10月14~16日に開催されたFIA世界耐久選手権(WEC)第7戦富士。富士スピードウェイでの6時間耐久レースに挑んだ2台のポルシェ919ハイブリッドは、ティモ・ベルンハルト/ブランドン・ハートレー/マーク・ウエーバー組1号車が3位表彰台、ロマン・デュマ/ニール・ジャニ/マルク・リーブ組は5位でレースを終えた。
ポルシェのWEC富士ラウンドは、今季限りでウエーバーが現役を引退するという衝撃的なニュースから幕を明けた。
ウエーバーは「来るべきところにたどり着いたんだ」と引退決断を説明する。
「ポルシェはつねにもっとも愛するブランドであり、個人的にも馴染みを感じている」
「ハイスピードかつダウンフォースのあるマシン、そしてバトルの世界から離れることは寂しく思う。ただ、衰える前には現役を退くつもりだったし、次に控えている新しい任務を楽しみにしているよ」
今年40歳を迎えるウエーバーは第一線を退いた後、ポルシェの特別アドバイザーに就任することとなるが、LMP1-Hクラスの現役ドライバーとして富士を走るのは、今回が最後となった。
14日(金)のフリー走行では、そのウエーバーが魅せた。午後に行われたフリー走行2回目で1分24秒074のファステストラップを記録をしてみせたのだ。この日、1号車は2セッション合計で95周を走破。翌日以降に控える予選、決勝への準備を入念に進めていく。
一方、2号車には午前中のセッションでオイル漏れのトラブルが発生。90分間の走行時間のうち60分近くを修理に費やしたこともあり、周回数は2セッション合計で64周。しかし、両セッションとも総合4番手のタイムを記録し、ポテンシャルの高さをみせつけた。
一夜明けて行われた公式予選は、ポルシェ、アウディ、トヨタの6台が0.564秒以内にひしめく大激戦となる。そのなかでポルシェ陣営は1号車がポールシッターの8号車アウディにわずか0.025秒差まで肉薄。ポールポジション獲得はならなかったものの、6時間の決勝レースにフロントロウという好位置から臨むこととなった。
僚友の2号車は、予選アタック中にトラフィックに捕まる不運などがありタイムを伸ばせず。僅差ではあるものの、6番手グリッドから追い上げを狙う。
そして迎えた決勝日、フロントロウスタートの1号車はレース終盤まで8号車アウディ、6号車トヨタTS050ハイブリッドによる三つ巴のトップ争いを演じてみせる。
スタートを担当したウエーバーは、序盤に後方から追い上げてきた6号車トヨタの小林可夢偉と何度か順位を入れ替えながらバトルを展開。最終的には交わされ3番手に後退してしまう。
その後、トップの3台はピットのタイミングでポジションを入れ替えながら走行。1号車は途中、トラフィックを処理する際にタイヤカスを拾ってペースダウン。ギャップが20秒以上に広がる場面もあったが、すぐさまペースを取り戻した。
レース終盤に入り陽が傾き始め、路面温度が下がるにつれ1号車はペースアップ。2番手を行く6号車トヨタの背後に迫ると、度々順位を入れ替えるバトルに発展する。
そして220周目、1号車は暫定トップで最後のピットストップへ。ここでチームは給油に加え、タイヤ交換、ドライバー交代を敢行。最終スティントをウエーバーに託すこととなった。
3番手でコースに復帰したウエーバーはフレッシュなタイヤで前を行く6号車トヨタ、8号車アウディを追いかけようと試みるも、装着したタイヤが路面コンディションにマッチしなかったのか、ペースが上がらず。最終的にトップと17.399秒差の総合3位で富士決戦を終えた。
最終スティントを担当したウエーバーは「1ラップ目は全車がポジションをキープした。その後は序盤にしてアウディとトヨタに突き放される厳しい展開のなか、気温が下がると状況は良くなり何とかトップ争いに踏み止まることができたよ」とレースを振り返る。
「2度目のスティントでは前を行く2台のピットストップでトラブルがあり、ギャップを縮めることができた」
「今日はレースのほとんどでトップ3は近い位置を走り、誰が勝っても不思議ではない展開だったね」
6番手でレースをスタートした2号車はレース序盤はリヤの挙動が安定せず、ペースアップができないまま走行。その後も路面から拾ったタイヤカスがフロントカウルに潜り込んでしまい、空力バランスが悪化するトラブルにも見舞われた。
ピットストップでフロントカウルを交換後は、トップと変わらないペースで走行したものの、順位を入れ替えることはできず5位でフィニッシュ。しかし、ドライバーズランキングでは23点のリードを持って依然トップを維持しており、ポルシェのシリーズ連覇を目指して、残る2ラウンドへ臨む。