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MIYAVIのフィーチャリスティックな世界 “NEW BEAT, NEW FUTURE”ツアーファイナルを観た

2016年10月16日 00:31  リアルサウンド

リアルサウンド

MIYAVI(Photo by Yusuke Okada, Keiko Tanabe)

 MIYAVIが全国ツアー『MIYAVI Japan Tour 2016 “NEW BEAT, NEW FUTURE”』のファイナル公演を10月10日、千葉・幕張メッセ イベントホールにて開催した。このツアーは9月19日に北海道・札幌PENNY LANE 24を皮切りに全国10都市で実施。ツアーファイナルとなったこの日の様子はAbemaTVを通じて生中継も行われ、多くのファンが目にすることとなった。


(関連:MIYAVI、挑戦し続ける理由を語る「自分自身にスリルを感じながら生きていたい」


 今回のツアーは長年の盟友であるBOBO(Dr)に加え、最新アルバム『Fire Bird』で共同プロデュースを務めたレニー・スコリニク(DJ)を迎えた3人体制で敢行。ステージ後方にはアルバム『Fire Bird』の特典DVDに収められたスタジオライブでおなじみ、ピラミッド型の大型オブジェが設置され、『Fire Bird』で提示したフィーチャリスティックな世界観が見事に再現された。


 会場が暗転すると無機質なビートが流れ始め、会場中にレーザー光線が飛び交う。さらにステージ後方に「MIYAVI」「NEW BEAT, NEW FUTURE」の文字がレーザーで描かれる中、MIYAVIがステージに登場。ギターを激しく奏で始めると、それに呼応するかのようにピラミッド型オブジェがカラフルでまばゆい光を放ち、ステージ両サイドのスクリーンには手塚治虫のアニメ『火の鳥』の映像が映し出される。そのままバンドは「Fire Bird」からライブをスタート。ダンサブルなビートに乗せて、MIYAVIは抱えたギターを自由自在にプレイしながら力強い歌を聴かせる。フロアのオーディエンスはこれに応えるように、熱の入った声援をステージに送り続けた。MIYAVIは曲が進むにつれ、ギターを激しく弾きながらステージ上を所狭しと動き回る。中でも映画『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』の日本版テーマソングに起用された「Mission Impossible Theme」ではブレイクのタイミングに大歓声が沸き起こると、MIYAVIは客席に向けて不敵な笑みを浮かべてみせた。


 最初のMCでは「What's up, Tokyo! 楽しんでますか?」と観客に問いかけるMIYAVI。続けて、今回のツアーは新たにレニーを迎えた3人で回ってきたことを告げ、「全10カ所、各地で熱を感じて、ここにぶちかましに戻ってきました!」と改めて宣言。そして「踊ろうぜ!」を合図にライブを再開した。


 今回のツアーでは最新作『Fire Bird』からの楽曲を軸に、『The Others』や『MIYAVI』など近作からの楽曲を交えた非常にダンサブルな内容が繰り広げられた。以前までのBOBOとの2人編成によるスリリングさに加え、レニーの参加によりサウンド&コーラスに厚みと温かみが増しており、MIYAVIが最新作で表現したいこと、そして今後目指していきたいものをステージからも確認することができた。MIYAVI自身もライブ中のMCで「自分自身キャリアが長い中でくじけそうになったり、心が折れそうになる瞬間はたくさんあったんですけど、やっぱり信念さえ見失わなければ挑戦し続けることができる、飛び続けることができる、そういう思いを込めて作りました」と最新作『Fire Bird』について説明したが、この力作は今後の彼の活動において大きな指針となるはず……ライブでこれらの新曲を耳にして、そう実感させられた。


 また、そういった最新型のMIYAVIサウンドに呼応するレーザーやムービングライトなどの照明による演出も圧巻の一言で、この異空間へと誘うかのような演出にピッタリな場所ということで今回の幕張メッセ イベントホールのような大箱を選んだのかもしれない。そう感じずにはいられないほど、すべてがマッチしたエンターテインメント性豊かなライブが展開されていった。


 今回のライブには、WEB上で展開されたダンスコンテストで選ばれた13組が出演。課題曲となった「She Don't Know How To Dance」では、曲の中盤にMIYAVIがダンサーたちを次々と呼び込んで個性的なダンスを披露していった。そのダンスチームもキッズダンサーから大人数のセクシーな女性グループ、なぜか女性の水着を着用した男性ダンサー、そして本格的なストリートダンサーまで幅広い層が集まり、MIYAVIは彼ら・彼女らのダンスに合わせてファンキーなギタープレイでセッションを繰り広げた。


 ライブ後半には「Cry Like This」や「Guard You」といったエモーショナルなミディアム/スローナンバーも登場。さらに「Universe」や「Survive」ではMIYAVIとBOBOの2人のみによる白熱のセッションも展開され、曲中のブレイクでMIYAVIが指をクイクイ動かして観客を煽る場面もあった。そして「Horizon」「Day 1」とライブには欠かせないダンスチューンが連発されると、会場の熱気もピークに到達。本編ラストの「Steal The Sun」では悲痛の叫びのようなギターソロを会場中に響かせて、オーディエンスをクライマックスへと導いた。


 アンコールではこの日のライブがソールドアウトにならなかったことに触れつつ、「まだまだ日本でも頑張らなくちゃなと思いました。でもレニーを含め、どんどん新しい仲間が増えていってることが実感できた」と前向きなコメントを寄せるMIYAVI。ここで2017年にデビュー15周年を記念したベストアルバムの制作と、2月からスタートするワールドツアーについてもアナウンスし、観客を喜ばせた。続けて彼は「一歩一歩ですけど、でも着実に未来に向けて、少しずつMIYAVIという船が大きくなっているのを俺自身実感できてるし、作る音楽ももっと自分たちの理想……どういう世界にしたいのか、どういう社会にしたいのかというところにもっとフォーカスして、大人も子供も楽しめるような、未来に直結した音楽を作っていきたいと思っています」と語り、「みんなで一緒に、この宇宙に、この空に響かせてほしいなと思います」と呼びかけてから「Real?」をパフォーマンス。会場中にオーディエンスのシンガロングが響き渡る中、MIYAVIは激しくエモーショナルなギタープレイで観る者を魅了した。そして最後の最後に、アグレッシブなスラッププレイとともに「What's My Name?」をファンにプレゼント。ステージと会場がひとつになったところで、2時間半におよぶツアーファイナルは幕を下ろした。


 この日のAbemaTVでの総視聴者数は10万を突破したとのこと。この数字は必ず次につながると確信している。そう断言できるほど、この日のステージは圧巻の内容であり、多くの音楽ファンが観るべきものだった。これはまだ小さな一歩にしかすぎないのかもしれない。だが、この小さな積み重ねが『Fire Bird』という力作の浸透にもつながり、今のMIYAVIがいかに面白いことをやっているかの認知にもつながるのだ。デビュー15周年を目前にアーティストとして新たなステージに到達したMIYAVIの動向に、ぜひこの機会に注目してほしい。(西廣智一)