアンツのように、「大半の人が好きだが、それ以外の人はみんな嫌い」という状態にある。


 もし『ドクターX』が何かしらのほころびを見せたとき、アンチたちは黙っていないだろう。ただしかし、ファンとアンチの攻防戦がはじまったところで、それも人気の証であり、やはりその存在感は揺るがないものと思われる。(木村隆志)