2016年10月22日 11:41 弁護士ドットコム
政務活動費の使途などをめぐり、市民が地方議会に厳しい視線を向ける中、情報公開請求した市民や報道機関の名前が関係者に漏れるケースが9月下旬に相次ぎ報じられ、波紋を広げている。
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報道によると、佐賀県唐津市では、市議会の議長が、市議会に対する情報公開請求を請求した者と代理人の氏名を、別の市議に伝えていた。また、石川県金沢市では、議会事務局が、市議会本会議の傍聴者の氏名や、情報公開請求をした報道機関の名前を無断で市議に提供していた。
情報公開請求した側の情報を、市議などに伝えることは、法的には問題はないのか。情報公開請求の制度趣旨との関係において、どう考えればいいのか。湯川二朗弁護士に聞いた。
「結論から言えば、今回のような議長や事務局の行動は問題があると考えます」
湯川弁護士はこのように述べる。何が問題だったと考えているのか。
「情報公開請求制度の趣旨から考えてみましょう。
情報公開制度は、行政や議会の市民に対する説明責任、市民の市政に対する知る権利、そして市政に対する市民の理解と信頼を深め公正で開かれた市政の推進のために、市民をはじめとする何人に対しても、行政や市議会の保有する情報を請求に応じて公開するという制度です。
たしかに、請求者の氏名を別の市議などに伝えてはならないということは、情報公開条例に定められてはいません。
しかし、情報公開請求をしたということが、行政や市議会の関係者に筒抜けになるようでは、市民も情報公開請求をためらうことにもなりかねません。
何よりも、市政に対する市民の理解と信頼を深め、公正で開かれた市政を推進するという情報公開制度の理念に反するものです」
「また、こうした行為は個人情報保護条例にも反するといえます。
行政はさまざまな場面で市民の個人情報を取得しますので、行政の保有する個人情報は適正に保護されなければなりません。目的外で利用したり、実施機関以外の者に提供したりしてはならないこととされています。
市議会議長が情報公開の決裁の際に知った請求者の氏名は、まさに保有個人情報として保護されなければならず、たとえ市議会議員に対してであっても提供されてはならないものです。
したがって、議長の今回の行為は、情報公開条例の理念に反するばかりか、個人情報保護条例にも反する可能性があります。
『ついうっかり』とか、『関係議員だから一応知らせておいた』というのは、市議会議長たるもの許されないことです。これを機会に情報公開や個人情報保護について、再度よく見直していただきたいと思います」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
湯川 二朗(ゆかわ・じろう)弁護士
京都出身。東京で弁護士を開業した後、福井に移り、さらに京都に戻って地元で弁護士をやっています。土地区画整理法、廃棄物処理法関係等行政訴訟を多く扱っています。全国各地からご相談ご依頼を受けて、県外に行くことが多いです。
事務所名:湯川法律事務所
事務所URL:https://www.bengo4.com/kyoto/a_26100/g_26104/l_123648/