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MotoGP第16戦オーストラリアGPプレビュー:タイヤの使い方が勝敗を左右するコース

2016年10月20日 15:51  AUTOSPORT web

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今週末、オーストラリアのフィリップアイランドサーキットでMotoGP第16戦オーストラリアGPが開催される。

 フィリップアイランドはメルボルンの南東約200㎞に位置するフィリップ島にあり、目の前には海が広がるサーキット。1周4.448kmのコースは、約900mのメインストレートと右コーナー5、左コーナー7の中高速レイアウトのテクニカルコースで、MotoGPクラスでは1周のアベレージスピードが約180㎞/hとグランプリ開催コース中、最速のコース。昨年、アンドレア・ドビジオーゾ(ドゥカティ)が348.0km/hのトップスピードを記録している。

 フィリップアイランドは、雲の動きと天候の変化が早いことでも知られており、海に面していることから、風が強いことが多く、ライダーにとっては厳しいコンディションのコースでもある。オーストラリアは南半球に位置するため、現在の季節は春。例年、この時期のレースは気温が低く、雨が降ることも多い。また、海に面していることもあり、コース上に飛来した海鳥と走行中のライダーが衝突することもある。

 昨年のMotoGPクラスではマルク・マルケス(ホンダ)が優勝、2位にホルヘ・ロレンソ(ヤマハ)、3位にアンドレア・イアンノーネ(ドゥカティ)が入賞した。

 レース序盤をリードしたのはロレンソだったが、マルケスはイアンノーネ、バレンティーノ・ロッシ(ヤマハ)との2番手争いのバトルを制して、最終ラップにロレンソに追いつき、逆転で勝利を手にした。ロッシは3番手につけていたが、イアンノーネが最終ラップにロッシを交わして表彰台を獲得。チャンピオンを争っていたランキングトップのロッシとランキング2位のポイント差が4ポイント縮まることになった。

 ところが、レース後、ロッシがマルケスが意図的にレースをコントロールし、チャンピオン争いでロレンソが有利になるようなレース展開に持ち込んだのでは、という疑問を呈する。そして、これが続くマレーシアGPでのセパンクラッシュの伏線となった。

 Moto2クラスではアレックス・リンス(カレックス)が優勝、Moto3クラスではミゲール・オリベイラ(KTM)が優勝した。

 MotoGPクラスでは、前戦日本GPでマルク・マルケス(ホンダ)のタイトルが確定。ランキング2位のバレンティーノ・ロッシ(ヤマハ)とランキング3位のホルヘ・ロレンソ(ヤマハ)が転倒リタイアに終わり、昨年とは打って変わって、あっけなくチャンピオン争いに終止符が打たれた。ミシュランのワンメイクとなったタイヤを各ライダーがどう使いこなすかが、今レースのポイントとなるだろう。

 フィリップアイランドでは、2013年には全面再舗装されたばかりの新路面がタイヤに対して負担になり、全クラスでレース距離に対してタイヤがもたない恐れが高かったため、周回数の変更、MotoGPクラスではさらにレース途中でのニュータイヤを履いたマシンへの乗り換えが義務づけられる変則的なレースとなったことがある。

 過去2年間は路面とタイヤの問題は発生していないが、いずれにしてもその高速なコースレイアウトからタイヤに負担の高いコースであることは変わらない。開幕前にテストは行なわれているが、ミシュランで初の実戦となる今レース、温度に対してシビアと言われるタイヤがどう結果に影響を及ぼすかに注目が集まる。

 MotoGPクラスで3度目、通算5度目(125クラス1回、Moto2クラス1回)の世界チャンピオンを獲得したマルケス。もてぎでタイトル確定の可能性はあったものの、ロッシとロレンソの脱落はマルケスにとっても予想外のものだったかもしれない。今シーズンはここまで8人のウイナーが誕生する混戦となっているが、その中でここまで最多の5勝を記録し、唯一、日本GPまでの全戦でポイントを獲得しているのだがマルケス。

 勝てると思ったら勝ちに行き、勝てないときはポイント獲得を優先させることができる速さが、タイトル奪還につながった。フィリップアイランドでは2014年、2015年とポールポジションを獲得、125クラス時代の2010年に1勝、Moto2クラスでは2年連続で表彰台に立った経験を持ち、昨年はMotoGPクラスで初優勝を飾った得意とするサーキットだ。

「チャンピオン争いのプレッシャーから解放されてフィリップアイランドに臨むことができるのはすばらしい。フィリップアイランドは開催コースの中でも、オースティンとアラゴンに並んでボクの一番のお気に入りだ。フィリップアイランドは高速コースでライディングしていてとても楽しいんだ。

