今年、ハースF1チームに移籍し、チーフエンジニアとしてチームのレース部門を統括する小松礼雄氏。シーズンもいよいよ終盤戦に入り、マレーシア戦、そして鈴鹿での日本GPの連戦に入りました。チーフエンジニアとして凱旋帰国した鈴鹿の様子をはじめ、F1速報サイトでしか読めない、完全オリジナルコラム第14回をお届けします。
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ハース初めてとなるWリタイアの悪夢
希望が見えた鈴鹿のQ3W突破
今回はマレーシアGPと日本GPの2連戦についてお話したいと思います。最初のマレーシアはとにかく、クルマの信頼性の問題が出すぎてしまいました。今までダブルリタイアはなかったんですけど、今季初めてマレーシアで起きてしまいました。チームとしては、いつかは起きるだろうというような状況だったので、それがこの16戦目のマレーシアまで起きなかったことの方がむしろ、ビックリしています。
2台のトラブルはもちろん、まったく良いことではありません。パーツの管理とかクオリティの話とか、今までなんとかギリギリの線でやってきた部分が多くあるので、いつかは問題が出る可能性が高かったんです。マレーシアでダブルDNFというのはチーム始まって以来のひどい出来事で、その事実がみんなの目の前にドンと突きつけられたっていうのは、ある意味ではいいことだと捉えています。
今までずっと、ウチはポイントを獲れるか獲れないかのあたりでフィニッシュし続けていて、まあまあいけるんじゃないかという根拠のないない安心感がチーム全体にありました。
僕は「開幕4戦5戦くらいまではとにかくリライアビリティ(信頼性の確保)」だとずっと言い続けていて、それを結果としてはなんとかできていたんだけど、それはきちんとしたプロセスに支えられて、できるべくしてできていたとは言い難いんです。
ですから、完走できる自信を持って、いつもクルマを送り出せている状況ではありませんでした。今までは目の前で壊れているものをなんとか壊れないようにして来たというレベルなんです。
これからは1シーズン戦う上で数・質・インストレーション(設備)・距離管理・サービスなど、きちんとしたプロセスを確立していなければ、やはりトラブルは起きてしまいます。こういう本来は当たり前のことができていない。それを当たり前にできるようにしていくのが、新チームでのチャレンジのひとつです。
エステバン(グティエレス)の左フロントの脱輪は、100%ではないですが部品が完璧ではないことプラス、オペレーションの問題が原因です。壊れた箇所は、フロントアクスルとホイールナットの噛み合わせに若干の問題があるため、取り扱いに注意が必要なパーツでした。そこで適切なオペレーションができていなかったのが原因の一端です。
ピットストップでエステバンがコースに出て行って、ブレーキを1回踏んだ時点で「ブレーキがおかしい」というコメントがラジオで入ってきたので、「ゆっくりピットに帰ってきてくれ」とチームからは言いましたが、どんどんバイブレーションがひどくなってコース半分くらいのところでホイールが割れて、クルマから外れてしまいました。
マレーシアではそのトラブルだけじゃなく、週末を通して他にも問題がありました。ロマン(グロージャン)のブレーキが壊れた原因は、おおよそ把握していますが、まだ100%では判っていません。現在でもブレーキ会社と一緒に原因解明の最中です。マレーシアはそんなトラブルだらけで、本当にひどい週末でした。
クルマのパフォーマンスもあまり良くなく、特にロマンはフロントエンドの感覚にとても戸惑っていました。予選ではなんとか12位と13位まで持って来れましたが、Q3進出ラインからは0.5秒の差がありました。ただ、このマレーシアのひどい週末のあとにすぐ鈴鹿でレースがあったのは、すごく良かったです。連戦で、次に挽回できるチャンスがすぐにあるというのが気持ち的に良かったです。
それで鈴鹿で走り始めたわけですが、まずはシンガポールでテストしていたフロントウイングを再度テストしました。本来はマレーシアでもテストする予定だったんですが、FP1でルノーの火災がありテストを見送っていたんです。
鈴鹿のFP1でのテストではとても良い結果が得られました。ただ、新しいフロントウイングは、いくつかメカニカルな問題があり、まだそのままレースで使える状況ではありませんでした。しかし、性能でのメリットは明らかだったので、急遽、金曜の夜に改良して予選とレースに使えるようにしました。
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■ハース初となるQ3W進出までのプロセス
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