2016年10月25日 10:42 弁護士ドットコム
東京の郊外でバイクで会社まで通勤しているSさん(30代)は、道路が混雑する朝の通勤時、ついついしてしまう「すり抜け運転」について、法的に問題はないのか不安を感じている。
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Sさんが乗っているのは排気量250ccの中型バイク。自動車が列をなしていても、道路の左端、片側2車線の場合は車と車の間をすり抜けて、車よりも早く目的地の職場につくことができるため、朝の混雑時などは、ついやってしまうそうだ。
一方で、車の列が急に動き出した時など、車と接触しそうになりヒヤッとした経験もあるそうだ。バイクで車の間や、わきをすり抜ける行為は法的問題はないのだろうか。交通事故問題に詳しい山田訓敬弁護士に聞いた。
「『すり抜け運転』そのものを禁止する条文は、道路交通法にはありませんが、さまざまな場面で道交法に違反する可能性があります」
山田弁護士はこのように述べる。どんな場合だろうか。
「渋滞によりゆっくりと走行している自動車の列に追いつき、バイクの進路を変更して、渋滞中の自動車の左脇を走行したり、車と車の間をすり抜けたりした場合です。
『車両が他の車両等に追い付いた場合において、その進路を変えてその追い付いた車両等の側方を通過し、かつ、当該車両等の前方に出ること』は『追越し』にあたります(道交法2条1項21号)。
追越しをする場合は、原則として追い越そうとする車両の右側を通行しなければなりません(同28条1項)。よって、バイクで渋滞中の車の左側を走行して追い越すことは、道交法違反となります。
また、片側2車線の場合、追越しをするときは右側の車線(第2車線)を通行しなければならないため(同20条3項第2文)、車線変更をすることなく車と車の間をすり抜けることも、道交法違反となります。
その他にも、信号停止している車の列の先頭に追いつき、先頭の車の前方にある停止線との間のスペースに入ることは『割込み』にあたり、これも道交法違反となります(同32条1項)。なお、停止線を越えてしまうと信号無視になってしまうので注意が必要です。
このように、『すり抜け運転』は法的に問題となる場面が多いです。また、『すり抜け運転』は、交差点において、交差点を右折しようとする車との事故(いわゆるサンキュー事故)が起きてしまうこともあり大変危険です。道路交通法違反になりますし、万一、事故になった場合には民事上の賠償義務を負う可能性もあります。
自分の身を守るためにも、あるいは他の人を巻込む事故とならないためにも、ぜひ控えるべきでしょう。『朝10分だけ早く家をでておけば事故に遭わなかったのに』ということにならないように気をつけてください」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
山田 訓敬(やまだ・くにたか)弁護士
企業法務を中心に企業のトラブル解決に尽力する一方で,個人の交通事故や遺産相続の分野にも力をいれている。特に交通事故事案では,一人でも多くの被害者のお力になりたいとの思いで有志の弁護士らで福岡交通事故相談ダイヤル(無料)を立ち上げその代表を務めています。交通事故相談ダイヤルはhttp://jikosoudan.info/
事務所名:弁護士法人山田総合法律事務所
事務所URL:http://www.yamaben.com/