2016年10月18日 16:01 リアルサウンド
10月8日、東京・豊洲PITにてサイコ・ル・シェイムのツアーファイナル公演が行われた。
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99年に結成され、02年にメジャーデビュー。「スーパーコスプレバンド」と称されるほどのド派手な衣装とダンスや演劇も交えたライブが話題を呼び、国内外で人気を博すも06年の中野サンプラザ公演をもって無期限の活動休止状態にあった。
しかし2014年に電撃的に活動再開を発表、2015年9月には”3794日ぶりのシングル曲”として「あきらめないDAYS」をリリース。復活後も日本国内にとどまらず、フランス・JAPAN EXPOに出演するなど精力的に活動していた。
そして8月17日に待望のニューアルバム『NOW AND THEN ~THE WORLD~』をリリースし、それを携えた全国ツアー『2016 TOUR「THE WORLD」』を敢行。
楽曲だけでなく奇抜な衣装や、ユーモアたっぷりの芝居で世界観を表現するのが特徴の彼らだが、本ツアーも日によって「PARALLEL WORLD」「カラクリ WORLD」「MYSTERY WORLD」という3つの世界を展開させ、ファンを楽しませていた。
ツアーファイナルであるこの日も、多くのファンが会場に足を運んでおり、開演を今か今かと待っていた。
客電が落ちると時計の秒針の音が響きはじめ、「3つの世界がひとつになりつつある」とアナウンスされる。
アップテンポなSEの流れる中、YURAサマ(Dance&Vo,Dr)、AYA(Gt)、seek(Ba)、Lida(Gt)、DAISHI(Vo)が登場。各メンバーがそれぞれ3つの世界観に基づいた衣装をまとっている。
「ようこそ! 『THE WORLD』へ!」という声が響くと、「激愛メリーゴーランド」がスタート。ギターのAYAとドラムのYURAサマがパラパラ風の振り付けを踊る人気曲だ。キラーチューンで一気に盛り上がり、続いての「AREA」ではYURAサマもボーカルをとりながらキレのあるダンスをみせる。なお余談だが、YURAサマはバンドマンとしては大変珍しいエアロビクスのインストラクターの免許を取得している(念を押すが彼のパートはドラムである)。そしてファンの多くが腕に付けているブレスレット型のサイリウムがキラキラと輝くフロアは壮観のひとこと。
「お前ら会いたかったぞ! ツアーファイナル、お前ら、抱かれる覚悟はできてるか?」というDAISHIの煽りから「クロノス」、「銀狼」といったコミカルなだけではない、激しい一面もみせてくれた。
「声きかせろよ!」と始まった「愛の唄」ではファンも拳を突き上げ、フロアのテンションが高まっていく。
「皆さんこんばんは、綾小路アヤ麻呂ナリ。アンタたち相変わらずアメリカ大陸を発見した人に似てるナリな? コロン……ブス!」とファンに対して毒舌(?)を披露するAYA。
「ひどい!」とツッコミをいれつつも「そんなAYAちゃんよりも、僕のほうが皆のことをラブっす! ラ……ブッス!」とLida。
軽妙なやりとりの後は「春夏秋冬」、「奇跡を知る僕らは五線譜に咲く希望を唄う」を高らかに歌い上げた。
「この星に願いを」を演奏し終えると、各々の個性が発揮される演劇タイムへ。
「クロノスの秘密」をめぐり、3つの世界の住人たちによるドタバタ劇が繰り広げられた。バラバラだった世界がひとつになった結果、総勢15名のサイコ・ル・シェイムオールスターズたちがステージに集結するという事態が発生。
そして全員がボーカルをとった「BLADE DANCE」から「Fantasic Fantasy」へ。タオル回しや、タオルでウェーブを先導し、エアロビインストラクターの本領を発揮するYURAサマ。
AYAとLidaによる漫才『桃太郎(実質夫婦を演じる2人の痴話喧嘩)』を挟み、DAISHIの「このまま盛り上がっていこうぜ!」という声から「ノスフェラストゥ」「LOVE IS DEAD」とハードチューンが続き、「摩天楼カオス」では水鉄砲を手にしてフロアへ水を放射するAYA。「Oneday」では「派手に行こうぜ!」と叫ぶseek。ダンスや演劇も彼らの持ち味だが、ここではロックバンドとしての魅力を炸裂させていた。
そして本編最後は「Murderer ・Death・Kill」で締めくくられた。
アンコールでは、15名のサイコ・ル・シェイムたちへ「クロノスがもたらす幸福は、ファンとの時間こそである」と語られる。
「これからも一緒に生きていこうぜ!」とDAISHI。そして復活のシングル曲「あきらめないDAYS」が披露された。
「若いときは目の前のライブよりも、夢や目標に前のめりになりすぎていたところもあるかもしれない。復活して、ツアー一瞬一瞬を大切に楽しめました」とDAISHI。拍手で迎えるファン。これからも一緒に生きていきましょう、その上で、彼らがずっと目標に掲げているあの場所=武道館にむかって頑張っていきたいと語った。
その言葉にファンが応えるように「REMEMBARANCE」のサビで巻き起こるシンガロング、そして彼らを祝福するように舞い散る銀テープ。
最後の最後にメンバーが一言ずつコメントし、
「我々サイコ・ル・シェイムは武道館という目標がございます。(武道館のときは)皆が1人5人連れてきてください(笑)。これからもついてきてください!」(Lida)
「今日も皆さんありがとうございました。愛してるよ」(DAISHI)
「本当にあっという間の楽しいツアーでした。色んな場所回ったんですけど、今日も2曲目くらいで寂しくなってきたんですけど(笑)、これからもいろんな活動をしていきますんで、皆色々事情があると思いますけど、今日来てくれた人が誰一人欠けること無く集まれる場所が武道館なんだと思います」(YURAサマ)
「一本一本どこも楽しかったです。地方でも”武道館”と言いまくってましたけど、武道館の道はどんな困難でも楽しめるパワーを皆からもらいました」(AYA)
「サイコ・ル・シェイム、ちょうど10年前に一度は活動を止めました。あの時は悲しくて皆の顔をじっくり見ることが出来ませんでした。でも、今日は5人揃って皆笑顔だったと思います。新しいサイコ・ル・シェイムの思い出ができました」(seek)
ド派手な衣装に身を包んでいるものの、その言葉は「等身大」の彼らの姿のように思えた。
そして15名の”サイコ・ル・シェイム・オールスターズ”による記念撮影と、フロアとメンバー全員で手をつなぐ恒例の”ロケットジャンプ”で大団円となった。
終演後、新曲「未来少年×未来少女」の配信リリースや、来年4月30 日に行われる東京・新木場STUDIO COASTにてワンマンライブ『サイコ イン ワンダーランド ~不思議の国のアヤッス~』の開催が発表され、再び会場は大きな歓声に包まれた。
なぜ、サイコ・ル・シェイムのライブは面白いのか? コミカルな演劇やド派手な衣装という視覚的効果はもちろんなのだが、紆余曲折はあったものの、一貫して「未来」に向かっている彼らの姿がストレートに胸にせまるのだ。
そんなバンドの姿に熱くさせられた一夜であった。(藤谷千明)