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丸本莉子、初のラジオパーソナリティーで掴んだ”新しいライブ感覚” カバー曲歌う収録現場に密着

2016年10月24日 19:02  リアルサウンド

リアルサウンド

丸本莉子

 丸本莉子がレギュラーパーソナリティーを務めるラジオ番組『Music Spice+!』(FM FUJI)が、10月3日よりスタートした。


(関連:丸本莉子、カバーに込めた音楽的ルーツを語る 「私を知ってほしいという思いがある」


 丸本はこれまで、ゲストとしてラジオ出演したことはあったが、パーソナリティーを務めるのは今回が初。過去の3回の放送(10月24日現在)では、丸本と所縁の深い地元・広島東洋カープの話題や食欲の秋ということでサンマの食べ方など、ざっくばらんなトークが展開されている。


 リアルサウンドでは、現在丸本が1年をかけて行っているストリートライブプロジェクト『丸本莉子ライヴワーク2016~1万人との癒し旅』に密着している。中島みゆきの「糸」や荒井由実「やさしさに包まれたなら」など、各公演で披露するカバー曲が丸本のストリートライブの魅力の一つであるが、ラジオ番組でも弾き語りでDREAMS COME TRUE「LOVE LOVE LOVE」などを歌唱している。今回、ストリートをはじめとしたライブとラジオでのカバー曲の演奏に通ずるものを探るために、『Music Spice+!』の収録現場にも足を運び、収録終了後には、丸本本人だけではなく、番組プロデューサーの川村智文氏(セントラルミュージック メディア本部宣伝制作部)にもインタビューを行った。



 収録スタジオに訪れると、ちょうど番組スタッフとのミーティングが行われていた。そして、収録ブースに移動し、ラジオ収録がスタートした。ライブで見せる丸本とは違った、ラフで飾らない素のままの丸本のトークに、スタジオにはスタッフの笑い声が溢れる。川村氏は番組のコンセプトは“アーティストが真ん中”にいることだと話す。


「アーティストがライブをやるように。アーティストが番組の真ん中にいてくれればいいと思ってます。アーティストに自分の言葉で話してもらうというのがコンセプトですね。特に上手にやろうとはしないで、楽しんでやってもらえればいい。30分の枠の中で、自分が好きな楽曲を自由に紹介したり、丸本さんみたいに自分でも弾き語りをやってもらっても構わない。標準語で喋ってくれなくてもよくて、自分が普段使ってくれてる言葉で個性を出して欲しいんです。彼女は楽曲とトークにギャップがあって。シビアだったり、表現力豊かに歌っている中で、トークの素の部分では年相応の女の子。予想以上に面白いですよね。しっかりと楽曲を聴いてもらう部分と、本当はこんな子なんだよという二面性が出た方がアーティストとしての表現の場としてはいいのかなって思います」


 川村氏はラジオ収録が終わると、収録部屋の重たいドアを開け「ラジオっぽくなったね。巣作りができてるね」と嬉しそうに丸本へ声をかけていたのが印象的であった。


「丸本さんは日常や自分のことをトークしていくのは得意じゃないのかなと思っていたら、僕なんかが思っているよりも、考えたりトライしてくれてるというのが分かるし、進歩しているので驚きましたね。さっき言った「ラジオっぽくなったね」というのは本当にラジオを楽しもうとしてるのがすごく分かったんです。丸本さんは、アーティストでありシンガーソングライターなので、DJとかパーソナリティーの喋り手として面白くなるのは目指さなくていい。この番組を自分のステージに活かしてくださいという意味で、やってもらってるんですね。ライブでもMCで喋って『次の曲を聴いてください』という流れがあって。ラジオもある意味そうじゃないですか。番組ではカバー曲の弾き語りをしたり、ステージ上でもカバーや自分の曲をやったり、曲紹介、歌唱理由だったり、ラジオとステージがリンクして同じような番組・ライブ構成が生まれる。ラジオのパーソナリティーになるのではなくて、あくまでも丸本莉子がステージを、ラジオをやっているということでいいんですよ。そのスタンスを理解してやってくれてるような気がしますね」


