16日に決勝レースが行われたFIA世界耐久選手権(WEC)第7戦富士。大勢のファンが見守る前で、TOYOTA GAZOO Racingは2014年の第7戦バーレーン以来となる勝利を飾った。
決勝レースで、LMP1上位3台はピットのタイミングやトラフィックのタイミングで差が開くことはあったものの、トップを行く8号車アウディR18の後方10秒以内に、6号車トヨタTS050ハイブリッドが続く。
そして、そこから20秒以内には1号車ポルシェ919ハイブリッドがつける構図が6時間に渡って展開。まるでスプリントレースのような激戦が繰り広げられた。
トップを行くアウディは決勝中のファステストラップを記録するなど、ラップペースにアドバンテージがあった。これに対しトヨタは1スティントあたり2周長く走行するアドバンテージを活かして勝負を仕掛けていく。
迎えた最後のピットストップ、トップの8号車アウディが給油とタイヤ交換を行い、1分25秒020のロスタイム。3番手の1号車ポルシェは給油・タイヤ交換に加え、ドライバー交代も行い、1分11秒837のロスだった。
一方、6号車の小林可夢偉は「チームに確認したら、タイヤ無交換で10秒のゲインがあると言われ」、タイヤ無交換を決断。ピット作業を給油のみで済ませると、チームの言葉通り、可夢偉はデュバルの11秒前方でコースへ復帰した。ピットタイムはわずか1分0秒246だ。
しかし、可夢偉のタイヤは2スティント目。追いかける8号車アウディはフレッシュなタイヤでペースも速く、レース残り10分を切る頃には4秒差まで迫ると、ファイナルラップでは1.489秒後方まで追い上げてきた。
可夢偉は、最終スティントの状況を「ロイックのペースは、僕たちよりも断然速かった」と振り返る。
「(2スティント目の)タイヤを壊さないために、ブレーキングで無理ができませんでした。その結果、バックマーカーの処理に苦労する場面もありましたね」
「一発の速さで勝負するには限界があります。いかに少ないロスでトラフィックを捌くかに集中していましたよ」
可夢偉にとってはシリーズ初、そして2009年のGP2アジアシリーズ以来となる表彰台の頂点。「ホームレースで“仕事”ができて良かった」と、その喜びを表現する。
「最後に、こうやって(中古タイヤでの連続スティントを)任されたのは、期待されている証。その仕事をしっかりとこなすことができて良かったかな」
「ただ、本当の勝負は来年だと思っています。そこに向けて、いい形で望めるようになりました」
チームメイトのアンソニー・デビッドソン/セバスチャン・ブエミ/中嶋一貴組5号車トヨタはレース序盤にトラフィックに飲まれて後退。その後は上位と順位を入れ替えることは叶わなかったが、上位陣とそん色ないペースを披露。ここまでの不運を断ち切る今季ベストリザルトを記録している。
ル・マン24時間で失った勝利を地元で取り戻したTOYOTA GAZOO Racing。6号車はポイントランキングでトップと23点差の2番手に浮上しシリーズタイトル獲得の可能性も充分に残している。残る上海、バーレーンでも三つ巴のバトルが繰り広げられそうだ。