コンストラクターズ選手権で5位のウイリアムズに10点差をつけて、現在4位を快走中のフォースインディア。そのタイヤ&ビークルサイエンス部門シニアエンジニアを務める松崎淳は「終盤戦も大丈夫だとは予想していますが、7位から12位ぐらいまでの中団争いは非常に接戦なので、ちょっとしたことで形勢が逆転する可能性は十分あります。そうなったときに、いかに対応してロスを少なくするかを常に考えていなければなりません」と緊張感を持って、アメリカGPに臨む。
松崎が言う「現場でできる対応」のひとつに、タイヤの使い方がある。前戦日本GPでは2ストップ勢で唯一フォース・インディアの2人だけが、最後のスティントでミディアムを装着した。
「コンパウンドの特性が違うだけでなく、クルマの特性もそれぞれ違うので、どのコンパウンドがベストかはクルマによって変わります。だから、一概にミディアムがベストチョイスだとは言えませんが、われわれのクルマは(ミディアムでの)ロングランのペースが良かったので、最後のスティントはミディアムで行けるという自信がありました」
実際、ソフトでスタートしてハード、ミディアムに履き替えるという2ストップ作戦は、ウイリアムズが採った1ストップ作戦よりもうまく機能し、フォース・インディアはトップ3チームに次ぐ、7位と8位を確保。中団チームの中で最上位でフィニッシュした。
レースでは、シケインでバルテリ・ボッタスをオーバーテイクしたニコ・ヒュルケンベルグが、抜いた後に「See you later(じゃ、またね)」と無線でつぶやいたほどである。
「普段はああいうことを言わないので、あれを聞いたとき、クルマが結構いい状態にあるんだなと感じました。F1ドライバーだって人間なので、クルマが決まっていれば、無線のコメントも変わってきます。今回は予選はうまくまとめられなかったけど、クルマ自体は悪くなく、レースマネージメントもニコのほうが良かったですね」(松崎)
しかし、そのヒュルケンベルグは来年、ルノーへ移籍することが決まった。チームとドライバーとの間に気まずさはないのだろうか。
「一緒に仕事できなくなることは、ひとりのエンジニアとしては寂しいです。ただ、ニコにしてもチェコ(ペレスの愛称)にしても、トップチームで走ってもおかしくないレベルのドライバーだと思っているので、彼らが上のチームへ行く分には、気持ち良く送り出したいという思いも同時に持っています。ルノーはいまはトップチームではありませんが、ワークスですから」(松崎)
ただし、ワークスでもない、伝統あるチームでもないフォース・インディアには、だからこそ失われることのない確固たるモチベーションが存在すると松崎は言う。
「向こう(ウイリアムズ)は伝統あるチームなので、成績に応じた分配金のほかに、特別な賞金を手にすることができますが、われわれにはそれはない。だから、同じ4位でも、その意味合いがまったく違う。こっちはもう必死ですよ」
アメリカGPで、コンストラクターズ選手権4位争いがとのように展開されるのか。フォース・インディアとウイリアムズの戦いにも注目したい。