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Perfumeのライブはなぜかくも愛される? 2016年を総括する「Dome Edition」への期待

2016年10月21日 20:01  リアルサウンド

リアルサウンド

Perfume

 今年春、最新アルバム『COSMIC EXPLORER』をリリースし、5月からはそれを携えた自身6度目のツアーに出ていたPerfume。日本でのアリーナ15公演を終了させた後、基本的にその同じ内容を持って初の北米ツアー(ロサンジェルス、サンフランシスコ、シカゴ、ニューヨークの4ヶ所5公演)も敢行。YouTubeをきっかけにPerfume愛を深めた海外ファンは、「日本も世界も一緒だよ」という彼女たちの思いのこもったステージに熱狂した。これは、2012年から3度に渡って挑戦、継続してきた自己紹介的なワールド・ツアーがもたらした、目覚ましい結果と言える。


 そんな着実な歩みを経て、10月22日の京セラドーム大阪から、今ツアーの締めとなる「Dome Edition」がスタートする。『COSMIC EXPLORER』リリース時に行われたオフィシャル・インタビューで、タイトルについてあ~ちゃんは、「あえてのド真ん中がついに来た! と思いました。この壮大な言葉を掲げた中田(ヤスタカ)さんの本気に応えたいと、腹をくくった感じです」と語り、かしゆかものっちも「心はひとつ」とうなずいていた。そこから3人は、「宇宙の冒険者」というワードを、そのスピリットも含めてどうライブで体現すべきか、多くの試行錯誤を重ねてきた。「Dome Edition」はその完結編。最高の舞台を得て、アリーナや北米とはまた一味も二味も違うアプローチを見せてくれるはずだ。


 ちなみにアリーナ・ツアーでは、360度に観客を配したステージだった。そこに対する音響、照明、映像などのアジャストは素晴らしく、掛け値なしに観客はどの角度からでも楽しめたが、さて今回はどんなテでくるだろう。いずれにしろ、更にバージョンアップされたステージが期待できる。その前提があって、中田ヤスタカが新たなPerfumeの魅力を引き出した渾身の作でもある『COSMIC EXPLORER』のサウンド・イメージを、観客の驚きと歓喜に導く画期的な演出が可能となるわけだ。それを手がけるのは、リオ五輪閉会式で「フラッグハンドオーバーセレモニー 芸術パート」の演出を担って注目を浴びたMIKIKO。


 個性的なコリオグラファーでもあるMIKIKOは、Perfumeとはデビュー以前からずっとともに歩んできた。歌詞を可視化させたPerfume独特の美しいダンスは、「スーパー・シンクロナイズト・コリオグラフィー」と呼ばれ、今や世界的評価を得ているが、それは、Perfumeの路上やライブハウス時代の苦悩や奮闘も知るMIKIKOが、3人の思いを曲ごと唯一のダンスに深く内包させ、3人は3人で、そこにこめられたMIKIKOの想いを実現すべく切磋琢磨を続けてきた結果だ。出会いと歳月が育んだ根っこの強いアートなのだ。


 演出面の多くを技術面で支えているのが、クリエイティブ集団・ライゾマティクスの真鍋大度をはじめとしたチームPerfume。お馴染みとなった発光する衣装をはじめ、映像、特殊効果などを斬新なアイディアで組み合わせたハッとするシーンが見られるのもまたPerfumeのライブの醍醐味。しかし、どんな最先端技術を使った演出であろうと、その軸となるのは、あくまでも3人が肉体を使って緻密にコントロールする動きの美しさだ。未来永劫変わらないデジタル・データさえ降参しそうなPerfumeのブレない「人力」こそ、何より特筆すべき点だろう。


 見とれてしまうほどの美しさやカッコよさに加え、それとはまったく対照的な親近感あふれる場面もバランスよくちりばめられている。何が起こるかわからないハプニングをみんなで味わうコーナーの楽しさは格別だし、天然で天才的な3人の話術には、否が応にも笑顔がこぼれてしまうはず。アルバム『GAME』が出た2008年の1stツアーからずっと、ショーとしての完成度が上がる様を目の当たりにしてきたが、いつも観終わって思うのは「ああ、最後はやっぱり“人”だな」ということ。ありきたりな言い方が恥ずかしくないほど、本当に毎回そう思う。やれテクノだデジタルだと取り上げられているのとは対局の、「また会いたい」とただ素直に感じられるあ~ちゃん、かしゆか、のっちの人間味。それこそが、世界中の人々がPerfumeを愛してやまない理由だ。


 2016年の総括となる「Dome Edition」では、新たな夢のカケラを示してもくれるだろう。今年最大のPerfumeの冒険を、ぜひ体験してみてほしい。


(文=藤井美保)