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工藤静香と共演、TETSUYAらが楽曲提供! 相川七瀬が世代を越えて愛される理由

2016年10月26日 19:31  リアルサウンド

リアルサウンド

相川七瀬

 相川七瀬が、デビュー20周年を総括する約3年半ぶりのオリジナルアルバム『NOW OR NEVER』を10月26日にリリースする。彼女の“師匠”である織田哲郎が作曲を手掛けたアルバム表題曲「NOW OR NEVER」を幕開けに、AKi(シド)、柴崎浩(ex.WANDS)、TAKUYA(ex.JUDY AND MARY)、TETSUYA(L'Arc~en~Ciel)、J(LUNA SEA)、室姫深(ex. THE MAD CAPSULE MARKETS/DIE IN CRIES)、都啓一(Rayflower/SOPHIA)、といった、錚々たるアーティストが作曲者に名を連ねており、彼女はそのバラエティに富んだ楽曲群を、パワフルな歌声で乗りこなしている。そもそも彼女は、まだまだ音楽バブル真っ只中で、ふわふわと世の中が浮かれていた95年に、まさにデビュー曲の「夢見る少女じゃいられない」さながらな鋭いまなざしを携えて世に現れてから、結婚、出産などを経て、表現の幅を広げながらも、「私は私」であるスタンスを貫いてきた。その20年の歩みは、「NOW OR NEVER」で歌われている〈何も正解じゃない 誰も正義じゃない 指図しないでGet out/本気で生きてOwn way〉という言葉に表れていると思う。だからこそ、これだけ幅広いアーティストと信頼関係を結び、楽曲提供をしてもらうことができたのだ。また、テレビに出ている彼女の姿しか知らない人は、彼女のことを「芸能人」として認識しているかもしれないが、これだけロックに根付いたアーティストと信頼関係を結んでいるという事実からは、彼女の根底にあるものは紛れもなく「歌」であることを証明している。


 では、何故彼女は芸能人としても活動しているのかと言えば、それもまた、彼女の人懐っこい性格ゆえのものだろう。アーティストも芸能人も関係ない、リスペクトし合えればみんな仲間――そんなスタンスは、『NOW OR NEVER』とセットになったDVDに収録されている『NANASE AIKAWA 20th ANNIVERSARY GIG』の模様からも伺える。昨年11月8日に東京・EX THEATER ROPPONGIで行われたこのライブは、彼女が20年間生み出してきた名曲の数々を楽しめるだけではなく、築いてきた繋がりや、彼女の人柄を見せるものになった。


 織田哲郎が共通の”師匠”といえる浅岡雄也(ex.FIELD OF VIEW)と美しいハーモニーを響かせた、「君がいたから」(FIELD OF VIEWのカバー)。MVにも出演した、エグスプロージョンとトレンディエンジェル斎藤といったタレント(と、この日はひとりでできるもんも)と共演した「満月にSHOUT!」。藍井エイルと共に歌った「BREAK OUT!」。中村あゆみ、寺田恵子、杏子といった先輩ロックディーヴァと、それぞれの代表曲を歌い上げ、トドメにはこの3人とともに「BOMBER GIRL」を熱唱。そしてアンコールには、彼女がアーティストを目指すキッカケとなった工藤静香が登場し、彼女がオーディションで歌ったという「嵐の素顔」を共演! それまでビシッと決めていた彼女の表情が少女のように緩んで、お姉さんのように笑顔で見守る工藤と無邪気に振付けを合わせていた光景には、彼女のこれまでとこれからが凝縮されていたのではないだろうか。そして、これだけバラバラなアーティストが集結するライブは、なかなかないだろう。笑って、泣かせて、聴かせて、一緒に歌えるという、これまで彼女が追求してきたパフォーマンスの究極が見られたステージでもあったと思う。


 20周年に向けて、彼女の活動を総括するようなリリースは、数年前から始まっていた。ライブでも披露された「君がいたから」をはじめとした、織田哲郎が作ったヒット曲だけをカバーしたアルバムを、2015年10月28日にリリース。そもそも織田哲郎は、彼女に提供してきたようなロックナンバーだけではなく、酒井法子の「碧いうさぎ」や、中山美穂&WANDSの「世界中の誰よりきっと」といったような、広く愛されているJ-POPも生み出してきた。そういった楽曲を彼女流に歌った今作からは、師匠へのリスペクトと、「ジャンルは関係ない、いいものはいい」といったスタンスが表れていた。


 さらに、彼女自身がカバーされるトリビュートアルバムも、2014年12月3日にリリースされていた。ライブにも参加した藍井エイルをはじめとして、Silent Siren、赤い公園、東京女子流、moumoonなど、これまたジャンルを越えた幅広いアーティストが参加。これは、彼女自身がジャンルを越えて影響を与えているアーティストであるからこそのラインナップだろう。


 先に、「まだまだ音楽バブル真っ只中で、ふわふわと世の中が浮かれていた95年にデビュー」と書いたが、そんな時代に華々しく現れた彼女が20年間もサバイブしてこれたのは、彼女の音楽的なキャパシティの広さと、ボーカリストとしての芯の強さに他ならない。相反するようなふたつの武器を抱えて、時にしなやかに、時に頑固に歌い続けてきたからこそ、世代やジャンルを越えた先輩や後輩、仲間に愛されている今があるのだろう。そして、過去を慈しみながらも前進を止めない、といった方向性も、この20周年にまつわる活動からは浮かび上がってくる。だから彼女は、懐かしい楽曲を歌いながらも「あの人は今」な存在にならないし、むしろ驚きを与えてくれる存在であり続けているのだと思う。


 こうなると、早くも『NOW OR NEVER』の先が楽しみになってくる。まだまだ相川七瀬の音楽愛と固い絆が生み出した冒険は続いていく。(文=高橋美穂)