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乃木坂46 橋本奈々未がアイドル界にもたらした“豊かさ” 16th選抜が持つ意味を読む

2016年10月22日 15:01  リアルサウンド

リアルサウンド

乃木坂46『サヨナラの意味(初回仕様限定盤Type-A)』

 乃木坂46が10月17日放送の『乃木坂工事中』(テレビ東京系)で、16thシングル『サヨナラの意味』の選抜メンバーを発表した。


 今回は15thシングル『裸足でSummer』の16人選抜から3人が増加し、19人選抜に変更。20日に『乃木坂46のオールナイトニッポン』(ニッポン放送)で卒業と芸能界からの引退を発表した橋本奈々未が“最初で最後のセンター”を務めることとなった。さらに、高山一実が初めて1列目の位置に移動したほか、伊藤万理華と井上小百合が14thシングル以来、新内眞衣が12thシングル以来の選抜復帰を果たした。


 橋本の卒業にあたってのセンター抜擢や、人数を増加させた今回の選抜メンバーは、どのような意味を持つのだろうか。リアルサウンドで乃木坂46系の記事を多数執筆してきた『「アイドル」の読み方: 混乱する「語り」を問う』の著者・香月孝史氏はまず、今作の位置付けについてこう定義する。


「14thシングル『ハルジオンが咲く頃』は、中心メンバーだった深川麻衣さんを卒業タイミングで表題曲のセンターに起用するという試みを初めて行なった作品でした。今回もその系譜といってよいかもしれません。今年は深川さん卒業、齋藤飛鳥さん初センター、橋本さん卒業と、センターを起点にグループの転換期を告げるシングルが続いたことになります」


 また、同氏は、センターを務める橋本が「アイドルシーンの中でも特異な存在である」と解説する。


「以前に連載(http://realsound.jp/2016/04/post-7157.html)でも取り上げましたが、橋本さんは『ハルジオンが咲く頃』の特典DVDで『わりとずっと身近に卒業っていうものがあり続けながらきた』と語っていたように、グループから卒業することを“衝撃”として捉えない視点で発言してきた人です。それは、人生のうちのある短い期間に特別な注目が集まりがちなアイドルというジャンルにあって、アイドルになる前もアイドルをやめた後も変わらず人生は進行するし、どの時期も同じ尊さを持っているということをごく自然に意識させてくれる姿勢でした。そのようなフラットな視点を持った橋本さんが乃木坂46のフロントにいることで、ジャンル全体にある種の豊かさが生まれていたといえるでしょう」


 続けて、初めて1列目メンバーとなった高山一実と、2列目の注目メンバーである齋藤飛鳥と堀未央奈についてこう述べる。


「高山さんは選抜2列目・3列目にいる時期が長く、対世間的にもバラエティ番組で目立つキャラクターとしての印象が強いかもしれません。しかし、彼女はアイドルというジャンルやその歴史への思いが強く、それを活かしたパフォーマンスができるメンバーなので、グループの顔である1列目として、どのような活躍を見せることができるのか楽しみです。いずれもセンター経験者の齋藤さんと堀さんは、グループの次代を担う存在のため、橋本さんの両後ろという位置でどのような見え方になるのかも興味深いところです」


 そして、13thシングル『今、話したい誰かがいる』内の「大人への近道」以来となったユニット・サンクエトワール(北野日奈子、寺田蘭世、中田花奈、中元日芽香、堀未央奈)が「君に贈る花がない」で復活していることも注目ポイントだという。


 そして、13thシングル『今、話したい誰かがいる』内の「大人への近道」以来となったユニット・サンクエトワール(北野日奈子、寺田蘭世、中田花奈、中元日芽香、堀未央奈)が「君に贈る花がない」で復活していることも注目ポイントだという。


「サンクエトワールは昨年、アンダーメンバーのユニットとしてグループのさらなる可能性を示してくれていました。アンダーユニットとしての歴史を持つサンクエトワールが今回、選抜・アンダー混成のユニットとして再登場することで、より選抜とアンダーについての考え方が柔軟になっていけば面白いと思います。アンダーメンバーも、前作でフロントの位置にいた渡辺みり愛さんや寺田蘭世さんといった2期生メンバー、前作収録の『シークレットグラフィティー』でセンターを経験した樋口日奈さんといった顔ぶれが、選抜の人数増加を受けて15thとは違う目立ち方をすることになるため、新たなフェーズへ入ったと考えられます」


 『サヨナラの意味』でアイドル活動を終了する橋本は、最後の作品でどのような役割を果たしてくれるのか。そしてますます層が厚くなり活発化するユニット・アンダーメンバーは、さらなる活躍の場を見つけることができるのだろうか。


(文=中村拓海)