「40歳で妊娠」とかいう芸能人のニュースが入るたび、自分はまだ余裕だとタカをくくっていた筆者だったが、気づけばあっという間に35歳。いわゆる、「妊娠確率がガクっと下がる」年齢にきてしまった。
子どもを作るなら早い方が良いとわかっていたものの、なぜかいっこうに上がらぬ出産欲に戸惑い、「産まない選択」をした山口智子に共感していた日々。しかし、いよいよ35歳を通過すると、「本当にソレで良いのかね?」という強迫めいた自分の心の声が聞こえてきた。(文:みゆくらけん)
「薬漬け注射漬けの毎日で、病院へ通うことすらストレスなのに結果が出ない」
そこで出した答えはこう―。「とりあえず、デキる体質かどうかだけでも知ろう」。ぶっちゃけ、結婚してるのに「デキる可能性大」の日はわざとスルーし続けてきた。だから、結婚生活5年にもなるのに、自分が不妊症かどうかすらわからない。
年齢的に悠長なことをやってられないので、レディースクリニックに一度診てもらおうと電話をしたら1か月待ち。人気のクリニックとはえ、こんなにも不妊に悩む人が多いのかと実感させられた。
晩婚化にともない、女性の出産年齢も高くなった今、不妊に悩む夫婦は6組に1組ともいわれているようだ。漠然と描いていた未来には当然のように子どもがいたのに、なかなか授かれない人たち。不妊治療はそんな人たちをサポートする出産に向けた前向きな取り組みだ。しかしその一方で、「辛い」「キツい」「やってられない」という嘆きの声も多い。
WEBメディア「こそだてハック」が10月14日に発表した調査結果によると、不妊治療経験者のうち、2人に1人が「治療をやめたいと思ったことがある」と答えているのだという。その理由は、1位が「精神的に不安定になったから」(60.4%)、2位が「経済的に苦しくなったから」(35.6%)だ。
不妊治療は検査の痛みや投薬による体調の悪化など、辛いことが多いというが、その中でも「ココロ」の問題がトップ。具体的にどういったことが辛いのか。ガールズちゃんねるなどには、こんな声もあった。
「薬漬け注射漬けの毎日で、病院へ通うことすらストレスなのに結果が出ない」
「痛い検査や採卵に耐えても成果が出ない」
「妊娠できなかった度に先生を疑う気持ちに疲れてやめた」
「自分の意思や努力でどうにもならないホルモン値と毎回直面するキツさ」
「『産まない』のではなく『産めない』のに、『夫婦で全部お金使えていいわね』みたいなまわりの視線や発言」
「芸能人の出産ニュースや友達の妊娠報告にいちいち打ちのめされる」
職場に関するものでは「不妊治療中は仕事を急に休むことも出てくるので、いつ上司に話そうかと悩んでいた」というものがあった。報告は早い方が良いが、妊娠しても継続するかわからないため、話すタイミングに悩む人は多いようだ。
「夫婦で結果も出ない治療のために何百万もドブに流した」
また、不妊治療をやめたいと思った理由第2位の「金銭的なキツさ」も深刻だ。不妊治療はある意味“底なし沼”で「どこまで、いくらかけてまでやるか」の世界でもある。
「独身時代の貯金を全部使ってもデキなくて諦めた」「夫婦で結果も出ない治療のために何百万もドブに流した」「高額払って治療して流産。流産を経験するために何十万もかけたかのような嫌な気分」と嘆く声も多い。
不妊治療には精神面や経済面でのサポートが不可欠だ(現在、国が特定不妊治療に要する費用の一部を助成)。また、「仕事と両立しにくい」という声にも対応できるような職場のサポート体制・雰囲気作りも必須だろう。
ちなみに、初診予約をした筆者だが、今後の流れとして通うことになるかどうかはわからない。深く考えずに「とりあえず受けてみよう」と叩いた扉だが、開いたら最後、一喜一憂する日々が待っているのかもしれない。自分の気持ちの変化が半分興味深く、半分怖い。
あわせてよみたい:子どもを産めず「捨て石」に