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DTM:“引退勧告”の裏側をシャイダーがテレビで激白。アウディとの契約は続行へ

2016年10月20日 17:41  AUTOSPORT web

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ホッケンハイム戦の土曜、涙を浮かべながら引退について語るティモ・シャイダー
10月15~16日に開催されたDTMドイツツーリングカー選手権最終戦ホッケンハイムで、自身の引退を発表したティモ・シャイダーが、アウディスポーツから突然の“引退勧告”を受けた状況をはじめ、その悲劇の裏側をドイツのテレビ番組で激白した。

 DTM最終戦から明けた週の水曜日。夜22時からドイツの地上波スポーツ専門チャンネル『Sport1』で放映された『Boxenfunk - Der Motorsport Talk』という番組に、シャイダーが出演した。

『Boxenfunk - Der Motorsport Talk』は、DTMドライバーや関係者がレースを振り返ったり、ドライバーがその時の心境や戦略を語ったり、さらにDTMのあり方について本音で討論をする60分番組。その内容の濃さや、記者会見では聞けないオフレコトークが聞けるとあって、モータースポーツファンのみならず、関係者にも非常に人気の高い番組だ。

■地上波番組でシャイダーが激白
 19日に放送された今季最後の番組には、チャンピオンのマルコ・ウィットマン(BMW)、惜しくもチャンピオンの座を逃したエドワルド・モルタラ(アウディ)、そして涙の引退会見を行ったシャイダーという三名のドライバーがゲストとして出演した。

 番組中盤、シャイダーに対する“引退勧告”の裏側に話題が向くと、シャイダーはその状況を語った。

 シャイダーによれば、アウディから電話があったのは、ニュルブルクリンク近郊にあるフェニックス・レーシングのファクトリーで、ミーティングやレースの準備をしていた真っ最中だったという。シャイダーはミーティングを中断して電話を受けたが、すでにWEC世界耐久選手権のために日本に向かっていたアウディスポーツ代表のヴォルフガング・ウルリッヒ、アウディのDTM活動を担うディーター・ガスの3人とテレビ電話での会話となった。

 その場でシャイダーに対し『宣告』が行われ、会話はほんの5~6分で済まされたという。さらに話の内容は「土曜日の記者会見まで誰にも話してはいけない」と通告された。シャイダーは「電話を切った後の動揺した表情を、何も知らないフェニックスのクルーに悟られてはいけないと、必死で自分自身を押し殺し、何事もなかったようにミーティングに戻らなければならなかったことは辛かった」と語った。

“引退勧告”については、フェニックスの代表や幹部らにもその時点で、アウディスポーツからは前もって知らされてはいなかったという。

■「最後まで起死回生のチャンスを与えたつもり」とガス
 一方、シャイダーに対して“勧告”を行った立場のガスは、「今シーズンを含めて、数年前からシャイダーのポテンシャルをアウディスポーツで観察していたのだが、このまま改善の余地がないと判断して、DTMおよびアウディスポーツとの契約を終了することに決めた」とSport1局のインタビューに応えた。

 ファンも多かったシャイダーに対し、「なぜもう少し早くに通達しなかったのか」という質問に対してガスは「彼のためを思って、最後まで起死回生のチャンスを与えたつもりだった。早くに知らせて彼のファンをがっかりさせたくなかった」と弁明。ただ、実質的にシャイダーやファンを深く苦しめたかたちとなったことは間違いないだろう。

 シャイダー自身は「もう少し早く、直接会って言ってくれていたのならば、DTMを去るにあたっての気持ちの整理も覚悟ももっと違っていたし、アウディスポーツのやり方には、ティモ・シャイダーというひとりの人間性を否定された気がした」と“魔の電話”を冷静に振り返った。

 そんなシャイダーだが、最終戦ホッケンハイムの終了後、メインスタンドの前で何度もドーナツターンを披露した後に、マシンから降りファンへの感謝の気持ちを表し、自身が装着していたグローブやシューズをスタンドへ投げた。実はこのアクションは、アウディ関係者には内緒で、独自に行った“お別れセレモニー”だったという。

■アウディとの契約は一転続行。参戦カテゴリーは模索へ
 ただ、アウディスポーツとシャイダーとの関係はかろうじて“修復”はされた様子。日曜日のレース後、シャイダーは観戦に訪れていたアウディAGの重役陣と直接話し合う機会に恵まれ、DTMには参戦できないものの、アウディからの解雇は撤回され、一転してアウディに残留することになったという。来季はどのシリーズにスイッチするのかは、今後話し合いが進められる。

 DTM最終戦のレースウィークの土曜日の夜に行われた異例の引退緊急会見では、最終戦のわずか2日前というタイミングでの解雇通知を、しかも電話一本で言い渡されたことについて物議を醸しており、そのアウディのやり方について、ドイツ国内では批判的に報道するメディアが多く見受けられていた。