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今宮純による日本GPドライバー採点&短評:最終コーナーを攻め切った猛アタック

2016年10月14日 13:11  AUTOSPORT web

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2016年F1第17戦日本GP ロマン・グロージャン
F1ジャーナリストの今宮純氏が独自の視点でドライバーを採点。週末を通して、22人のドライバーから「ベスト・イレブン」を選出。予選やレースの結果だけにとらわれず、3日間のパドックでの振る舞い、そしてコース上での走りを重視して評価する。マクラーレン・ホンダの母国レースとなる日本で五つ星を獲得したドライバーは?


☆ エステバン・オコン
 「いちおしだよ、オコン」、フランスの知人ベテランジャーナリストは即座に答えた。アイルトン・セナをカート時代から見てきた彼の評価だ。初鈴鹿で予選、決勝、自己ベストラップすべてチームメイトに先行。S字ラインをつかみとり、西コースをプッシュ、周回遅れにされるときの動きもロスがない。これは新人時代のフェルナンド・アロンソ(ミナルディ)やダニエル・リカルド(HRT)並み。この潜在能力が花開くか、今後のマネージメント交渉しだい。

☆ ジョリオン・パーマー
 先週、ようやく初入賞でき自信が備わったのだろう。FP3でケビン・マグヌッセンと同タイム8位には驚かされた。鈴鹿二日目からマシンのピッチング傾向が消え、メカニカル・グリップが向上、チームの努力だ。父親に似て遅咲き(?)の彼、来季につなげられるか、残り4戦にかかっている。

☆☆ セルジオ・ペレス
 17年残留がマレーシアGP翌日に正式決定、鈴鹿ではすっきりした表情に。余談だが木曜夜、松崎エンジニアが自転車で“ある装置”を背にコースを逆走、路面解析調査しているのを目撃。そこまで徹底する努力がタイヤ・マネージメントと戦略に活かされる。7位 ペレス、8位 ニコ・ヒュルケンベルグ、9度目ダブル入賞によってウイリアムズを10点リード。

☆☆ ルイス・ハミルトン
 心ここにあらず、木曜FIA会見での行動はプロ意識に欠けていた。英国メディアの批判を逆批判、火に油を注いだ。王者は今年も鈴鹿セットアップに迷い、PPを奪えずスタートも失敗。終盤に演じたマックス・フェルスタッペンとの初対決バトルが唯一の見せ場に。


☆☆☆ ダニエル・リカルド
 グリッド4番手からポジションダウンのレースは珍しい。スタートで前方のハミルトンが加速せず、それを回避するロスが響いた。もう一つ、鈴鹿で彼のルノーパワーユニットはマイレージ限界に近く、若干ハンデになったと思われる。

☆☆☆ キミ・ライコネン
 彼の好不調バロメーターは「ファンサービス度」で測れる。今年鈴鹿ではけっこうサインに応じていた。予選3位のアタックランでは正確なリズムを全域でキープ。それだけにギヤボックス交換ペナルティが痛かった。結果論になるけれど3番手からならば、ハミルトン失速で2位に躍り出て、ロズベルグをマッチレースで脅かせただろう……。

☆☆☆ フェルナンド・アロンソ
 2年目マクラーレン・ホンダ、フェルナンドはアイルトンになれなかった。頼みの雨が落ちてこなかった。土曜FP3、まだコースが濡れている時点で1分36秒台は彼ならではの匠の技(!)。8列目スタートから時には芝生へ、ターマックヘ、なんとか抜こうとする猛攻劇に喝采のスタンド。

☆☆☆☆ セバスチャン・ベッテル
 戦略失敗論が言われたフェラーリ、ハードで引っ張り最終スティントをソフトに託した。個人的にはそれしか打つ手がなかったと思う。ハミルトンと同じ戦法をとったらかなわないのは見え見え、ならばソフトに賭けて敵を揺さぶる、ミスを誘おう……。しかし今年初めての最速ラップも実らず4位、鈴鹿連続表彰台途切れる。


☆☆☆☆ マックス・フェルスタッペン
 52周目のピンチ、ヘアピンでラインが乱れ加速がやや鈍った。ハミルトンがスプーンまでに間隔を狭めてくる。西ストレートで数回ミラーをチェック、130R通過、またミラーチェック。で、インサイド・ラインに振って守った。視野、視界、視座が秀逸な彼の「目力(めじから)」に天才を感じた一瞬――。

☆☆☆☆ ロマン・グロージャン
 セパンで何度もノーブレーキの怖い思いをしても、全くびびることなくドライビングにうちこむ闘争心。ふだん穏やかな彼だけに変貌に驚く。予選8位は7位ペレスと同タイム、先に記録されたために下がった。セクタータイム7位・10位・6位、130Rからシケイン、最終コーナーを攻め切ったあっぱれアタック。鈴鹿で今季予選ベスト8位に☆四つ。

☆☆☆☆☆ ニコ・ロズベルグ
 CS中継FP2で津川さんと「ニコは変わった、父親ケケさんみたいに」と話しあった。やる気、負けん気、強気、たった1勝で82年王者になりあがったケケは図太いレーサーだった。今季9勝目、鈴鹿を初めて征服したニコは初日から自信あふれる走りを続けた。自分のピークを自分で保つメンタルの強さは、父親譲りに見えてきた。ニコとケケを合わせて“ニケ・ロズベルグ”……(ダジャレ多謝です)。