長時間労働が問題になる中、西日本新聞が10月16日、掲載した記事がネットで話題になっている。記事の見出しは「受刑者の労働 楽すぎ? 出所者雇う企業から批判 1日7時間、休日も多く」というもの。刑務所で行われている受刑者の刑務作業時間が短いため、企業から不満が出ているのだという。
刑務作業とは、刑法で規定された懲役刑の内容で、受刑者の矯正及び社会復帰を図るための重要な処遇方策の一つ。木工や印刷、洋裁といった業種から,適性等に応じた職種が指定されて就業するとされている。
「労働に耐える集中力がない」出所者を雇用する企業から苦情
作業時間は原則として一日につき8時間を超えない範囲内と定められているが、記事によると「実際の作業は運動時間などを引いた7時間程度であり、週に2、3回は入浴で1時間以上短縮される」ようだ。労働環境について、ある受刑者は「土日祝日も休み。短い労働時間の中に休憩もたくさんあって、とても良心的な環境だ」と語っているという。
だが、出所者を雇う企業から「労働に耐えられなる集中力がない」などの意見が挙がった。日本労働組合総連合会が15年1月に発表したデータでは、正規労働者の1日の平均労働時間は8、9時間とされており、刑務作業時間と一般的な労働時間と間にズレがある。
法務省は全国8刑務所の約600人を対象に「8時間労働」の試験導入スタートし、2014年度から一部の刑務所で8時間制を導入。受刑者の間では「社会復帰に役立つ」などと肯定的だと報じている。
しかし、ネットでは是正するべきは刑務所ではなく一般社会の労働時間ではないのか、という意見が相次いだ。「×受刑者の労働が楽すぎる 〇日本社会の労働環境が刑務所より劣悪」というのだ。
労働時間「囚人は8時間厳守、社畜は大体10時間以上」
「自分ところの従業員を受刑者以下の条件で働かせている現状に対する恥がないというあたりなかなかロック」
「普通の人の労働環境を受刑者より良くすべきなのに受刑者の労働環境も悪化させて民衆は全員不幸になれ という要望が平然と出してくる企業たち 彼らが最大の悪なのではないか」
「土日祝日休みで労働時間内に十分な休憩がある刑務所の環境にも劣るシャバでの就職は懲役40年なのだとわかる」
企業や業種によっては、1日の労働時間が8~9時間どころではなく10時間以上に及ぶことも珍しくない。それなのに、企業の事情に刑務所を合わせていくのは本末転倒、ということのようだ。
さらに、とあるツイッターユーザーは、囚人と社畜の比較表を投稿。これも約3000件リツイートがされた。
労働時間 (囚人)8時間厳守 (社畜)大体10時間以上
通勤手段 (囚人)徒歩 (社畜)満員電車1時間
残業 (囚人)全くない (社畜)ない日がない
年数 (囚人)刑罰に応じる(社畜)自動的に40年
悲しいことに日本では、一部の社畜が受刑者以下の待遇で働かされているようだ。長時間労働を前提とした「塀の外」の是正も進めていかなければならない。
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