2016年10月21日 10:21 弁護士ドットコム
「刃物のまち」として知られる岐阜県関市は9月下旬、ふるさと納税の返礼品として、関の刀匠らが作る真剣の日本刀を贈ることを発表した。
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市の発表によると、寄附金額500万円で「熟練刀工作成」、300万円で「新進気鋭刀工作成」の2つのコースが用意されている。各5振り限定で、市の重要無形文化財保持者に認定されている尾川光敏さん(63)ら関伝日本刀鍛錬技術保存会所属の刀匠10人が担当する。
市の担当者に確認したところ、10月3日に申し込みが開始されると、即日で10振りの枠は埋まり、その後も日に2~3件のペースで問い合わせが来ているという。「キャンセル待ちでもいいから」という声まであるそうだ。
ふるさと納税というと、寄付した金額を後から税金から引いてもらえるからお得だと紹介されることが多いが、今回のように寄附金額が高額な場合でも、お得になるのだろうか。新井佑介税理士に聞いた。
「まず『ふるさと納税』について簡単に整理しましょう。そもそも『ふるさと納税』とは好きな地方自治体に『寄付』をすることで、特産品等の返礼品が送付されてくることを一般的に意味します。
ポイントは主に3つです。1点目は『納税』ではなく『寄付』であること、2点目は寄付する自治体は自由に選ぶことができるため、出身地などの『ふるさと』に限定されないこと、3点目は返礼がある、すなわち見返りがあるということです。
『ふるさと納税』という言葉が一人歩きして、『故郷に税金を納めること』と勘違いされている方もいらっしゃるので注意が必要です」
新井税理士はこのように述べる。具体的にはどんな仕組みなのか。
「地方自治体に寄付した場合、一定額が『寄付金控除』として所得税と個人住民税から控除されます。簡単に言えば、寄付した分は、翌年本来納めるべきだった税金の枠から差し引かれるということです。
ここで重要な点としては、控除できる金額には限度額があるということです。限度額は、年収や家族構成などの条件で、人それぞれ異なります。たとえば、夫婦二人の家庭で、夫が年収500万円、妻は専業主婦という家庭の場合、控除限度額は約5万円です。
限度額の範囲内であれば、実質的に、自己負担2000円でさまざまな返礼品を受け取ることができますが、それを超える分は控除に反映されることはありません。
今回のケースのように、300万円を超える高額な寄付の場合、ざっくり計算しても、限度額いっぱいの控除を受けるためには、数千万から1億円以上の年収が必要となるでしょう」
では、今回のようなケースでは、お金持ちしか利用できないということだろうか。
「そんなことはありません。年収に関係なく、いくらでも寄付することは可能です。極端な話、貯金を切り崩してでも、あるいは借金をしてでも寄付することができます。
しかし今回のケースでは、先ほどご説明した控除限度額が存在するため、税金上の恩恵(寄附金控除)をフルにうけることができません。
なお、高額な返礼品は、所得税法上の一時所得として、課税対象になる可能性がある点にも注意が必要です」
【取材協力税理士】
新井 佑介(あらい・ゆうすけ)公認会計士・税理士
慶応義塾大学経済学部卒業。金融機関との金融調整から新設法人支援まで、幅広く全力でクライアントをサポート。趣味はサーフィンとスノーボード、そして登山。好きな言葉は「変わり続ける勇気」
事務所名 : 経営革新等支援機関 新井会計事務所
事務所URL: http://shozo-arai.tkcnf.com/pc/
(弁護士ドットコムニュース)