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嵐、新作『Are You Happy?』はどんな作品? 10月26日発売の注目新譜5選

2016年10月25日 17:01  リアルサウンド

リアルサウンド

(C)タナカケンイチ

<森朋之の「本日、フラゲ日!」vol.21>


 その週のリリース作品の中から、押さえておきたい新譜をご紹介する連載「本日、フラゲ日!」。10月26日リリースからは、嵐、SKY-HI × SALU、大森靖子、Shiggy Jr.、西野カナをピックアップ。ライターの森朋之氏が、それぞれの特徴とともに、楽曲の聴きどころを解説します。(編集部)


(関連:嵐、『Are You Happy?』発売間近に見せたメンバーの絆 “今の嵐”はどう表現される?


■嵐『Are You Happy?』(AL)


 シングル「愛を叫べ」「復活LOVE」「I seek」「Daylight」を含む15thアルバム。前作『Japonism』は日本をテーマにしたコンセプチュアルな作品だったが、本作は『Are You Happy?』というタイトルが示すような、享楽的なイメージに振り切ったアルバムに仕上がっている。ネオ・フィリーソウルと形容すべきサウンドと“こんな人生、楽しまなくちゃソンじゃない?”というメッセージを含んだ歌詞がひとつになったダンスチューン「DRIVE」、軽やかなギターカッティングからスタートするディスコナンバー「Ups and Downs」、80年代風のシンセサウンドのなかで(聴いた瞬間「ハイスクールララバイ」を思い出しました)昭和の青春ドラマを想起させる歌が広がる「青春ブギ」など、気軽に楽しめるナンバーが並んでいるのだ。アルバム中盤~後半にはメンバーの個性的なソロ楽曲が収められているが、全体的な印象はあくまでも明るくてポップ。メンバー全員が30代半ばに差し掛かったこと忘れてしまうような本作のブライトネスは、もちろん大正解。すべての憂さをふっ飛ばしてくれる多幸感こそが嵐の魅力であると、改めて実感できる充実作である。


■SKY-HI × SALU『Say Hello to My Minions』(AL)


 以前から交流があり、お互いの楽曲で客演してきたSKY-HIとSALUががっちりとタッグを組んだコラボレーション・アルバム。AAAのメンバーとして活動すると同時にラッパーとしてのキャリアを磨いてきたSKY-HI、そして、10代半ばからアンダーグラウンド・シーンで存在感を示し、20代前半の時点で“新しい日本語ヒップホップの旗手”と目されたSALU。トラックメイクをAKLOの「RGTO」を手掛けたGAIUS OKAMOTOとO.Y.W.M.のJIGGが担った本作は、「本当のカッコ良さを思い知らせる作品」(SKY-HI)というコメント通り、J-POP的にわかりやすさを意識することなく、現行ヒップホップのマナーとふたりから生じる純粋な創作意欲に徹したきわめて質の高いアルバムに仕上がった。現在の日本のエンターテインメントに対する冷徹な視線、自らのスタンスを明確に示しながら、アートフォームとしてのヒップホップの美しさを体現するリリック/フロウ/ラップがとにかく鮮烈。日本語のヒップホップのレベルを一段引き上げる可能性を持った必聴作だと思う。


■大森靖子『POSITIVE STRESS』(SG)


 “ワンダーロマンス三連福~本日の恋人はあ♥な♥た?!編~”とタイトルされたシングル3部作の第2弾。8月にリリースされた第1弾シングル『ピンクメトセラ/勹″ッと<るSUMMER』では、サクライケンタ(「ピンクメトセラ」)、出羽良彰(amazarashi)が(「勹″ッと<るSUMMER」)がプロデュースを担当していたのだが、本作の表題曲「POSTIVE STRESS」はなんと小室哲哉が作曲を担当。以前から小室(とつんく♂ )へのリスペクトを公言している大森にとってはまさに夢の実現というところだが、90年代から数多くの女の子を“女性アーティスト”として世に送り出してきた小室、そして、自らの存在を通して女の子のパワーと才能を肯定することをコンセプトに掲げている大森のコラボレーションは想像以上の効果を発揮。前向きであることを強要されるような社会の状況をシリアスに捉えつつ、リスナーの全存在を承認するようなエネルギーを持ったポップチューンを体現している。C/Wには、の子(神聖かまってちゃん)の作曲による「非国民的ヒーロー」を収録。の子になりきって書いたかのような大森の歌詞、お互いの生活を入れ替えたMV(の子が大森の家で子供の世話をし、大森がの子の部屋で廃人のように過ごす)も素晴らしい。


■Shiggy Jr.『ALL ABOUT POP』(AL)


 シングル曲「サマータイムラブ」「GHOST PARTY」「恋したらベイベー」「Beautiful Life」含むメジャー1stアルバム。Shiggy Jr.のパブリックイメージと直結するシティポップ風のナンバーを軸にしながら、ヘビィなギターリフが炸裂する「dynamite」、オーガニックなバンドサウンドとともに都会で働く女性を描いた「HOME」、クラシカルなストリングス、フォーキーなメロディ、故郷に対する思いを綴った歌詞がひとつになったバラード「手紙」、90年代J-ROCKを想起させるようなサウンドが印象的な「スタート」といったカラフルな楽曲が収められた本作は、「ALL ABOUT POP」というタイトル通り、このバンドが持つ豊潤なポップ・イディオムとソングライティング・センスを幅広く体感できるアルバムに仕上がっている。優れたポップミュージックに必要な既視感(“どこかで聴いたことがある”という錯覚)を巧みに利用しながら、池田智子のキュートかつシャープな声質を活かし、ライブバンドとしての魅力も感じさせる。緻密なバランスをクリアした本作によって、Shiggy Jr.の音楽性はさらに広く浸透することになりそうだ。


■西野カナ『Dear Bride』(SG)


 全国アリーナツアー2016『Just Love Tour』を開催中の西野カナから届けられた2016年2作目のシングルは、「Dear Bride」というタイトル通り、真っ直ぐで愛らしいウェディングソング。友達のなかで最初に結婚する“君”に対する、ちょっと寂しさが混じったお祝いの気持ち、“何があってもずっと彼がいてくれるから大丈夫”というエールを描いたこの曲は、20代女性の新たな結婚式ソングの定番として認知されること必至だろう。<新しい苗字も自然になって/慣れない料理も少しずつ上手になって>というオーソドックスな(?)結婚観をどこまでも素直に描き(このあっけらかんとした朗らかさには、フェミニスト系の方もツッコめないのではないだろうか)、ほんわかと幸せなムードを生み出せる歌唱は、西野カナの真骨頂と言っていい。「Dear My Friends」(2009年)から7年経って、友達が結婚しはじめる年齢になったんだな……みたいなストーリーのつなぎ方も上手い。(森朋之)