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二階堂ふみのラブシーンはなぜグッとくるのか? 『SCOOP!』の成熟に見る“心のヌード”

2016年10月16日 20:11  リアルサウンド

リアルサウンド

(c)2016「SCOOP!」製作委員会

 先日、創刊50周年を迎えた「週刊プレイボーイ」にて、女優・二階堂ふみがバニーガール姿を披露し、大きな話題となった。現在公開中の映画『SCOOP!』では、主演の福山雅治との濃厚なラブシーンを演じ、見る者を魅了している。10代の頃から大胆なシーンに挑戦し続けた彼女は、20代となり女優としてますます妖艶さに磨きがかかっているようだ。いま、日本で一番セクシーな女優といっても良いかもしれない。そんな彼女のラブシーンはなぜ、人々を惹きつけるのか。


参考:二階堂ふみのラブシーンはなぜ心を揺さぶるのか  10代で脱いだ大物女優の系譜から考察


■福山雅治との共演で、ますます際立つ色気


 大根仁監督作『SCOOP!』は、かつては伝説のスクープを撮り続けきた凄腕カメラマンだが、いまは自堕落な生活をしつつ芸能スキャンダル専門のパパラッチとして活動をしている都城静(福山雅治)が、写真週刊誌「SCOOP!」に配属されたばかりの新人記者・行川野火(二階堂ふみ)とコンビを組まされるところから始まる。様々なスクープを連発するなかで野火は成長し、公私ともに名コンビとなった矢先に、ふたりはある事件に巻き込まれる。銃をカメラに置き換えたスパイものともいえる、ハードボイルドな趣の作品だ。


 これまで二階堂ふみは、『私の男』の浅野忠信や『密のあわれ』の大杉漣など、親子ほど歳の離れた俳優との絡みが多かった。その無垢であどけなさが残る表情とは裏腹に、大胆な行動で年上男性を翻弄する姿に、世の男性たちもまた虜になった。一方で、今回の相手役の福山雅治といえば、そのマスクと歌声の甘さに反して、忌憚のない“下ネタ”を連発することでも人気を博してきた。福山のそうした一面は役柄にも反映されている。口が開けば下ネタばかりであるが、仕事はキッチリこなす昔気質のアウトロー風の男。普通なら、単に鬱陶しいセクハラおじさんになってしまうところを、持ち前の気品で成立させるところはさすがである。


 そんな静と師弟関係でもありバディ的存在になっていく野火は、最初は“ド新人”を絵に描いたような風貌で、静ともケンカばかりしていた。しかし、あらゆる現場で鍛えられるのと比例し、野比は頼もしい女性へと成長していく。と同時に、命をかけて最前線でカメラマンとして戦う静に対し、野火は次第に特別な感情を寄せるようになる。師弟関係が恋愛関係へと変わることは、よくあるパターンかもしれないが、二階堂の“眼差しの変化”の演技は見事で、つい引き込まれてしまう。そして、とうとう訪れるキスシーンでは、あの妖艶な二階堂ふみの表情になっているのだ。


 10代の頃は、その若さやあどけなさに自覚的で、年上男性を翻弄する小悪魔的なラブシーンを演じていた二階堂ふみ。しかし、今回のラブシーンはどちらかというと受動的で、自らの“雰囲気”を巧みに変えながら、福山演じる静をその気にさせている。劇中で相手に“性的な成熟”を悟らせる演技に、20代となった二階堂の女優としての懐の深さを感じずにはいられない。仕事現場の暗い雰囲気とは対照的に、自然光が多く入る白を基調とした部屋で撮られた二階堂の表情はひときわ生々しく、大根監督の演出の確かさを感じさせた。


 今作で披露されるラブシーンは、一度きりではあるが、だからこそ特別なものとして観客たちの心に残るはずである。師弟バディもので、恋愛関係に発展してしまうのは、人によっては受け入れがたいところもあるだろう。しかし、エロス表現における巧者ふたりによるラブシーンは美しく、物語のラストに感慨深ささえ与えている。福山ワールドを壊さずに、その懐に入りながら自分の色をしっかりと残す二階堂は、やはり只者ではない。


 ところで、『SCOOP!』を劇場で観た際に、三浦大輔監督『何者』の予告編も観ることができた。二階堂はこの作品で、佐藤健や有村架純、菅田将暉といった同世代の実力派俳優たちとともに、等身大の役柄を演じるようだ。『密のあわれ』では、幻想的な世界観の中で浮世離れした妖艶さを披露し、『SCOOP!』では“心のヌード”ともいうべき自然な演技でひとりの女性の性的成熟を表現した二階堂。その演技の幅広さ、唯一無二のセクシーさは、今後さらに多くの作品で必要とされることだろう。いい意味で我々を裏切り、刺激を与え続けてくれることを願ってやまない。(本 手)