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在日ファンクのライブはドキドキが止まらないーー『レインボー』ツアー追加公演レポート

2016年10月18日 15:11  リアルサウンド

リアルサウンド

在日ファンク(撮影=高田梓)

 在日ファンクが9月1日からスタートした『メジャー2ndアルバム「レインボー」完成ツアー』は大盛況を見せ、10月12日に代官山UNITにて追加公演を行なった。


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 会場に入ると、メンバーの浜野謙太(Vo.)と永田真毅(Dr.)、村上啓太(Ba.)がDJを行なって会場を盛り上げていた。以前行なわれたライブ『ば』では、メンバーによるウェルカム・テキーラが振る舞われたこともあり、このバンドのサービス精神の旺盛さに感服する。DJプレイが終わり、暫く経つと会場が暗転。SEが鳴り響き、カラフルなスーツに身を包んだメンバーが次々と登場。この日はゲストパーカッションのIzponも加わり、8人編成によるパフォーマンスが行われた。イントロの演奏が終わると、「むくみ(アフロ)」がスタート。ハマケンこと浜野謙太(Vo.)は、派手なピンクのスーツにリーゼント姿でエンジン全開だ。続く「ぽいぽい」の後、「会いに来てくれてありがとう!」とハマケンが叫ぶと3曲目の「城」へ。ミドルテンポのこの曲で、上がりすぎたボルテージを一旦クールダウンする。村上基(Tp.)によるトランペットの音色も耳に心地よい。


 落ち着きを取り戻すと、「ありがとう! レインボー完成ツアー東京追加公演!」というハマケンの言葉と共に、寅さんのテーマが演奏される。「We are 在日ファンク!」とお決まりのワードが飛び出すと、すぐに「ぬるまゆファンク」がスタート。「俺と一緒に踊ろう!」と言うハマケンは、満面の笑みだ。そして照明がピンクに変わってムーディーな雰囲気になると「いいこと」がスタート。少し顔をしかめて歌うハマケンは、もはやジェームス・ブラウンにしか見えない。「君のいいところ」では、ハマケンのマイクスタンドパフォーマンスやステップ、後関好宏(Sax.)のサックスソロが次々と披露され、テンションのゲージは青天井だ。すると、仰木亮彦(Gt.)のカッティングが鳴り響く。「爆弾こわい(ディスコ)」である。通常バージョンよりもややテンポが遅くなったアレンジで、その分グルーヴ感が増している。途中、ベースとギターが徐々にテンポアップしていき、ジェントル久保田(Tb)とハマケンによる“ふっ飛べコール”も。最後はホーン隊の全開の演奏により曲が終了した。


 メンバーがMCに入る準備をしていると、客席から「星野源よりカッコイイ!」と声がかかる。これにはメンバーも笑わざるを得ない。こんなブラックジョークすら楽しい雰囲気にしてしまうのは、“在日ファンクマジック”だろう。また、MC開けの「ぼくきみ電気」が始まる前、ハマケンが曲についての想いを語ったのだが、独特の世界観すぎて観客の頭の上に“?”が浮ぶ。すると、客席から「しっかりー!」と声援が飛び、再び笑いが起こっていた。


 そんな和やかな雰囲気の中スタートした「ぼくきみ電気」は、優しくセクシーな曲調。後関がサックスをフルートに持ち代え、トランペット・トロンボーンもミュートを付ける。会場が古い洋画の一場面のような雰囲気に包まれ、続けて「嘘」が始まる。「Lie Lie Lie,Lie La Lie…」の部分ではメンバーも観客も身体を横に揺らし、心地良い余韻が残った。曲が終わると、徐々にギターの音が上がってきて「リオから!」「東京へ!」という謎のコールアンドレスポンスが始まる。「地名言うの楽しい」とハマケンが言うものだから、てっきり「場」がくるのかと思ったが、「在日ファンクは2020年も京都を応援します!」と「京都」がスタート。「京都」と言えば、仰木による“京都アンドレスポンス”だ。会場の立地にちなんだ“渋谷区”コールと、韻を踏んだ“充分焼く”コールで観客を温めると、仰木の見せ場の始まりだ。ギターソロを引きながらステージを端から端まで移動したり、観客とハイタッチをしたり、一体感を高めていった。


 続いて「叩かない戦い」。このバンドの曲は、本当にメッセージ性が高い。頭の中を曲という形にしてアウトプットできるハマケンの才能に衝撃を受ける。そんなことを考えていると、ドラムの永田がピアニカを持って前に出てきた。思うように吹けない様子を、ハマケンが携帯で撮影し戯れる。こういう自由さが彼ららしさでもある。なんとも緩い雰囲気になったところで、「在日ファンクは平和を目指す!平和じゃないとやってらんないよね!」と言い、スッとドラムへ戻る永田。普段あまり見れない永田の姿に、思わず笑みが溢れた。


 恒例のジェントル久保田による物販紹介コーナーが終わると、「きず」「断固すいません」とアップテンポの曲がスタート。ホーン隊のソロやハマケンのダンスなどが次々と繰り出されてヒートアップするものの、続く「ほうよう」で一旦クールダウン。この緩急の付け方が病みつきになる。まるでジェットコースターに乗っているかのようだ。落ち着きを取り戻すと、最後は「縁の下の力持ち」「それぞれのうた」と、在日ファンクらしい曲を繰り出した。


 アンコールでは、「男はつらいよ」のカバーが披露される。ホーン隊が大活躍する在日ファンクアレンジだ。ラストナンバーの前には、11月8日に同会場で行なわれる『在日ファンク×チャン・ギハと顔たち ジョイント・ツアー』を告知。そして、永田が「ハマケンに言いたいことがある。星野源よりお前の方がカッコイイよ」と天丼し、歓声が上がったところで「場」へ。ハマケンが客席にダイブするという、珍しいシーンも見られ、大盛況のうちに幕を下ろした。


 在日ファンクは、ワクワクが詰まったおもちゃ箱のようなバンドだと思う。FUNKという土台の上に、様々な表情の楽曲、目で見て楽しいパフォーマンス、笑いが溢れるMC、メンバーの個性的なキャラクター、ファンとの距離感の近さが詰まっており、それら全てをひっくるめて「在日ファンク」なのだ。きっとこの先、ファンが増えてより大きな会場でライブをすることになっても、彼らはこれらの要素全てを無くすことなく、在日ファンクであり続けるだろう。(高橋梓)