毎回ノーベル文学賞の候補にあがる村上春樹だが、今年はまさかのボブ・ディランが受賞。村上春樹特設コーナーを設けていた書店では速攻でボブ・ディラン関連本を並べ直していたが、良いとか悪いとかいうことではなく、それが商売というものだ。
本の売り上げは年々減少し、今年2月には芳林堂書店が破産、7月には池袋リブロ本店が閉店し、紀伊国屋書店新宿南店が店舗を大幅縮小している。出版・書籍をめぐるビジネスはなんとも厳しい状況だ。そうした中、ある古書店店主が10月11日に発したつぶやきがツイッター上で話題になっていた。(文:okei)
「本屋で声かけられた黙って帰る」という人も
「昔、某有名ファッション誌の編集者に『本屋ってなぜ接客しないの?黙って売れるのを待つだけなんてウチの業界じゃあり得ない。そりゃ潰れるわけだw』という内容のリプライを何度も執拗に送り続けられた経験があるのですが、商材の特徴は接客の違いにも表れるからそんな単純な話じゃないと思うんすよね」
このツイートは3700以上リツイートされ、トゥギャッターにもまとめられた。ネットでは共感する声が次々あがっていた。
「本屋で店員に声をかけられたら、黙って帰るかなあ」
「本屋が『いらっしゃいませ~ぇ↑』とか『こちら今回の芥川賞受賞作品なんですよぉ~今一番オススメなんです~』とかやったら帰ってAmazon開きますがな!」
「本屋で何を買うかってかなり内面にかかわるから、店員が積極的に接客してきたらイヤだろうなー」
本が好きな人は声をかけられること自体がイヤな場合も多く、本屋でアパレル系の接客をされたら違和感が尋常ではない。目的の本があれば自分で探す、無ければ書店員に訊くというのが通常で、いきなり話しかけてくる店員がいれば却って引いてしまう恐れがあるのは言わずものがなだ。
本屋もがんばっている!「売り場によってアプローチは変わる」
しかしこれは、「手をこまねいて売れるのを待っているんじゃ商売としてダメ」という指摘でもあるだろう。ネット通販や電子書籍の台頭もあり、本を並べておけば売れるという時代ではない。ただそれが、「待ち」の姿勢で手をこまねいているだけと見られるのも納得いかないところではある。
本屋も売り方には工夫を凝らし、POPでお勧めしたり話題の本コーナーを作ったりなど働きかけてはいる。都内の大型書店に行くと本の並べ方置き方への工夫をびしびし感じて楽しいものだ。10月13日の「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)では、書店の中にカフェや雑貨屋を設けて本とモノとの相乗効果を狙った販売戦略が増えていることも報じていた。
最初のツイートをした古書店主も、洋服屋に古本を並べて自身が洋服屋店員のような接客にチャレンジした経験があるそうで、「アパレルぽい接客もやってみたら面白かったしたくさん売れたし友達も増えたよ。一理あるのかもね」「だから商材の違いだけじゃなく、売場によってアプローチは変わるんだと思います」との思いも明かしている。
かといって、ツイッターではやはり「本屋にアパレル系の接客をされても困る」という意見が大半だ。しかし、本が好きな人は絶対にいなくならないと思うものの、一部の人の趣味としてしか存続しないとなれば商売としても文化としても先細りが危ぶまれる。今年夏、筆者の町からは大きめの書店が1軒姿を消した。本屋がなくなるのは本当に寂しいものだ。この反響の多さは、なんとか書店に頑張ってもらいたいという切なる願いからきているのかもしれない。