 唯一の問題は天気だ。この季節はいつも寒く、風が強い。特にストレートではときにとても風が強いんだ。可能な限り安定したマシンセットアップを見つけなければならない。コンストラクタータイトルとチームタイトル獲得のために、残りのレースも勝てるようにトライしたい」とマルケス。

 もてぎでマルケスを追いながら転倒リタイアに終わったロッシ。ランキング3位のロレンソが同じく転倒リタイアに終わり、二人のポイント差は14ポイントと変わらなかったが、残り2戦でチームメイトとランキング2位を争うことになった。フィリップアイランドでは250クラス時代の1998年に初優勝、1999年も連勝。

 500クラス2年目の2001年には優勝で最高峰クラス初タイトルを決め、MotoGPクラスになってからは、2002年、2003年、2004年、2005年、2014年と5勝、通算8勝を記録しており、ロッシにとって得意なコース。

「0ポイントで終えたもてぎは悪い結果だったが、ボクたちの強さを見せることができたと思う。フィリップアイランドは素晴らしいコース。ボクの大好きなコースだ。速く、強く走れるようにトライしなければならない。すでにミシュランタイヤでテストを行なっているが、最悪のリザルトの後にフィリップアイランドに臨む。天気が悪くないことを望む。もし、寒ければ危険だろう。天気がいいことを希望して、どうなるか様子をみよう」とロッシ。

 ランキング3位のロレンソは、日本GPでの転倒によりタイトル連覇のチャンスを失ったものの、マルケスの強さと安定感をたたえるコメントを残すなど、どこかその結果に納得した様子。フィリップアイランドのMotoGPでは2013年の1勝に止まるが、250クラス時代の2006年2007年と連勝した経験を持つ。

「もてぎは残念な結果だった。でも、タイヤチョイスを間違ったにも関わらず、優勝を争えることを証明できたと思う。ボクとバレのクラッシュがマルクのタイトル確定につながったが、彼は今シーズン、最もコンスタントなライダーだった。これからランキング2位を争わなければならない。

 重要なことは、ボクたちがここにいる理由はチャンピオンになるためだということ。チャンピオン争いは終わったんだから今回のフィリップアイランドは少し不思議なレースになるかもしれないね。でも、ボクはいいレースをして勝ちたい。残り3戦の目標はランキング2位を獲得することだ」とロレンソ。

 前戦日本GPで今シーズン3度目の表彰台に立ったマーベリック・ビニャーレス(スズキ)が、ランキング4位に浮上。Moto2クラス時代の2014年に優勝した経験を持ち、MotoGPクラス初参戦となった昨年は6位に入賞したフィリップアイランドで上位をめざし、ロレンソに17ポイント差と迫ったランキング3位獲得に挑戦する。

「フィリップアイランドでのレースが待ちきれない。最も好きなコースの一つだし、戦闘力があり、表彰台をねらえると思う。天候次第というのはあるが、コースレイアウトはマシンのキャラクターにもボクのライディングスタイルにとってもベスト。高速コーナーが連続し、攻略が難しく、勇気が必要なコースだが、ボクはこれらの条件が大好きだ。日本GPの表彰台は重要で、ポテンシャルを示すことができたし、チームやファクトリーで働くエンジニアの熱意を加速させることができた。この流れにのってライディングできれば、はオーストラリアは素晴らしい週末になるだろう」とビニャーレス。

 日本GPフリー2回目に転倒し、右鎖骨を骨折して欠場したダニ・ペドロサ(ホンダ)はランキング5位に後退。ペドロサはすぐに帰国し、骨折部をプレートで固定する手術を受けたが、今レースも欠場することになった。代役としてニッキー・ヘイデン(ホンダ)が起用される。

 ヘイデンはレプソル・ホンダより2003年からMotoGPクラスに参戦、2006年には世界チャンピオンを獲得した35歳のアメリカ人ライダー。昨年までMotoGPにレギュラー参戦、今シーズンはSBKにフル参戦しているが、第14戦アラゴンGPではジャック・ミラー(ホンダ)の代役として参戦し、15位入賞を果たした。今回は古巣でもあるファクトリーチームでもあるレプソル・ホンダからの参戦となる。

「手術の後、2、3日は痛みがひどかったが、現在は少しずつよくなっている。水曜日には肩の状態をチェックする。そこでおおよその回復にかかる時間とバイクに乗れるようになる時期が見えてくるだろう。マルクとホンダのタイトル獲得を祝福したい」とペドロサ。

