2016年10月22日 11:41 弁護士ドットコム
有給休暇を使って、旅行やリフレッシュのために時間を使ったーー。会社員は当たり前のように口にしますが、「有給休暇」は、企業の正社員だけのための制度なのでしょうか。厚生労働省のHPによれば、その定義は「一定期間勤続した労働者に対して、心身の疲労を回復しゆとりある生活を保障するために付与される休暇のこと」。
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ここでいう「労働者」は、誰なのか。「有給を取りたい」とアルバイト先に申し出たところ、「有給?うちの職場はないよ」と言われた人から、ネットの掲示板に投稿がありました。 しかし、弁護士によれば、正社員だけではなく、パートやアルバイトでも取得できるそうです。アルバイトの有給消化のルールは、どのように決まっているのでしょうか。光永享央弁護士に聞きました。
●有休が「発生」するルールは、正社員もアルバイトも同じ
実は、有給休暇(有休)の「発生」に関するルールは、正社員だろうとパートだろうと、学生アルバイトだろうとまったく変わりません。採用日から6か月間継続して勤務し、その間の全労働日の8割以上出勤すれば、自動的に有休が発生します。
このルールは労働基準法で定められた全国一律の最低基準です。会社が勝手にこれよりも厳しいルール(たとえば「バイトには有休は与えない」など)を就業規則などで定めたとしても、無効となります(強行法規といいます)。
「6か月間継続して勤務」は、アルバイトの場合、面接を受けて採用された日から6か月経ったらOKということです。また、「全労働日の8割以上出勤」は、採用された時に会社と取り決めた出勤日数の8割以上実際に出勤することです。たとえば、週3回勤務すると取り決めた場合、半年を26週とすると、63回出勤すればOKです(3×26×0.8=62.4日)。
●付与される「日数」には違いがある
有休の「発生」に関するルールは正社員もアルバイトも同じですが、上で説明した条件を満たした場合に付与される有休の「日数」には、所定労働日数・時間による違いがあります。
正社員の場合、入社から半年経って付与される有休は10日ですが、アルバイトの場合は、週3日勤務なら有休は5日、週2日勤務なら3日、と勤務日数に比例して有休日数も少なくなります(「比例付与」といいます。)。
ただし、立場がパートやアルバイトでも、勤務日数が週4日「超」(年間217日以上)、または週4日「以内」であっても週30時間以上勤務している場合は、正社員並みに半年で10日間の有休が付与されますので、ガッツリ働いている人は騙されないように注意してください。
●「うちの職場にはない」は通用しない
さきほど述べたように、有休は全国一律最低限の制度ですので、「うちの職場にはない」は通用しません。上の表をチェックして、自分がいま何日分の有休の権利を持っているのかを確認しましょう。労働者が何月何日に有休を使うと会社に告げれば、原則として自動的に有休を使った(権利行使)ことになります。
これに対し、会社側は「事業の正常な運営を妨げる場合」には有休取得日を変更することができますが(時季変更権)、恒常的な人手不足という理由は「事業の正常な運営を妨げる場合」に当たらないとされています。正面突破で休み、後日その日の給与を堂々と請求しましょう。 もし、有休を取った日の給与を会社が払わない場合は、最寄りの労働基準監督署に相談して指導してもらうことをお勧めします。
【取材協力弁護士】
光永 享央(みつなが・たかひろ)弁護士
一橋大学社会学部卒。2007年弁護士登録(旧60期)。福岡県弁護士会所属。労働者側専門の弁護士として過労死事件や労働事件を数多く手がけ、新卒学生の採用「内々定」取消しの違法性を認める画期的判決も獲得している。
事務所名:光永法律事務所
事務所URL:http://www.mitsunaga-roudou.jp/