15日、富士スピードウェイで行われたFIA世界耐久選手権(WEC)の公式予選。ホームレースに挑むTOYOTA GAZOO Racingはアンソニー・デイビッドソン/セバスチャン・ブエミ/中嶋一貴組5号車トヨタTS050ハイブリッドが予選3番手、ステファン・サラザン/マイク・コンウェイ/小林可夢偉組6号車が予選4番手を獲得した。
TOYOTA GAZOO Racingは前日のフリー走行で、想定外に低かった路面温度によるタイヤ摩耗に苦しめられたほか、6号車には電気系のトラブルも発生。ライバルのアウディ、ポルシェ両陣営に溝を開けられる幕開けとなった。
しかし、一夜明けた予選日は一転、午前中のフリー走行3回目で5号車がトップタイムを獲得すると、公式予選ではセッション終盤までトップタイムを維持し、今季初めてポールポジション争いを演じてみせる。
最終的に8号車アウディR18、1号車ポルシェ919ハイブリッドに交わされ予選3番手となったものの、5号車とトップの差は0.169秒。4番手の6号車も0.211秒差に続いており、決勝でもライバル陣営と互角のバトルを期待させる結果となった。
トヨタが、ここまでライバルに迫ることができた要因のひとつとして、富士スピードウェイのサーキット特性が挙げられる。
富士には世界屈指の長さを誇るホームストレートがある上、ダウンフォースが必要なテクニカルセクションは第3セクターのみと、ル・マン24時間以降にシリーズ戦が行われた3サーキット(ニュルブルクリンク、エルマノス・ロドリゲス、COTA)と比較すれば求められるダウンフォース量は少ない。これがダウンフォース不足に苦しんでいたトヨタ陣営の追い風となった。
モータースポーツユニット開発を指揮するプロジェクトリーダーの村田久武氏も「本来ならクルマがサーキットに合わせなければいけませんが、今回はサーキットが合わせに来てくれた」と語る。
「過去3レースはマシンの空力性能をサーキットが必要とするところまで出しきれないシチュエーションでした。その結果、タイヤを押さえきれず、曲がる、止まるといった性能を発揮しきれなかったわけです」
「これでようやくレースができるかな、と思っています」
予選ではドライバー陣もマシンのパフォーマンスを引き出してみせた。ポールを手にすることができなかったものの、5号車の一貴も「想定よりも(ライバルと)近かったかな」と述べ、決勝の走りにも自信を覗かせる。
「観ている人もフラストレーションが溜まるシーズンになりつつあると思います。明日はそれを晴らせるようなレースをしたいですね」
「(ホームレースとは言え)やることは普段と変わりません。いつもより、いいポジションからスタートできるので、しっかりとまとめ上げたいと思います」
4番手につけた6号車は可夢偉とサラザンがアタックを担当。サラザンはアタックラップでわずかにミスがあり、可夢偉も「アタック自体に問題ありませんでしたけど、トラフィックでコンマ2秒はロスしてしまった」と言うが、6号車はセクター3で全体ベストを記録しており、速さは充分。3戦連続で表彰台を獲得している好調ぶりを明日の決勝でも発揮しそうだ。
昨年失った富士での連勝記録を取り戻し、日本のファンの前で今季初優勝を飾ることができるか。注目の決勝レースは明日16日(日)、午前11時にスタートする。