「まず、ダニの復帰を願っている。彼はいつものようにさらに強くなって戻ってきてくれるだろう。代役参戦はボクにとってはクレイジーな仕事だけどチャンスでもある。世界タイトルを獲得して10年が経ったが、ボクのドリームチームに復帰できる。ホンダのファクトリーチームでフィリップアイランドの週末を過ごすことができることを考えると感慨深い。こんな機会を与えてくれてとてもうれしいし、ホンダの信頼を感じる」

「それから現在所属しているSBKチームとスポンサーの理解にも感謝している。フィリップアイランドではチームのためにいい仕事がしたい。フィリップアイランドは天候とタイヤの二つが常に重要な要素となる。大好きなコースだし、バイクに乗れることが待ちきれないよ。金曜日の朝のスタートから前進して行きたい」とヘイデン。

 前戦日本GPで今シーズン4回目の表彰台を獲得したアンドレア・ドビジオーゾ(ドゥカティ)がランキング6位に浮上。昨年のレースではフリー走行3回目でウイーク中最速となる348.0km/hのトップスピードを記録。トップスピードには定評のあるデスモセディチGP16で今年はどんな記録をマークするのか。

 カル・クロッチロウ(ホンダ)はドビジオーゾに交わされランキング7位に後退したものの、インディペンデントチームライダーとしてランキングトップをキープ。2012年には3位入賞を果たしたフィリップアイランドで好調さを発揮できるか。
 ポル・エスパルガロ(ヤマハ)は、クロッチロウに10ポイント差に迫るランキング8位。インディペンデントチームライダーのトップ争う二人にも注目。

 ランキング9位のアンドレア・イアンノーネ(ドゥカティ)はサンマリノGPで負った胸椎骨折の治療を継続中で、今回も大事を取って欠場を決めた。日本GPに続いてランキング10位のエクトル・バルベラ(ドゥカティ)が代役を務める。また、バルベラの代わりに日本GPでMotoGPデビューを果たしたオーストラリアの若手ライダー、マイク・ジョーンズ(ドゥカティ)が起用される。

 コースをよく知るホームレースで、MotoGPマシン2戦目のジョーンズがどんな走りを見せるかに注目。前戦日本GPでシーズンベストとなる4位入賞を果たしたアレイシ・エスパルガロ(スズキ)はランキング11位、スズキでの初表彰台獲得をねらう。

 ランキング18位のジャック・ミラー(ホンダ)は最高峰クラス2度目のホームレース。今年はオランダGPで初優勝を飾ったが、その後、ケガもあって思うような活躍を収めることができていないが、Moto3クラス時代の2014年には優勝経験のあるコースで上位をねらう。

 Moto2クラスではヨハン・ザルコ(カレックス)がランキングトップ。アレックス・リンス(カレックス)がランキング2位で続くが、リンスは日本GPのフリー走行2回目で転倒、左肩を強打。以前に負傷して手術していた左鎖骨を痛めてしまい、本来の走りができず、決勝でも転倒、再スタートしたものの20位に終わり、アラゴンGP終了時点で1ポイント差まで縮めていたザルコとのポイント差を広げることになってしまった。今レースを含めて残り3戦、ザルコがアドバンテージを持ってMoto2クラス連覇に臨む。

 日本GPで今シーズン3勝目を記録したトーマス・ルティ(カレックス)がランキング3位に浮上。日本GPで転倒リタイアに終わったサム・ロウズ(カレックス)がランキング4位に後退。

 フランコ・モルビデリ(カレックス)がランキング5位、モルビデリと日本GPで3位表彰台を争った中上 貴晶(カレックス)はモルビデリに5ポイント差のランキング6位につける。中上は昨年のレースでは4位入賞。今レースも引き続き表彰台争いの期待が高い。

 Moto3クラスではブラッド・ビンダー(KTM)がアラゴンGPでタイトルを確定。前戦日本GPで優勝を飾ったエネア・バスティアニーニ(ホンダ)がランキング2位に浮上、転倒ノーポイントに終わったホルヘ・ナバーロ(ホンダ)はランキング3位に後退した。二人のポイント差は21ポイント。残り3戦でのランキング2位争いにも注目。

 ランキング4位にニッコロ・ブレーガ(KTM)が続き、ルーキー・オブ・ザ・イヤーのトップ。もてぎでは初コースにも関わらず、最終的に3位入賞。初走行のフィリップアイランドでどんな走りを見せるかに注目が集まる。

 尾野 弘樹(ホンダ)はもてぎで初ポールポジション獲得、決勝でも3位でチェッカーを受け、初表彰台となったが、レース後の再車検で最低重量違反が発覚し、失格となった。この違反はライダーの責任ではなく、チームの責任。尾野は残りのレースでこの悔しさを晴らす。日本GPで15位入賞した鈴木 竜生(マヒンドラ)はランキング26位から上位をめざす。