 丸本のレギュラーパーソナリティーは始まったばかり。過去の放送で丸本はミディアム調の楽曲を中心に披露しているが、川村氏は今後の丸本へどのような期待を抱いているのだろうか。


「丸本さんには楽しいにこやかなアップテンポの曲にトライしてみて欲しいですね。例えば、AKB48の『恋するフォーチュンクッキー』を彼女がギターで弾き語ったらどんな風になるのかなという期待が持てる子なので。僕らは提案はしていくけど強制はせずに、彼女の中からどんなことがでてくるのか、1クール、半年タームで見ていきたいなと思っていますね。ラジオも自分の庭にしちゃうくらい半年後にはすごく変わってるんじゃないですかね」




 この日の収録分のラジオの中で丸本は「私、喋るのが好きなんです」と話している場面があった。そんな丸本はラジオのパーソナリティーを務めるにあたって、どのような思いでいるのか。彼女に話を聞いた。


「『大窪シゲキの9ジラジ』(広島エフエム)というラジオ番組が好きで、radikoで毎日聴いていて、最近では『こんな風に喋ったら届くんだ』というのも考えるようになりました。『9ジラジ』は『学生を応援する』というのがテーマなので、私は「癒し」をテーマにやっていきたいなと。ライブでは曲がメインなので、MCはそこまで喋れないけど、逆にラジオでは話を膨らませて面白くしていかなきゃいけないというのがすごい勉強になりますね。『9ジラジ』はディレクターさんとも話しつつ、リスナーとも話しているかのようにしているので、私もそこを意識するようにしています。ディレクターさんも笑って聴いてくれているので、一人じゃないんだと思えて楽しくできていますね」


 デビュー以来、“癒しの歌声”と呼ばれるその声で多くのファンを魅了してきた丸本。24時30分という深い時間から始まることを考えると、疲れた身体を癒す活力として、丸本のラジオが聴かれていることが想像できる。丸本の弾き語りも人気のコーナーの一つ。この日の収録では、先日広島で浜崎貴司(FLYING KIDS)と共に歌ったキリンジ「エイリアンズ」のカバーを聴くことができた。丸本の歌声にスタジオにはゆったりとした時間が流れる。



「弾き語りコーナーでは、今までライブで披露してきたカバー曲を歌ってきたんですけど、次の収録では新しい曲にも挑戦しようとしていて。前回のインタビューで話したミニー・リパートンの『ラヴィン・ユー』、ダニエル・パウターの『バッド・デイ』などの洋楽もそうですし、川村さんが提案してくれた『恋するフォーチュンクッキー』とか、同じAKB48の『365日の紙飛行機』、椎名林檎の『丸の内サディスティック』とか普段ライブで歌わないような曲もやっていきたいですね」


 丸本がラジオのパーソナリティーを務め、およそ1カ月。川村氏が話していた通り、1クール、半年タームで番組は続いていく。最後に今後に向けた丸本の思いを聞いた。


「リスナーからのメールにも深夜に聞く私の声が落ち着きますというのが多くて。自分の強みである声を“癒しの空間”としてどんどん拡げていき。しっかり締めるところは締める、メリハリのあるラジオにしていきたいなと思いますね」


 「番組の経験を自分のステージに活かしてください」、川村氏のこのコメントがなんとも印象的だった。パーソナリティーとしての経験は必ずライブのステージにも反映されていくはず。それは丸本の話していた楽曲のレパートリーや、トークとしてのMCを考えてもそうだ。特にストリートライブでの、曲と曲の間のファンとの会話での言葉選びは、次に歌う楽曲への心情へと繋がる。丸本のMCはさらに良くなっていく予感を感じさせ、ライブでも新しいレパートリーが聴けるのではないかと期待できる。12月には広島、東京の2カ所でワンマンライブ『丸本ん家(ち)へようこそ~ぷれぜんとふぉーゆー2016~』を開催する。ラジオの経験が丸本のアーティスト力にどう影響していくのか。まずは、年末のワンマンライブでその成果が試されるだろう。


(渡辺彰浩)