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【WEC富士】残り33分の激闘。可夢偉が僅差で逃げ切り、悲願の初優勝

2016年10月16日 17:41  AUTOSPORT web

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WEC第7戦富士 初優勝を飾った6号車トヨタTS050ハイブリッドの小林可夢偉
WEC世界耐久選手権第7戦は16日、富士スピードウェイで6時間の決勝レースが行われ、ステファン・サラザン/マイク・コンウェイ/小林可夢偉組6号車トヨタTS050ハイブリッドが8号車アウディとのドッグファイトを制し、母国凱旋レースで勝利を飾った。

 レース開始から3時間経過後の138周目に8号車アウディR18が先陣を切りピットイン。ルーカス・ディ・グラッシからロイック・デュバルにドライバー交代を行いコースに戻ると、トップを争う6号車トヨタは146周目までステイアウトし、ピットに向かう。トヨタ陣営はこのピットストップでドライバー交代を行わず、サラザンがドライブを続けた。

 コースに復帰した6号車トヨタは8号車アウディに肉薄し、コース上で一騎打ちのトップ争いを演じるかに思えたが、先にピット作業を済ませていた1号車のポルシェが2台のトップ争いに急接近。1号車をドライブするティモ・ベルンハルトは、周回遅れのマシンに阻まれたサラザンの動きを見逃さず、その差を0.8秒まで縮めた。

 156周目のTGRコーナー、1号車ポルシェがブレーキングで6号車トヨタのインサイドに飛び込みオーバーテイク。だが、ベルンハルトはコカコーラ・コーナーの出口でLMGTEクラスのマシンを抜きあぐね、その隙を突いたサラザンがふたたびポジションを奪い返す。

 ところが、今度はサラザンがセクター3で他クラスのマシンに行く手を阻まれ、158周目のメインストレートでオーバーテイクを許してしまう。これにより6号車トヨタは3番手に後退するが、サラザンは1号車ポルシェの背後につけ、プレッシャーをかけていく。

 トップを走るLMP1クラスは残り1時間45分を切ったところで、ルーティンピットの時間を迎える。まずはトップを走る8号車アウディがピットイン。ドライバー交代などは行わず、3番手でコースに復帰した。

 その5分後には6号車トヨタがピットイン。サラザンから可夢偉にドライバー交代を行い、タイヤを4輪とも交換して戦列に戻ったほか、直後に5号車トヨタもピットに向かっている。

 レース残り1時間30分を切ると、暫定トップにつけていた1号車ポルシェがルーティンのピット作業へ。ドライバーをベルンハルトからハートレーに交代してコースインするが、直後のTGRコーナーで6号車トヨタにオーバーテイクされ3番手に後退する。

 その後は、6号車可夢偉と1号車ハートレーがテール・トゥー・ノーズのバトルを展開する。184周目の300Rでは、ハートレーがアウトから可夢偉を交わしかけるも、ダンロップコーナーのブレーキングで可夢偉が意地をみせイン側をキープ。ポジションを守ってみせる。

 しかし、この周終わりのホームストレートでストレートスピードで勝るハートレーが可夢偉のスリップにつくとTGRコーナーまでにポジションを奪っていく。

 これでバトル終了かと思われたが、可夢偉はTGRの立ち上がりでハートレーの背後につけると、コカコーラ・コーナーの立ち上がりでアウトからオーバーテイク。即座に2番手の座を奪い返してみせた。

 残り1時間を残し、トップは依然として8号車アウディ、2番手のトヨタ6号車が約6秒後方に続く。3番手の1号車ポルシェは最後のピット作業での給油時間を短く済ませる可能性があり、ポジション争いは緊迫した状況だ。

 166周目、各陣営、最後のピットストップを控え最初に動いたのはまたしても8号車アウディだった。このレースでは一貫して早めのピットインを行っているアウディ陣営は、給油とタイヤ交換を行いデュバルをコースに送り出す。新品タイヤを履くデュバルはアウトラップから全力でプッシュし、1分24秒台を叩き出してみせる。

 アウディの動きに呼応したかのように、トヨタ陣営が可夢偉をピットに呼び戻す。チームはタイヤやドライバーの交代は行わず、給油のみでマシンを送り出し、最終スティントを可夢偉に託した。

 その7周後にポルシェ陣営がピットイン。1号車ポルシェはハートレーからマーク・ウエーバーにドライバー交代。ウエーバーもアウトラップから全力でプッシュし、残り33分間の最終バトルが始まった。

 残り15分の時点で、トップの6号車トヨタと8号車アウディとの差は約6秒。可夢偉はハイペースで走行し、周回遅れの処理に苦戦するデュバルとのギャップをコントロールする。現役ドライバーとして、日本ラストランとなるウエーバーも前方の争いに加わるべく、懸命にプッシュを続けるが、差を縮めることは叶わず、徐々に遅れを取り始める。

 可夢偉とデュバルのトップ争いは残り10分を切ると、可夢偉のペースがやや鈍化。これを見逃さずデュバルがプッシュし、ギャップが4秒台に縮まる。デュバルは「セクター3のトラフィックをなんとかしてくれ!」と無線で訴えながらトップ6号車との差をじわじわと縮めてくる。

 そして、可夢偉とデュバルの差が約2秒に縮まった時点でファイナルラップへ。可夢偉は周回遅れのマシンを巧みに交わしながらギャップをキープ。大勢のファンが見守るなか、最終コーナーを立ち上がると、喜びを爆発させたかのようにマシンを左右に揺らしながらチェッカー。大勢のファンが見守る前で、悲願の今季初優勝を飾り、ル・マン24時間での雪辱を果たしてみせた。

 LMP2は、ポールシッターのG-ドライブ・レーシング26号車オレカ05・ニッサンがレース序盤をリードしていたが、終盤、RGRスポーツ・バイ・モランド43号車リジェJSP2・ニッサンが接近。最終スティントでは、26号車のウィル・スティーブンと、43号車のブルーノ・セナの、元F1ドライバーふたりによる激しいトップ争いが繰り広げられた。

 接触を避け、コースを外れたスティーブンスは、トラックリミット違反のペナルティを回避するために順位を譲りいったん後退。セナのドライブする43号車に勝利が近づいたが、スティーブンスがふたたびセナをオーバーテイクし、ポール・トゥ・ウィンを飾った。

 マノーの45号車オレカ05・ニッサンを駆りLMP2にスポット参戦した中野信治は、レース序盤、チームメイトの走行中にマシントラブルが発生してしまう。このトラブルにより、ガレージ内で長時間の修復作業を強いられ、自身の担当スティント前に勝負権を失い最終的にクラス11位でフィニッシュした。



 LM-GTE Proクラスは、67号車のフォードGTが制した。フォード陣営はフリー走行から全セッションでトップタイムを記録しており、6時間の決勝レースでも危なげなく勝利を飾った。Amクラスは98号車のアストンマーチンV8バンテージがポールから逃げ切り勝利を手にした。山岸大がドライブする50号車シボレー・コルベットC7はレース中盤まで3番手争いを展開し、母国での表彰台が期待されたが、惜しくもクラス6位に終わった。