2016年10月20日 10:51 弁護士ドットコム
日本最大の指定暴力団「山口組」の顧問弁護士をつとめるなど、長年にわたって「ヤクザ」の弁護活動をつづけてきた元弁護士で、作家の山之内幸夫さんが10月17日、都内のライブハウスでトークイベントを開いた。昨年8月に分裂した山口組について、「取り返しのつかない間違い(抗争)が起きないことを願う」と述べた。
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山之内さんは約40年、弁護士として暴力団の弁護活動をおこなってきたが、2014年に建造物損壊教唆の疑いで在宅起訴され、2015年に有罪が確定し、弁護士資格を失った。この日のイベントは、そんな山之内さんが垣間見てきた「ヤクザの世界」を記した著書『山口組 顧問弁護士』(角川新書)の出版を記念して開かれた。
イベントの中で、山之内さんは「この世界の人たちに対する愛情がある」「弁護士として、入れ込みすぎた。はっきり言って本当にダメ」と明るく振り返った。山之内さんによると、ヤクザの世界には、子どものころ、両親の愛情がなかったり、貧しかった人が多いという。「そういう境遇の人が、自分の根性だけで這い上がろうという生き様に、がんばれといいたくなる」
一方で、犯罪に手を染める暴力団は、世間から嫌われる存在だ。山之内さんは「うまく世の中をわたっていけない人のセーフティネット」として、社会的な役割があることを強調したうえで、「行き場がなくなった人たちを抱えて、面倒をみることが親分の役目だ。そのための組織をどう構築するかが問題だ」と持論を展開した。
山口組は昨年8月、山口組と神戸山口組の2つに分裂して以降、大きな抗争のおそれがあるとされる。現在でも、双方にパイプを持っているという山之内さんは「(分裂した2つは)いずれは合流すると思う。根本的な問題を念頭において、歩み寄れる余地はないか。取り返しのつかない間違い(抗争)が起きないことを願っている」と話した。
また、暴力団対策法などによって、暴力団に対する規制が厳しくなっている。こうした状況については、「ヤクザに対しては何でもありというのは、憲法の平等理念から完全に外れている」と指摘しながらも、民事介入暴力や暴力団同士の抗争はなくしていくべきだと訴えていた。
(弁護士ドットコムニュース)