長時間労働や過労死が問題となる中、残業を禁止するなどして労働環境の改善を試みる企業も増えてきている。
そんな中、定時退社の導入を1年間経験した人物が10月22日にはてな匿名ダイアリーに寄せた「定時退社を導入するとどうなるか」という投稿が話題になっている。
「その仕事がはたして定時に終わるか考えながら上司は命令しなければいけない」
投稿者が勤務する会社では、サービス残業や持ち帰り残業は禁止。定時になると会社から出されるという徹底ぶりだ。未だ従業員に長時間労働を強いる企業が多い現状を考えると、羨ましく映る。
だが、いい点ばかりではないようだ。残業禁止により労働時間が限られるものの、人員の補充はない。仕事量も締め切りも変わらないため、「余計な仕事」を減らすことになり、上司も気軽に命令ができなくなる。また、時間をかけずに仕事を進める必要が生じるため、部下も採用されるかわからないのに「こうした企画はどうですか?」と上に提案することがなくなる。やがて指示系統は必然的にトップダウン式になるというのだ。
投稿者は、定時退社制度を成功させるためには以下の4つの条件をクリアする必要があるとしている。
・会社の意思決定を完全にトップダウンにしないといけない
・部下は命令されたこと以外はやらないものと心得なければいけない
・その仕事がはたして定時に終わるか考えながら上司は命令しなければいけない
・会議・ミーティングは時間の無駄だから減らさなければいけない
これを徹底しないと定時では帰れなくなり、「ただのサービス残業強要になってしまうだろう」と忠告した。
追記として、他人の仕事を進んで手伝うことや、突発的な仕事や他人から頼まれる仕事を憎むようになり「勤労意欲が激減した」と書いているが、かえって職場の雰囲気がギスギスしてしまいそうだ。
「いっそのこと、日本国内すべての会社で残業禁止になってくれ」
はてなブックマークなどでは、
「そもそも定時退社がデフォのはずなんだから、導入以前の仕事量に無理がある会社だったんだろうとしか。人増やさないんだったら業務の規模縮小したら?」
「『残業禁止にするけど納期は延びないぞ!』なんて小学校のさんすうからやり直せって言えば良いのか?」
といった、労働時間のみを削り、同じ仕事量を増員なしでさせることが問題だという声が挙がる。
IT系企業で定時退社制度を導入している人物の勤務先では、他社より給与を下げて増員する形をとるが、納期遅れは常態化しているという。そのため、「納期遅れを許さない方面には参入できない会社になっている」と現状を書いている。
業種によって顧客対応のため残業禁止が厳しいケースもある。ネットを見ると、「比較的、ホワイトなIT系勤めているけど、残業0は無理。トラブル時とリリース前後は残業しないと回らん」などの書き込もある。
また、一社だけ残業禁止をしても、納期遅れを起こして顧客を失っては本末転倒という意見もあった。
「残業できないから納期が守れなくて、クライアントが他の会社に流れて、そっちでは残業対応してくれるからやれる…というのならば、いっそのこと日本国内すべて残業禁止にしてしまえ」
一企業の努力だけでどうにかできる問題ではなく、働き方そのものを根本的に見直す必要があることを知るべきだろう。
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