10月17日、DTMドイツツーリングカー選手権最終ラウンドのホッケンハイムの会場で、ティモ・シャイダーが16年のDTMキャリアにピリオドを打つことを発表した。
シャイダーは2000年にオペル・アストラV8クーペでDTMデビュー。2006年にはアウディに移籍し、その後2008年、09年と二度のDTMタイトルを獲得した。その親しみやすいキャラクターで、ドイツを中心に多くのファンをもっていたドライバーだったが、DTM最終戦ホッケンハイムの土曜第1レース終了後、メディア関係者に向けて告知がされた後、19時を過ぎてから緊急記者会見が行われ、シャイダー自身の口からDTM引退が発表された。
第1レースが行われた土曜日のわずか2日前に、アウディから突如実質的な『戦力外通知』の電話を受けたというシャイダーは、ショックと戸惑いを隠せない様子だった。来季に向けてのアウディとの契約更新、および来季のビジョンも描いていたというシャイダーには、まさに青天の霹靂だったようだ。
そのため、長年彼を支え続けたファンや関係者との“引退セレモニー”などの準備もできない状態でDTMを去らなければならなくなったシチュエーションに、時折言葉につまり、瞳に涙をいっぱいに溜めて悔しさをにじませていた。
記者会見には現在所属するフェニックス・レーシングの代表エルンスト・モザーをはじめ、チーム関係者、DTM最終戦を欠場したエクストローム以外の全ドライバーも出席し、シャイダーの長年に渡る功績を称えてスタンディングオベーションが自然と起きた。壇上からシャイダーはアウディのドライバーひとりひとりに向けて、思い出や感謝の気持ち、今後を応援するメッセージを語り、記者会見場はエモーショナルな雰囲気に包まれた。10月16日のホッケンハイムでのレース2が181戦目となり、最後のレースとなる。
突如アウディとの契約解除を伝えられたシャイダーは、「今後の予定はまったくの白紙」だと言うが、自らが代表を務めるF4のチーム監督として引き続きADAC F4シリーズに来季も参戦、そして今季スポット参戦をしているラリークロスにも引き続き参戦することが考えられる。ただ、完全にアウディとの契約が終了になったこともあり、GT3等のカスタマースポーツでの活動は難しくなった。本人は「レーシングドライバーとしてのさらなる道を探る」と語っているが、アウディの後ろ盾がなくなる今後に去就が集まる。
記者会見中には涙を必死にこらえている姿が印象的だったシャイダー。残る7名のアウディのDTMドライバーのうち、おそらくもう1名のドライバーが同様に突如肩を叩かれる可能性があるとも言われている。