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学校行事で「プロカメラマン」が撮影した写真、購入後の著作権はどうなるの?

2016年10月21日 10:12  弁護士ドットコム

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運動会や遠足などの学校イベントで、学校がプロのカメラマンを手配し、後日、希望する生徒に有料で販売する。そんなケースは珍しくない。しかし、その写真の使い方はどのようなルールになっているのだろうか。東京都内の主婦・J子さん(30代)は、この写真をどう扱うべきか、頭を悩ませている。


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困っているのが、J子さんが委員を務める公立小学校のPTA活動だ。PTAでは、生徒や地域住民に配る学校の広報誌を年に数回発行する。費用は、PTA会費から捻出し、販売はしない。J子さんによれば、「子どもたちの年間行事の様子を伝える内容で、写真メインの作りとなります。問題は掲載する写真です。保護者がいないイベントでは、学校の先生か、プロカメラマンが撮影した写真しかありません」という。


ある日、先生から「先月のイベントは教員が撮影できなかったので、プロカメラマンが撮影した写真を使ってください」と言われたそうだ。しかし、J子さんは「著作権の問題は大丈夫なんでしょうか」と心配している。また、J子さんは運動会でプロカメラマンが撮影した写真をデータにして、年賀状に使うつもりだが、その点も問題ないか気にしているという。


学校イベントに招かれたプロカメラマンが撮影した写真は、誰に著作権があるのだろうか。購入した保護者は、年賀状やSNS投稿にするなど自由に使っても問題ないのだろうか。井奈波朋子弁護士に話を聞いた。


●プロカメラマン撮影の著作権は誰にある?

「写真の著作権は原則として、撮影した人にあります。一般的にはイベントの写真についても、撮影した人の個性が発揮されていると考えられます。そこで、このような写真も著作物と認められ、撮影した人が著作権者となります」


学校イベントの写真であっても、著作権はプロのカメラマンにあるようだ。では、広報誌に掲載することは、著作権上の問題に発展するのだろうか。


「写真を広報誌に掲載することは、写真の複製にあたります。複製権は著作者(著作物を創作した者)が専有しますので、勝手に広報誌に掲載することは複製権に抵触することになります。


ただし、使い方によっては、著作権侵害に該当しない場合もあります。つまり、著作権の例外的な使用に該当する場合です(著作権法第30条~第47条の8)。


たとえば、広報誌でイベントの様子の説明をメインとし、それを解説するために数枚の写真を掲載するような場合には、適法引用に該当すると考えることができる場合もあるでしょう。ご質問のように写真をメインとした広報誌であるとすると、適法引用には該当しません」


著作権の例外的な使用に該当しない場合には、やはり広報誌に利用することは認められないのだろうか。


「著作権の例外に該当しない場合、撮影したカメラマンに断りをいれる、つまり、許諾をとる必要があります。使用料については、カメラマン次第ですが、無償で使用を認めてくれる場合もあるかもしれませんし、有償の場合もあると思います。


イベントの写真は、保護者に一枚いくらで販売するものとは別の使い方をされる場合が多いと考えられます。そのような場合に備えて、学校やPTAとカメラマンとの間において、広報誌に掲載するなどの利用について合意をしておくか、著作権を譲渡してもらうことが望ましいといえます」


●個人が年賀状やSNSに使うのもダメ?

購入した写真を、個人がスキャナで取り込み、SNSに投稿することも認められないのだろうか?


「写真の著作権がカメラマン側にある場合で、業者との間で利用について合意がない場合、著作権法に定める例外の範囲に限って認められることになります。


たとえば、スキャナで読み取って、自分のPCに保存することは、私的使用のための複製に該当するので、適法です。ただし、私的複製の範囲を超える使用はできません。たとえば、FacebookなどSNSに投稿したりすることになれば、写真をサーバーに複製し送信可能化することになるので、複製権および送信可能化権に抵触します」


SNSよりも公開が限られる年賀状だったらどうなのだろうか。


「年賀状で使うことは、著作物を年賀状に複製し頒布することになりますので、複製権および譲渡権に抵触します。年賀状を作成するだけであれば私的複製ですが、当然、頒布することが想定されます。頒布することは、私的複製で作成された複製物の目的外使用ということになり、複製権に抵触します(著作権法第21条)。


他人の写真をネットに投稿したり、年賀状に使ったりということは、日常的によく行われることかもしれません。これは、カメラマン側が使用に気がつかないか、気がついたとしても目くじらを立てるほどではないということで、実際に問題になることがないだけです」


今回は「紙」焼きで写真が渡されていたケースだった。もしデジタルデータで、学校側から販売されていた場合、著作権の考え方は違うのだろうか。


「写真がデジタルデータであったとしても、写真であることに変わりありません。これは、著作権法に、写真の著作物には『写真の製作方法に類似する方法を用いて表現される著作物を含む(著作権法第10条)』と定義されていることからも明らかです」


(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
井奈波 朋子(いなば・ともこ)弁護士
著作権・商標権をはじめとする知的財産権、労働問題等の企業法務、家事事件を主に扱い、これらの分野でフランス語と英語に対応しています。ご相談者のご事情とご希望を丁寧にお伺いし、問題の解決に向けたベストな提案ができるよう心がけております。
事務所名:聖法律事務所
事務所URL:http://shou-law.com/