世界ラリークロス選手権(WorldRX)と並ぶビッグシリーズとして、北米を中心に開催されているGRCグローバル・ラリークロス・チャンピオンシップ。その最終戦となるロサンゼルス・ラウンドが10月8~9日に開催され、フォルクスワーゲンが送り込む“ワークス製”ビートルGRCが2年連続のタイトルを獲得。アンドレッティ・オートスポートがチームタイトルを連覇するとともに、長らく選手権をリードしてきたタナー・ファウストを逆転する形で、チームメイトのスコット・スピードが2度目のチャンピオンを連覇で決めた。
ここまでのシーズンでファウストが4勝、スピードが3勝と、ライバルのフォード・フィエスタやホンダ・シビッククーペ、ヒュンダイ・ベロスターなどに対して圧倒的強さを見せてきたVWビートル。
土曜午後から始まったオープニングヒート1Bでは、2台のビートルが驚異的な強さを見せ、ファウスト、スピードがワン・ツー。セミファイナルヒートAでも勝利したスピードは、2度の王者経験者であるチームメイトに6ポイント差と迫り、日曜のファイナルでのタイトル争いは事実上ビートル同士の決戦に持ち込まれた。
しかし、迎えた最終戦のスーパーカークラスで予選最上位を獲得したのは、自身4度目のGRC参戦となった元WRCドライバーのクリス・アトキンソン。今回のイベントに日本からスポット参戦した新井敏弘とともに、スバル・ラリーチームUSAのWRX STIをドライブしたアトキンソンは、ファウストのビートルをコンマ171秒上回るトップタイムをマークした。
日曜午後に12台で争われたシーズンファイナルとなる決勝序盤はブライアン・ハータ・ラリースポートのフォード・フィエスタGRCをドライブするパトリック・サンデルが引っ張り、4番手に同じくチップガナッシ・レーシングのフィエスタ、ブライアン・ディーガンが2台のビートルを挟む形で続いた。
オープニングラップにショートカットのジョーカーポイント走行義務を消化した先頭集団は、後続をみるみる引き離し、レースはフォード勢vsアンドレッティ・オートスポートのチーム戦の様相を呈する。
お互いの隙をうかがいながら、サンデル、スピード、ファウスト、ディーガンのオーダーで続いた精神戦は、残り2周でスピードがサンデルのインを突き、ヘアピンで首位浮上……かと思われたが、唯一ジョーカーを温存していたディーガンが先頭のパッシングと同時にショートカットに飛び込み、まんまと出し抜くことに成功。そのまま逃げ切り今季初優勝。2位のスピードが4位に終わったファウストを6ポイント逆転し、タイトルを獲得する劇的な幕切れとなった。
「今日は僕のキャリアのなかでも、もっとも感動的な1日になったよ」と、スピード。
「スタート直後の1コーナーで“タナーがすぐ後ろだ”って無線を聞いた時はショックだった(笑)。目の前にサンデルがいたし、なんとか自分でチャンスを作らなければならなかった」
「ラッキーなことに、自分が仕掛けたことでタナーとの距離を稼ぐことになった。みんなが自分のレースをして、クリーンに勝利を決められたことが本当にうれしいよ」