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F1アメリカGP決勝:ハミルトンが完勝、マクラーレン・ホンダは鈴鹿の不振を払拭するダブル入賞

2016年10月24日 06:51  AUTOSPORT web

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F1アメリカGPで見事、優勝したメルセデスのハミルトン
日曜のオースティンは前日までとは打って変わって雲に覆われていたが、午後になって肌を焼くような強い陽射しが戻ってきた。それでも路面温度は35度とそれほど上昇はせずタイヤには優しコンディションとなった。 

 予選後のパルクフェルメでのパワーユニットやギヤボックス交換などはなく、スターティンググリッドは予選順位のまま午後2時の決勝を迎えた。

 スタートタイヤ選択は大きく分かれ、Q3進出組みの中ではQ2をソフトで通過したメルセデスの2台とマックス・フェルスタッペンがソフト。そしてトップ10以下ではソフトが中心となるが11位 セルジオ・ペレス、17位 ロマン・グロージャン、19位 ジェンソン・バトンがスーパーソフト、最後列のフェリペ・ナッセとエステバン・オコンがミディアムと、戦略が複雑に分かれる決勝のスタートとなった。

 メルセデスAMG勢は2台揃って無難なスタートを決めたが、ルイス・ハミルトンがターン1へイン寄りのラインを取ったのに対してニコ・ロズベルグはアウト側へ。その隙を突いてダニエル・リカルドがインに飛び込み、ターン1の立ち上がりでハミルトンに抑えられるかたちで加速が鈍ったロズベルグから2番手を奪い取った。

 後方ではキミ・ライコネンがフェルスタッペンの前に出て4位へ浮上。6位セバスチャン・ベッテルもフェルスタッペンに仕掛けて行くがオーバーテイクまでは至らない。
 ターン1で行き場をなくしたニコ・ヒュルケンベルグはイン側にいたバルテリ・ボッタスに追突するかたちになり、ヒュルケンベルグはピットまで戻ったがリタイア。ボッタスは右リヤタイヤをパンクさせてタイヤ交換を余儀なくされた。

 さらにターン11ではペレスがダニール・クビアトに追突されてスピン。「ひどく追突された! なんてバカなことするんだ!」と激怒する。クビアトは「追い風で全然ブレーキが効かなかったんだ!」と釈明したが10秒加算ペナルティを科されてしまった。


 マクラーレン勢はスタート直後の1コーナーでワイドにはみ出たものの、フェルナンド・アロンソが9位、バトンが11位と混乱に乗じて好位置に浮上してみせた。さらにバトンはエステバン・グティエレスに迫って3周目のターン1でインを突くが、サイドバイサイドのままいったその先のターン3でデブリをヒットして後退。しかし、バックストレートからターン12にかけて悠々とパスして10位に浮上してみせた。

 8周目のリカルドを皮切りに、1回目のピットストップが始まる。ライコネンもこれに反応してピットインするが、バトンの後方に戻ってしまいタイムロス。メルセデスAMGは10周目にピットインさせるはずだったハミルトンをステイアウトさせロズベルグのピットインを優先させたが、リカルド逆転はならなかったばかりか、あわやライコネンの逆転を許すところだった。

 ミディアムタイヤに交換したロズベルグに対し、9周目にピットインしたフェルスタッペンはソフトに交換し、ライコネンを逆転してロズベルグをプッシュするが、ロズベルグも巧みにこれを抑え込む。「4位で終わるためにここにいるんじゃないぞ」とエンジニアに言われたフェルスタッペンだが、ペースは徐々に下がっていきロズベルグから遅れ始めた。逆にロズベルグはリカルドとの差を縮めて1秒以内に迫っていく。

 首位ハミルトンは11周目まで引っ張ってソフトタイヤに交換し首位のままコースに戻った。2位リカルドに5秒以上のせーフィティマージンを築いて「ペースはOK?」と聞くハミルトンに、エンジニアからも「ペースは良いよ、ルイス」と盤石の体制だ。

