意外と知られていないことだが、日曜日のレース前に、どのチームもマシンに必ず行っている処理がある。それは、フロントウイングなどの空力パーツに薬剤を振りかけるという仕事だ。
これはタイヤがピレリのワンメイクになって、タイヤカス(摩耗したタイヤのゴム)が大量に発生するようになってから注目されるようになった。タイヤカスがフラップの間にはさまったままの状態になると、そのエリアの空気の流れが変わり、ダウンフォースが減少する。フリー走行や予選であれば、数周後にピットインするので、ピットに戻ってきたときにタイヤカスを取り除くことができるが、レース中は10周から20周走行しなければならないので、タイヤカスの存在はパフォーマンスに大きく影響する。
そこでチームはゴムが付着しにくい処理を薬剤を使用して、日曜日のレース前にフロントウイングなどの空力パーツに施すようになった。 予選後からマシンはパルクフェルメ状態となっているが、薬剤処理はセッティングの変更には当たらず、掃除の一環と認識されているためだ。
薬剤にはいろんなタイプがあるが、メルセデスAMGとフォース・インディアが使用する薬剤は、パーツの先端部分が白く変色する同じタイプを使用しているものと考えられる。 鈴鹿は硬めのアロケーションだったため、タイヤカスはそれほどでもなかったが、アメリカGPは軟らかめのアロケーションになるので、こうした細かい処理がとても重要になる。