アメリカGPの土曜日、FIAが「ブレーキングエリアでの進路変更はレギュレーション違反である」ことを明確化した。
発端は、その前日の金曜日に開かれた定例のドライバーズミーティングの席上だった。進行役を務めるチャーリー・ホワイティング(FIAレースディレクター)が、アメリカGPにおける諸注意が伝えた後、「何か質問は?」と尋ねると、複数のドライバーがブレーキングエリアでの進路変更についてのルールの明確化を求めてきたという。
もちろん、それは前戦日本GPでのフェルスタッペンのハミルトンに対する危険なブレーキングや、ハンガリーGPやベルギーGPでのフェルスタッペンのライコネンに対する危険な進路変更に対する抗議であることは間違いない。
結局、フェルスタッペンを除くすべてのドライバーが、FIAがこの件を明確化することに同意し、散会。その後、FIAは緊急会議を開いて、レギュレーションの細部をより明確にする作業を行った。そして、「ブレーキング時の進路変更は、異常とみなすべきで、ほかのドライバーを危険にさらす可能性がある。このような動きに対して、今後われわれ(FIA)はレース審議委員会に報告することを決定した」
事実上、ブレーキングゾーンでの進路変更の禁止である。
この決定に対して、土曜日の予選後の会見で、フェルスタッペンは「素直に受け入れるよ」と珍しく従順な態度を見せつつも、「このルールは僕だけに適用されるわけじゃないから、みんなも従う必要がある」と強気な態度も見せていた。
しかし、ハミルトンが所属するメルセデスAMGのあるエンジニアは「これによって、ダメージを受けるのはマックスだけだろう」と話す。「なぜなら、ブレーキングゾーンでの進路変更を行っているのは彼だけだからね。いずれにしてもオーバーテイクが増えてエキサイティングになるだろう」
さらにそのエンジニアはこう付け加えた。「マックスには真摯に反省してもらいたい。彼がこれまで行ってきたドライビングは非常に危険なものだったんだからね」
メルセデスAMGは、日本GPのレース後にFIAに抗議をしていたが、直後に取り下げた。当初、これは「現場に残っていたスタッフとサーキットをすぐに離れなければならなかった首脳陣との間のコミュニケーションがうまく取れなかったからだ」とトト・ウォルフ(エグゼクティブディレクター/ビジネス)は回答していたが、そのエンジニアによれば、「抗議を出せば、裁定が降りるのは2週間後となる。そうなると、レース結果はすべて暫定となり、われわれのコンストラクターズ選手権も決定とはならない。われわれは鈴鹿で3連覇を祝いたかったから、取り下げただけのこと。決して、マックスの行動を肯定したわけではないということを忘れないでほしい」
果たして、新ルールが適用されて行われる初めてのレースとなるアメリカGP。オーバーテイクでどのような攻防が見られるのか、注目したい。