 11周目にピットインしコースに戻ったアロンソは「ルノーの後ろに入るなんて、最悪だ!」と文句を言うが各車がピットインしたところでトップ6台とフェリペ・マッサ、カルロス・サインツJr.に次ぐ9位。

 10周目にピットインしたバトンもその7秒後方でステイアウトのクビアトを処理して10位で続く。いずれもミディアムタイヤを履いてレースの最後にプッシュする戦略を採る。しかしその後方には同じ戦略のペレス、そしてソフトタイヤを履くグロージャンが2秒以内の差で続く。

 ペースが上がらず6位 ベッテルを押さえ込むかたちになっていたライコネンは、24周目にピットに飛び込んでスーパーソフトタイヤに交換、3ストップ作戦に切り替えてきた。


 2位リカルドも25周目にピットインし、ミディアムタイヤに交換。翌26周目にフェルスタッペンもピットインするがこれはミスコミュニケーションで、ピットでは準備が全く出来ておらず、ピットボックスの前で待った上に静止時間9.2秒という大きなタイムロス。
 一方のメルセデスAMG勢はすぐには反応せずにステイアウトを続けたが、これが功を奏した。30周目のバックストレートを立ち上がったところでフェルスタッペンのマシンは異音とともに駆動が抜けスローダウン。ピットまで戻ろうとしたがターン18にストップし、その車両撤去のためVSCが導入される。この間にメルセデスAMG勢はロスなくピットストップを済ませ、ロズベルグは易々とリカルドの前に留まることに成功した。

 これで上位はハミルトン、ロズベルグ、リカルド、ライコネン、ベッテルの順となったが、ライコネンはスーパーソフトを履いている。その30秒後方の6位にはソフトタイヤのサインツJr.、そしてミディアムタイヤのマッサ、アロンソが続き、15秒あけて9位ペレス、10位バトン、11位グロージャンが入賞圏を争う。

 38周目にライコネンがピットインして3回目のタイヤ交換を行なうが、右リヤタイヤがはまらないままピットアウトしてしまい、「ホイールが外れてきている!」とピット出口でストップ。リバースでピットレーンに戻ってレースを再開しようとしたが、それは許されずリタイアを余儀なくされた。

 各車がピットストップを終えてミディアムタイヤを履き、レースは膠着状態に。首位ハミルトンは2位ロズベルグに10秒差を付けて独走。その後方では3位リカルドが「ロズベルグのペースを伝え続けてくれ。くそっ、捕まえたいんだ!」と失った2位の再逆転を諦めてはいない。


 5位争いはソフトタイヤで残り24周を走り切ろうというサインツJr.の背後に、ミディアムタイヤのマッサとアロンソが1秒差で食らいつく。51周目、サインツJr.がターン15でロックアップしたのと同時にアロンソがマッサのインを突き、僅かに接触しながらも前に出る。マッサは「押し出された!」と不満を訴えるが、アロンソも「完全にドアを閉められた! 僕がインにいたんだから許されるべきじゃない!」と無線で叫ぶ。

 アロンソは続いてサインツJr.を猛追し、「もうタイヤが終わった!」と訴えるサインツJr.を55周目のバックストレートで捕まえ、ターン11で僅かにオーバーシュートしながらも抜き去ってマクラーレン・ホンダとしては過去最高タイの5位でフィニッシュ。バトンも9位とダブル入賞を果たした。サインツJr.は6位、接触後に左フロントのパンクでピットインを余儀なくされたマッサは7位、バトンを抑えきったペレスが8位でフィニッシュ、そしてグロージャンが自身100戦目のレースを10位ポイント獲得で祝した。

 首位のハミルトンはペースをコントロールしながら後方ロズベルグとのギャップを4.5秒まで縮めて56周を走り切り優勝。第11戦ハンガリーGP以来、実に2カ月半ぶりの優勝を手にした。2位にロズベルグ、3位にはVSCのタイミングで2位を失ったリカルドが入った。